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トナーリへのオファーはなぜ断れないのか ~付け焼き刃の知識で見る帳簿上のメリット~

みなさん、こんにちは

今日もAISTSでの出来事について書こうと思っていましたが、昨日の夕方からとんでもないニュースが飛び込んできてしまい、私の脳みそは破壊されてしまいました。それが「ニューカッスル、ACミランのトナーリを獲得濃厚」というやつです。

最初にこのニュースを聞いたときはあり得ないと鼻で笑っていましたが、時が経つにつれて話が本格化、現在ではもはや秒読み段階へと突入しています。みなさんがこれを読んでいる時には恐らく決定しているのではないかと思います。

長年ミランのファンをしている手前、さすがにこのような状態で通常の日記を書く気分にもなれず色々考えた結果、なぜACミランは未来のスターを手放す選択をしたのか、なぜ幼少期から熱烈なミラニスタとして知られ、ミラン加入のために一時は減俸までしてくれたトナーリはこのオファーを断れなかったのか、AISTSで学んだ付け焼き刃の知識を活かして考察していきたいと思います。

オファーの内容

まずはニューカッスルがミランとトナーリに提示したといわれているオファーの内容を見てみましょう。

かの有名なロマーノによれば移籍金は€70M+add on(5M?)、トナーリには
現在の年俸(2.5M)の約3~4倍の給料(8M+出来高2M)が支払われるみたいです。

トナーリの価値について

この移籍金が高いかどうかを判断するうえで重要な基準となるのが、現在のトナーリの市場価値となります。
transfer markt.comによれば彼の価値は€50M、add onの金額も考慮すればニューカッスルは市場価値と比較して約1.5倍の金額でオファーをしてきたことになります。

トナーリのバランスシート上での価値

また、企業の財政状況を図る指標として、欠かせない存在であるバランスシート(貸借対照表)上においてのトナーリの価値を知ることも重要です。

彼は2020年9月から1年間のローン移籍の後、2021年7月に€14,5Mをミランがブレシアに支払う形で正式にミランの一員となりました。さらに翌年9月に年俸を倍増させる形で2027年までの契約延長に合意しています。

これらを踏まえると、バランスシート上における2021年時点でのトナーリの資産としての価値は€14,5M、4年契約と仮定してそこから1年後に減価償却を行うと2022年6月末時点で価値は3/4となり約€10,9M、その後の契約延長を踏まえると2023年6月末時点でのトナーリの価値は€10,9Mの4/5である€8,7Mとなります。(間違っていたらすいません。)

仮にミランが€75Mでこの選手を売却した場合、75-8,7で€66,3Mが収入(キャピタルゲイン)として計上されるわけです。この€66,3Mという数字がどれほど大きいかというと、CLでグループリーグ出場・突破から準決勝出場までの賞金を合わせた金額よりも大きいということになります。(勿論放映権料は別で考えられているので、CLでの上位進出における経済的メリットはもっと大きいですが)

https://www.all-stars.jp/news/22-23-cl-prize-money/

ミランとしては、CLでの大躍進もあり今年は久しぶりに黒字を計上できそうなわけですが、CLでの上位進出というのは毎年狙ってできるようなものではありません。ミランのような資金力がないクラブであればなおのこと。なのでクラブとしては安定した黒字化のために、チームの成績に左右されない収入源が是が非でも欲しいわけですが、今年のトナーリはその収入源になってしまいそうな感がありますね。

ミランのフロント陣の考え

昨シーズンのミランは補強の失敗もあり、選手層の薄さを露呈、今年のメルカートでは多くのポジションを補強する必要があると言われています。一方で補強資金は€30M+選手の売却費であると一部では伝えられており、強力なスカッドを作るにはあまりに資金が足りない状況となっております。そんな中で舞い降りたトナーリの売却話、売却益をそのまま補強費に使用できるのであれば、現在巷を賑わせているフラッテージ(30-40M)やミリンコビッチ=サビッチ(30M)の両獲りすら現実的になってくる。クラブのシンボルを失う代わりに、スカッドの質と量を同時にアップさせる千載一遇のチャンスと考えてもおかしくはないと思います。

オーナー企業の考え

昨年よりミランのオーナー企業となっているRedBirdはスポーツに特化した投資会社です。つまり彼らの真の目的はチームの価値を(最低限の投資をもって)できる限り高めて売る、ということに尽きると思います。オーナーのカルディナーレは最近新スタジアムの建設に執着しているようですが、それもクラブの価値を高めるためです。そして、クラブの価値を高めるため、スタジアム建設の費用を銀行から融資してもらうために安定した黒字経営は欠かせない要素なのではないかと思います。そういった考えから今回の移籍をオーナーが選手にプッシュしていてもおかしくないなと個人的には考えています。

トナーリの考え

ミラン愛に関するエピソードが山ほどあるトナーリがなぜすんなり移籍を了承したのか、というのも大きな疑問です。勿論現在の3-4倍の給料を貰える上、移籍先は今を時めくプレミアリーグ、なおかつ来期はCLにも出場できるとなれば、単純に心が動いても仕方がないことかと思います。ただ、これは完全に憶測になりますが、トナーリはミランやブレシアを助けるために移籍する側面もあるのではないでしょうか。

先述した通り、この移籍を通じてトナーリは莫大な資金をミランに残すことができます。また、一部ではミランはトナーリをブレシアから獲得する際に、将来トナーリを売却した場合の15%をブレシアに支払う契約が盛り込まれていたという情報もあります。ブレシアは来期からセリエCで戦うこととなり、経営的には非常に厳しいことが予想されます。そんなクラブに約€10Mのお金を渡すことができるのであれば、それは大きな助けとなることは間違いありません。愛するクラブと育ててくれたクラブへの恩返しの側面も考慮しての移籍、というのはトナーリを神格化しすぎたファンの妄想でしょうか。。笑

いちファンの不安

ここまで書き連ねてきて冷静に思うのが、誰にとっても断る理由があまりないという悲しい事実です。それほどまでにニューカッスルのオファーは魅力的です。

突っぱねる選択は非常に美しいですが、それによってスカッドを強化できず来期のCL出場権すら逃し再度赤字に転落となれば、より低い金額でトナーリもしくは主力選手の何名かをより安い金額で買いたたかれる未来だってあり得ます。だから個人的には彼らの選択を諦めと共に受け入れたいと思っております。

唯一にして最大の懸念は、今回得た資金を上手く活用できないこと。現在もっとも取り沙汰されているフラッテージにしても、人気銘柄かつ相手は選手売却において非常に狡猾であるサッスオーロです。噂されている金額ですんなり獲得できるとは中々思えません。ギリギリまで交渉を粘られた挙句プレミアリーグのチームに搔っ攫われる、もしくは獲得できたとしても合流が遅れて前半戦は使い物にならない、なんてことがないようにして欲しいなーと願っております。

以上、この夏はミラニスタにとって衝撃的なことが多すぎたため、禊の意味も込めて普段とは全くことなることを長々と書かせてもらいました。

明日以降はまた通常通りAISTSの思い出についてご紹介していく予定です。(ミランに何かが起こった場合はわかりませんが。。)

読んでいただきありがとうございました。それではまた。

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