【第5回オモイカネ杯 本戦・決勝】解説:さなぎ問
◆オモイカネ杯とは
気になった方は、ぜひ上記の配信アーカイブ、公式サイトをチェックしてくださいね!
◆この記事の内容
ここでは第5回オモイカネ杯の本戦・決勝で出題された問題のうち、私、黒羽さなぎが出題した問題について、正答と解説を紹介しつつ、作問経緯などについて振り返っていきます。
今後、余裕があれば他の方の出題分も追記するかもしれません。
◆本戦(全22問中、2問出題)
本戦では、主催者枠として個人問題1問と、決勝進出者を決定するための延長戦2問のうち1問を出題しました。
問題6
正答:佐賀県(正答率81% 13人/16人)
いきなりのポケモンで面食らう人もいるかもしれませんが、8割の方がニャース気球から佐賀県を連想して正解にたどり着きました。
佐賀県は熱気球競技大会「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」など気球の町として知られており、アニメに登場する「ニャース気球」を歓迎し、ロケット団員を募集する企画を行いました。記者会見には、山口祥義佐賀県知事がロケット団のボス「サカキ」をもじって「サガキ」としてコスプレで登場しました。
これは、佐賀県の情報発信による地域創生の取り組み「サガプライズ!」の1つとして行われたもので、他にもサブカルチャーとのコラボレーションも積極的に行っています。
この企画は終了してしまいましたが、2022年5月14日には佐賀市内の3か所にポケモンがデザインされたマンホール「ぽけふた」が設置され、いずれもニャース気球がデザインに採用されています。
主催者にとっては本戦が一番ジャンルを問わず自由に作問できる場でもあり、「ポケモン✕地理」という変わった組み合わせの出題としました。難易度については、出題画像のデザイン上「ニャース気球」にハイライトがひかれたことで、かなり簡単な問題となったのではないかと思います。
EX問題2
正答:1.スモモ、3.ハナモモ(正答率50% 1人/2人)
1のスモモはモモと同じバラ科の果樹です。モモとは違う仲間なので早口言葉で言われる「李も桃も桃のうち」というのは厳密には違いますが近い種類の植物であることは確かです。
2のヤマモモはヤマモモ科の植物です。山に生えていて赤い果実が付くことから名前がついているようですが、形はあまり桃には似ていないように思います。ヤマモモの果実はジャムなどに使われるそうですよ。
3のハナモモはモモのうち花を観賞用に用いる園芸品種のことを指す言葉です。こちらは文字通り「桃のうち」です。
4のフトモモはフトモモ科の植物です。名前は体の部位…ではなく、中国語の「蒲桃」から来ているもので、熱帯の植物なので日本では南西諸島くらいでしか見られません。フトモモ科には果実のグアバや香辛料のチョウジなど栽培、利用されているものが多くあります。
今回の問題文読みたいだけ枠の問題でした。内容はストレートな知識問題ですが、生物の名称では見た目が似た生物の名前がつけられることが多いものの近縁種でないことも多い、というのは注目ポイントだと思います。
本戦では決勝への進出を決定する1問となりました。当初、この延長戦2問目は他の問題が入っていたのですが、ジャンル被りなどの調整の結果入れ替わりで採用された問題です。今回はこうした偶然によって決勝への進出が左右されることとなりました。
◆決勝(全15問中、8問出題)
決勝では、出題された15問のうち8問を出題しました。
問題1
正答:マメ科(正答率100% 4人/4人)
4月に描かれる「藤」と7月に描かれる「萩」がともにマメ科となります。その他は2月の「梅」と3月の「桜」がともにバラ科であるほかは、それぞれ違う科に属する植物が描かれています。
実際に花札の絵柄を見てみると、藤と萩はどちらも葉や花の付き方が非常に似た形で描かれており、同じ仲間であることがよく分かると思います。
また藤なんかはたくさんの花をつけるので1つ1つは見たことがないかもしれませんが、藤も萩もお花を見るとよく似ていて、スイートピーなどと同じマメ科の植物であることを感じることができると思います。
出題としては、単純に知識を問うだけでは問題文として面白くないので花札を題材に追加したもので、予選で出題するか迷った問題の1つです。
また、5月の「菖蒲」については、文字から「ショウブ」「アヤメ」とも、絵柄から「カキツバタ」ともされることがあり、混乱のないよう原案では指定していたのですが、出題画像では省略されてしまいました(泣)
問題3
正答:スコール(正答率75% 3人/4人)
スコールというと熱帯なんかでよく見られる激しい雨を指すと認識している方が多いかと思いますが、本来は風を指す言葉だったりします。この風は大気の激しい動きによって生まれていますので、当然のごとく雨雲が発達し激しい雨や雷を伴います。大気の変化と天気の変化はつながっていますから、普段から空気が変わったな、おかしいなと思ったら気をつけて行動してくださいね。
スコール、作ったけどなんにもわかんない……誰か解説して、と言いたいくらい純粋な知識問題でした。
ちなみに多くの人が思い浮かべたであろう炭酸飲料の「スコール」は「乾杯」という意味のデンマーク語から取られているようです。気象用語の「スコール」も調べてみると北欧の言葉が由来と書いてあるものもあるので、元をたどれば同じ言葉かもしれませんね。
問題6
