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【医師解説】エジプト・トルコ旅行前にワクチン接種すべき?

〜前回までのあらすじ〜
医師10年目にもなって、海外旅行に行ったことのないサンだったが、経営大学院の同期にエジプト・トルコ旅行に誘われ、「今逃したらもう二度とこんなチャンス来ねぇ…!」と、ついに重い腰を上げる…!
在宅ワーク&フルフレックスタイム制度をうまく活用し、何度か期待を裏切られながらも、するっとパスポートをgetしほくほくするサンなのであった。

詳しくはこちらのマガジンの過去記事を参照ください。


※このnoteは、

  • エジプトとトルコへの海外旅行、どんな感染症の危険がある?

  • どう予防すればいい?

  • どのワクチンを打った方がいい?

をお知りになりたい方向けです。
総合内科医が医学的知見と実体験をもとに解説します。




サンがこれまで海外旅行を避けてきた理由は、

1. 長い移動で疲れる
2. コミュニケーションに自信ない
3. 病気になりそう
4. 治安悪そう
5. パスポート持ってない
の5つだった。

最初に、5を解決した。
次は、3だ。

サンは自分に言い聞かせた。

お前医師なんだから、ちゃんとリスク見積もって、不安を解消し、かつ適切に恐れることができるだろうが!

サンの心の声


このnoteでは、現役医師が、エジプト・トルコへ旅行する(大手旅行代理店主催のガイド付き観光ツアー)にあたって、どのワクチンを接種するか、しないかを、検討した軌跡を綴っていく。

ワクチン編

まず、エジプトおよびトルコへの渡航で、どのような病気に罹患するリスクがあるのかを調べた。

外務省のWebサイトに、国ごとの情報がまとまっている。

エジプトでかかりやすい病気と推奨ワクチン

エジプトに関してはこうだ。

かかり易い病気・怪我
(1)食中毒
(2)A型肝炎
(3)狂犬病
(4)寄生虫症
 ビルハルツ住血吸虫症、条虫症、アメーバ赤痢、ジアルジア(ランブル鞭毛虫)症、異形吸虫症など
(5)流行性脳脊髄膜炎(髄膜炎菌)
(6)交通事故(破傷風)
(7)B型及びC型肝炎
(8)減圧症

外務省HP 世界の医療事情 エジプト
外務省HP 世界の医療事情 エジプト


トルコでかかりやすい病気と推奨ワクチン

トルコの方はこんな感じ。

かかり易い病気・怪我
(1)交通事故
(2)食中毒
(3)狂犬病、A型肝炎、B型肝炎、腸チフス、結核、クリミア・コンゴ出血熱

外務省HP 世界の医療事情 トルコ

入国時に法的に求められる予防接種はありませんが、A型肝炎、B型肝炎、破傷風トキソイドの(追加)接種が推奨されます。狂犬病については、赴任者の職場環境や行動様式を考慮して実施の要否を検討ください。

外務省HP 世界の医療事情 トルコ


ワクチンの値段

これらのワクチンは基本的にすべて任意接種(定期接種対象ではない)なので、全額自己負担(自治体からの補助や、医療保険の適応はない)。

また、接種にかかる値段は医療機関によって多少異なる(相場は大体似たようなもん)。

参考までに、サンが実際にワクチン接種しに行ったクリニックのWebページを載せておく。

推奨されるワクチンの、接種回数と金額をまとめた。

※MARUクリニックの設定金額を引用
輸入と書いていないものは、国産承認済みワクチン

接種の判断

サンは、どのワクチンを接種し、どのワクチンは接種せずに、エジプト・トルコ旅行に望むかを検討した。

検討した項目は、次の5つ。

  • ワクチンの効果の大きさ(どれくらい感染リスクを下げられるか)

  • 病気にかかった時のダメージの大きさ(どれくらい重症か)

  • 病気にかかった時の治療法が確立されているか

  • ワクチン以外で回避できる術(すべ)があるか

  • 接種にかかる費用

幸いサンは、これまで自分が受けた予防接種で、大した副反応は経験してこなかったので、個人的に副反応に対する恐れはほとんど感じていない(副反応のリスクがあることは承知で、許容できる)。あと、副反応を個別にnoteに綴っていくのが面倒なので、上記には含めなかった。

しかし、一般論として、どのワクチンにも副反応が出現するリスクは必ず伴う。接種部位の腫れや一時的な発熱など、軽微なものがほとんどだが、稀に命に関わるような、あるいは後遺症として長く残るような、重大な副反応を生じることもあるので、皆さんが接種する際には医師に相談し、リスクと天秤にかけて接種するかどうかを判断してほしい。

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花嫁にもなれず、総合内科専門医にもなりきれぬ哀れで醜い可愛いサンをサポートしたいという気の触れたこだまたちはおらぬか!