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大多喜無敵探検隊【昭和の本編】

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本編をまとめたマガジン。この物語は昭和の田舎で育った当時の私の日常や遊びを振り返って綴った趣味の児童文学(注:自称)!昭和51年4月~昭和53年3月(1976年~1978年)、私…
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記事一覧

act:26-水神様の祟りと御宿の謎のおばさん【後編】

 1976年(昭和51年)晩秋、小学4年生のオレは御宿からやってきた祈祷師のおばさんに、我が家が去年埋めた古井戸の水神様に祟られていることを聞いた。おばさんは急遽祈祷をあげてくれて、一旦は鎮まったということだが、なにせ相手は神様だ。再度あらためて祈祷に来るらしい。 しかしオレとユーイチは、実はその井戸でしょっちゅう連れションをしていたのだ!そもそも井戸に神様がいるだなんて、オレたち小学生が知るわけないだろう。なぜ誰も教えてくれなかったんだ! ‥とはいえオレたちは、いくら知らぬ

act:25-水神様の祟りと御宿の謎のおばさん【前編】

 今日オレの家に、不思議なおばさんがやってきた。隣町の御宿に住む人で、加持祈祷はもちろん、いろんな占いができる人だということだ。 小柄で物静かな和装のそのおばさんは、うちに着くなり「あぁ、」とひとこと漏らしたのをオレは聞き逃さなかった。  実はここのところ我が家は不運続きだ、この数年で目がまったくみえなくなったバァチャンが、縁側で1年前に足を滑らせてそのまま寝たきりになり、ますます元気がなくなり妖気を発するようになってきて、挙句の果てに母さんに「あぁ~マリコさん(母の名)、

act:24-偽りのひよこ饅頭 タダシくんの事件簿と大多喜無敵探検隊 誕生秘話

 オレには1歳年上の竹中タダシくんという友達がいる。 タダシくんとはじめて会ったのは、オレが小学1年生のときだ。 小さいころのオレは体が弱くて、しょっちゅう保育園を休んでいたので、小学校に通うようになっても、まともに友達がいなかったんだ。 そんなとき、やさしく声をかけてくれてくれたのが近所のタダシくん。あのころはよく青龍神社で一緒に遊んでくれたっけ。オレは兄さんができたみたいでとっても嬉しかったんだよなぁ。 タダシくんには高校生のお兄さんがいるんだけど、歳が離れてるのであまり

act:23-オレたちの防空壕 トンネルを抜けるとそこは戦場だった。

 今日は昭和51年6月10日木曜日、平日だ。小学2年生の弟のクニオは4年生のオレと違ってまだ授業が少ない、本日は給食を食べてそのまま下校だったようだ。そしてクニオは宿題をとっとと終わらせるとオレの帰宅を待つことなく、一人で若菜歯科医院のヤッチャンの家に遊びに行ってしまったという。オレは母さんに聞いてヤツの行動のその全容を知った。 さらに確認したところでは、ヤッチャンの家にはどうやらレアキャラのウェーズミ、通称「お面のケンちゃん」もくるようだ。ほほぉ、滅多に来ないケンちゃんが来

act:22-雪の大多喜 権現坂はスリップトラップ御用心

 昭和52年1月、今年も大多喜に雪が積もった。 都会からの海水浴客で毎年にぎわう勝浦や御宿、鴨川の隣町、我らが大多喜町は、常春の国「南房総」なのに雪が降るというと案外驚かれるんだけど、現に雪は昨夜から降り続き、今朝もまだパラパラと散発的に降っている(※1)。お陰でウチの前の権現坂通りには既に20cmぐらいの雪が積もってて、まるで雪国みたいだ。 この大多喜は房総丘陵の山の中、さらにこの町ナカは山に囲まれた盆地だ。お陰で夏は異様に暑く、そして冬はこの通りクソ寒い。毎年お正月が終わ

act:21-ボクはヒロツン、今日は親友の北郡くんと隊長の乱射事件を話そうか

 今日はいつも色々と面倒くさい人のサナダ隊長にかわって、ボクがみんなにお話をするよ。ボクの名前は広津正武、みんなはボクのことをヒロツンって呼んでいるんだ。 身長は155cmで、中学生みたいだってよく言われるけど、ボクは大多喜小学校の4年生だよ。 今日、そんなボクのうちに、同じ4年2組の仲良しの友だち、北郡くんが、駄菓子屋のバクダン屋(※1)に寄った帰りに遊びに来てくれたんだ。 しかし今、北郡くんはボクとじゃなく、うちのお爺ちゃんと囲碁に夢中なんだ。二人ともお母さんが出してく

act:20-オレの夏やすみ 養老渓谷の弘文洞、粟又の滝にカッパ淵の少年【川遊び編】

 オレの夏やすみは忙しい。毎朝5時に起床しカブトムシやクワガタの確保を行い、そして大人から毎朝半強制的に参加を強いられるラジオ体操への出席を済まし、家に帰って仏壇にお線香をあげ、朝ごはんを十分平らげエネルギー補給をして、その上で本日ノルマ分の夏やすみの宿題を片付けるのだ。 そのあとは青龍神社に集結した我らが大多喜無敵探検隊メンバーたちと、この大多喜の愛と平和のため町の定例パトロールだ。今日は駅前のディスカウントストア『ポピンズ』もスーパーストア『デンベー』も、そして大多喜キッ