正答:イーストリバー(正答率75% 3人/4人)
イーストリバーはニューヨークの中心であるマンハッタン島の東側の境界となっている水域で、対岸は大西洋に突き出たロングアイランド島となっています。非常に細長い海峡ですので潮の満ち引きによって流れが発生するため、見てみると確かに川のように感じられるかもしれませんね。
ちなみに『川の流れのように』はAKBグループなどのプロデューサーで知られる秋元康さんによる作詞で、当時ニューヨークで暮らしており、このイーストリバーの景色からインスピレーションを得たそうです。
前フリの部分が面白いので、オモイカネ杯向けとは限定せず作っていた問題ですが、決勝戦前半の最後に箸休めとして変わった趣向の問題を出してみました。
問題8
正答:一握の砂(正答率100% 4人/4人)
詳しくは読んで下さい。
ある日、同じくオモイカネ杯を運営している櫻井眞尋さんに、「眞尋さんっぽい問題できました!」と報告したところ、めでたく採用された問題です。配信時の解説も眞尋さんにおまかせしてしまいました。
問題9
正答:クラッドメタル(クラッド材)(正答率75% 3人/4人)
クラッドメタルとは、複数の金属の表面に圧力を加えて接合する技術を用いて製造された金属です。接着剤でくっついているわけではないので剥がれにくく、単体の金属では実現できないような複数の金属の性質を生かした利用ができます。
そのため、硬貨のような厳しい環境が想定される用途でも使用できるんですね。新500円硬貨では、この他にもバイカラー技術や異型斜めギザなどの採用によって偽造の難しい硬貨を実現しているんですね。
皆さんは新500円玉硬貨、すでに見かけたことはあるでしょうか。今回は、その偽造技術の中でも目に見えない部分を出題しました。また、硬貨ではバイカラー・クラッドとセットで使われていることもあるため、別々の技術であることを問題として取り上げてみたものです。
問題11
正答:長生殿(正答率25% 1人/4人)
「森八」は寛永2年(1625年)に金沢に創業した和菓子屋で加賀藩との繋がりも深い家でした。
その代表的な銘菓「長生殿」は日本三大銘菓の一つにも数えられる、落雁という種類の和菓子です。加賀藩の三代藩主前田利常の命により作られ、近江小室藩主で茶人としても知られる小堀遠州によって「長生殿」と命名されたと言われています。
長生殿とは唐代の離宮、華清宮にあった建物で、当時の詩人白居易が第9代皇帝の玄宗と楊貴妃を題材として作った「長恨歌」に出てくることで知られています。
日本三大銘菓は金沢の和菓子屋「森八」の『長生殿』、長岡の「越乃雪本舗大和屋」の『越乃雪』、松江の 「風流堂」の『山川』とされることが多いようです。どのくらい有名な言葉かはわかりませんが、雑学色を削減するため当初案の問題文からさくっと削って出題しました。
故事からの名付けは深い教養を必要とするたいへん風流な行いです。私たちもこういった精神を受け継いでいきたいものですね。
問題12
正答:⑤佐賀県玄海町(正答率50% 2人/4人)
地方自治体の財政はどこも厳しい場合が多いです。日本では過去の財政的な優遇施策によって、多くの市町村が大合併を行ってきました。そんな中、大都市の近隣の町村では立地から郊外型の住宅や商業施設の集積が1つの支えになっています。今回は郊外型商業施設の1例としてイオンを取り上げたものです。
そして、正解の選択肢となった玄海町については、写真を見てわかる通り、市街地とは山で隔てられていて先程のような条件とは異なることがわかります。ここではむしろ市街地から離れていることから、九州電力の玄海原子力発電所が立地しており町の基盤となっています。
なお、広島県府中町には自動車メーカーマツダの本社があるなど、こういった自治体では他にも産業基盤があることが多く、合併の有無の経緯もそれぞれ異なりますのでご注意いただければと思います。
府中町のような、完全に他の市町村の内側に取り込まれている自治体というのは興味深く、作問の題材として以前よりピックアップしていたものです。今回、決勝の問題を選定するにあたって、少しギミックのある出題方式の問題が少なかったこともあり、その場で追加で作問したものです。ですので、じっくり考えればもう少し良い例があったかもしれませんね。
問題14
正答:縄文雪炎(正答率50% 2人/4人)
写真の土器、見たことがある方が多いと思います。これは縄文時代に特徴的な土器で、その形から火焔型土器と呼ばれています。新潟県にある笹山遺跡では多くの火焔型土器を含む土器が出土しており、1999年に縄文土器として初めて、新潟県としても初めての国宝に指定されました。
ちなみに、名称は国宝指定後に公募で付けられたもので、豪雪地帯である信濃川流域で多く見つかっている火焔型土器の特徴が、その名前から感じられると思います。
縄文時代は楽しい、だけど縄文時代の問題を出して楽しんでもらえるのだろうか、そんな私の前に現れたのが縄文雪炎ちゃんだ。
見た目も可愛い、名前も可愛い、こんな縄文時代のアイドルをなんとかして出題したい。だが、この場で固有名詞の知識問題を出すことについては躊躇いがあった。
結果、名称を想像できるヒントを入れることとした。問題文の後半では、いかにこの名称を説明するかという苦悩が詰め込まれていると思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?