E.T.チャリ製作②
あらすじ
祖父から一台の自転車を譲り受けた私。
かつての友人E.T.と共にもう一度自転車で旅をしようと思い立つ─。
(※以下、映画『E.T.』のネタバレが含まれます。)
E.T.製作開始!
【造形編】
まずは空き箱にスポンジやアルミホイルをくっつけ、大まかな肉付けをする。そこに造形粘土を重ね、形を整えていく。
しかし、サイズ感を誤りこの時点で想定のデカさを大きく上回ってしまう。自転車のカゴに乗せられるだろうかという不安を抱えながらも造形を進めていく。
友人の片鱗が見えてきた。再会の時は近い。
十分に粘土を乾かした後はやすりで表面を整えていく。粉が舞うので家の外で作業をしていると、もちろん不審に思った近所の方々に囲まれ、かなり問い詰められてしまった。
しかし、事情を説明すると最後には「なるほど、ETに見えるわぁ!」「頑張りや!」「ファイト!」といった暖かい言葉で応援してくださった。優しい方々である。良い街に住めて良かった。近所で何と言われているかは知らない。
【塗装編】
この日は午前4時、深夜バイトから帰宅後何だか眠れなかった。この機を活かし、就寝を諦めて人通りの少ないド早朝に作業することにした。この時間帯なら悪目立ちもしないはず。
まだ外は薄暗く、正直何色をこさえているのか分からない。
まずい、この時点で始発電車が動き出す音が聞こえた。まちの人々が活動を始めてしまう。
今日はここまで、と切り上げようとしたが──
あろうことか屋外に閉め出されてしまった。
しょうがないので家族が起床するまでの間、家の外でE.T.の頭部を抱えて座り込む羽目になった。
散歩している犬にめちゃくちゃ吠えられた。
さらに絵の具を重ね塗りし、ツヤ出しのために水性ニスを塗る。家の中に置いて乾かしているのだが、母にまあまあ嫌がられている。風水的にはどうなんだろう。(そこじゃない)
目の色味が難しくて失敗。
ちなみにこの時点で季節は秋に差し掛かっており、せっかくなので来週に控えた大学の学祭で作品として展示することも考えつつ製作を続ける。
【完成、そして、再会。】
そこには、かつての友人E.T.の姿があった。
十数年来の再会である。
ニスを塗るのが楽しくて若干お肌に潤いを与えすぎてしまったような気もするが、地球上の乾燥に慣れていない宇宙人に対してはこのくらい保湿しておいた方がいいはずである。
もてなせるような品が家に無くて申し訳ない。
E.T.、来てくれてありがとう。
結構なデカさをもって居間の隅にいるにもかかわらず、最初は家族の誰にも存在に気づかれていなかった場面が実際の映画のシーンとリンクして少しウケてしまった。まさにgrown-ups can’t see him.である。
ちなみに、大人になったエリオットとE.T.が再開する映像作品が実際に製作されているので、是非こちらも観ていただきたい。
(↑地球でしかできないダル絡みもやらせていただく)
ここで、何か足りないのに気付く。
E.T.の、ハートだ。
優しくユーモラスで私に愛を教えてくれた、そのあたたかい心だ。
胸が赤くポゥ…と光る様は映画でも象徴的である。
ちょうど大学の課題に使ったLEDライトを余らせていたので、ぽわっと胸元で光るようにしてみた。
完璧である。
次回はE.T.のチャリが置いてある大学まで、彼を連れて行こうと思う。
(E.T.チャリ製作③へ続く)