「陰毛」

化粧もして帰る支度をしている私に
ホテルの時間はあと三十分あるからと
またベッドに誘うのは好きでもない男
乳首を揉まれ心ならずもよがり声をあげ
男のベルトをはずし一物を嘗めまわす
好きでもないのにこの性交は母性か奉仕か
そんなことを考えたらお股が濡れないから
頭を真っ白にする
ふいに喉に違和感を感じ唾を飲めば
男の陰毛が扁桃腺にひっかかっている
男はといえば興奮し私に一物を突き刺して快楽の穴に入り込む
私は魚の小骨のようにチクリと刺す陰毛が気になる
ああ嫌だ嫌だよう、こんな好きでもない男の陰毛なんて飲みたくないよう
いつまでもいつまでも腰を振っていて私が冷めていくのも感じない男
それをぐいっと押しのけ私は風呂場に駆け込みタイルに這ってグエグエと咳をする
吐き出したそれは白い痰と混じり血を吸う虫のように死んでいた
けれど確かにさっき針金のような意志を持ち私をチクリと刺した
好きでもない男の陰毛が
私の不貞を責めるなんて

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