act:19-昭和の大多喜オレのそば。そば新 くらや 天そば自販機にカップそば

 なにを隠そうオレは蕎麦が好きだ、大好きだ。 今日はそんなオレが、この大多喜町の旨い蕎麦についてお伝えしたいと思う。何より今年1977年、昭和52年の、この大多喜町の最新グルメ情報だ!都会から勝浦や御宿に海水浴に行く際には、ぜひ寄ってみてほしい。  ラーメンやうどん、そうめんもいいけど、麺の中でどれか一つだけ選べと言われたら、断然オレは日本蕎麦、やはり蕎麦しかない! 蕎麦はいいぞぉ~!蕎麦は日本の悠久の歴史が生みだした、食べ物の最高傑作なんじゃないだろうか。盛りそば、かけそ

act:18-今夜がヤマです【急の章】三途の川の畔に行ったのかオレ

前回までのお話 ↓  妙な揺れで空中戦艦ヤマデスから放り出されたオレは、黒い渦に引き寄せられて、どうやらそのまま渦に呑み込まれてしまったようなんだけど‥、 放り出された途端に瞼が重くなって、しっかりと見てはおらず、一体オレがあの後どうなったのか、実はオレ自身がよくわかっていないんだ。 ただ、今のオレは、異様に静かなところに、ぼぉーっと突っ立ってた。 静かなんてものじゃないな、まるで耳に何かが詰まってしまったように、全く音が聞こえないところだった。 さっきまでの異様な瞼の重さ

act:17-今夜がヤマです【破の章】空中戦艦ヤマデス発進!暗黒肺炎帝国との死闘

前回までのお話 ↓ ウゥーーー!ウゥーーー!ウゥーーー! 緊急警報のサイレンが艦内にけたたましく響き渡る 「隊長!敵影多数!オイオイどーすんだコレ?やたら多いぞ!」 操舵手のユーイチ上等兵が叫ぶ。物凄い数の機影をレーダーが捉えたのだ。 大多喜町の杉山に偽装したオレたち漢の艦「空中戦艦ヤマデス」に向って、今とんでもない数の敵戦闘機がグングンと接近してきていた。どうやらこの入念な偽装もあまり役には立たなかったようだ。 敵の総数は凡そ1,000。今日までずっとオレを散々苦しめてき

act:16-今夜がヤマです【序の章】肺炎を拗らせたらお迎えがやってきた

 なんと無様なんだろう オレはここ何日か高熱を出して寝込んでいた。 オレは自慢じゃないが、 クラスの中では体も大きいし力もある。 あの番長のナガサとも常に喧嘩は互角だ。 だけどさ、実はオレは悔しいけど体が弱いんだ(※1)。 お陰で学校もよく休んだ。 そのせいでナガサや他の連中とも いつまでも仲良く出来ないのかもな。 ‥まぁでも考えてみたら そもそもアイツらとは仲良くしたくもなかったな それに今はどうでもいいや。  最初は風邪だと思っていたけど どうも肺炎を拗らしちゃったよう

act:15-おれは男だユーイチだ!今日は男のザリガニ釣りだ!

 オレは大多喜無敵探検隊のユーイチ、只今ひとりでザリガニ釣りの最中だ。 ここは青龍神社の下の、町営駐車場の先にある田んぼ、オレは喫茶店『緑の館』裏の土手のあぜ道に陣取り、さっきから田んぼに釣り糸を垂らしている。 釣りはいいぞぉ、心が穏やかになれる。これぞお寺の御前様(※1)のいう『無我の境地』なのだろうな。 そしてサナダ隊長はザリガニ釣りには来たがらない。隊長はザリガニを釣るだけならまだしも、釣った後に食べるのが嫌だというんだ。釣るだけじゃ意味ねぇーじゃんか、釣ったら食うん

act:14-オレの夏やすみ 大多喜の愛と平和を守るため【定例パトロール編】

 オレの夏やすみは忙しい。まずは毎朝5時に起床、昆虫スポットにてカブトムシやクワガタの確保を行う。これは大切な任務であり、そのための早起きなのだ仕方がない。そして大人から毎朝半強制的に参加を強いられるラジオ体操への出席を済ましてから一旦家路につく。 家に帰ってからはまず仏壇にお線香をあげ、朝ごはんを十分に平らげてエネルギー補給だ、その上で本日のノルマ分の夏やすみの宿題を片付けるのである。ここまで郷ひろみのような大スターでさえ怯みそうな過密スケジュールだが、多分誰より優秀なオレ

act:13-オレの夏やすみ 虫捕りラジオ体操、死神博士の記憶【早朝編】

 常に刑務所のような学校がない夏やすみは、オレにとっては人生最大のボーナスステージ。やりたくもない勉強をむりやり押し付ける授業がないばかりかオレに命令する先生もいない。あの憎たらしいナガサ一味(※1)らとも早々会わないのでケンカもせず毎日が心穏やかだ。 今回はそんなオレの夏やすみの、華麗な日常を紹介したい。  『午前5時だOK!・・出動だぁぁぁぁぁーーー!』 オレは一人さけびながら飛び起きた。 夏休みのオレの朝は早い、毎朝5時に起床、目覚まし時計なんて鳴らなくともバッチリ