マガジンのカバー画像

2050年の大多喜無敵探検隊

3
2050年までに消滅する可能性が高い「消滅可能性自治体」といわれる私の故郷「大多喜町」と周辺の御宿町、いすみ市、勝浦市のいわゆる「夷隅郡市」全域。 本当に消滅しちゃうのかな?どう…
運営しているクリエイター

#千葉県の未来

2050年 83歳の挑戦 房総半島沖大震災を越えて【2050年の大多喜無敵探検隊-03】

 車は、モーターの振動をわずかに車体に響かせると、私の実家があった場所から、氷の上を滑るように静かに動き出した。 この権現坂通りは一方通行なので、もう一度この小さな旧市街をぐるりと廻って、今度は千葉銀行のT字路から右へまがり、そこから一気に県道伝いに大原を目指そう。 確かこの道は‥、房総半島沖大震災の影響を受けていないので、昔のままの風景だったな。  車は千葉銀行前の交差点で、一旦信号で停まった。 白い千葉銀行の低層ビルが見える。しかし建物には灯りはなく、銀行の看板も既に撤

消滅可能性自治体 2050年の大多喜町へ-後編【2050年の大多喜無敵探検隊-02】

 車は圏央道の市原鶴舞インターを降りたのち、広域農業区画と里山を交互に過ぎ、やがて峠道の連続ヘアピンカーブが続く羽黒坂にさしかかった。ここを越えたら大多喜町、外房市の大多喜町だ。市原市と大多喜の境目には、今でも本多忠勝と大多喜城が描かれた看板があるが、経年劣化でボロボロだ。まぁ自治体の予算がなくて修繕が後回しになっているんだろう。 車は羽黒坂をおりると、そのまま滑るように国道を流れ、ほどなく横山交差点に差し掛かろうとしていた。 不意に穏やかな女性の声が語りかけてくる。 「マス

消滅可能性自治体 2050年の大多喜町へ-前編【2050年の大多喜無敵探検隊-01】

 三ヶ月ぶりだな、この喉かな里山の風景を眺めるのは。 私の家から房総半島の大多喜へは、第二東京湾岸道路、東金道、圏央道と高速道路を次々乗り継いで行くことになる。ここまで車が殆ど勝手に走ってくれるが、今年83歳の私には、この距離はやはり億劫だ、高速でも1時間ちょっとはかかる。まぁ少しだけ時間は短くなったが、なんというか昔も今も、あの町は決して近くはないよな。  そういや若いころは高速代が惜しくて、古い墓がある房総最南部の安房市の和田町や、今向かっている外房市の大多喜まで、一般