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詩誌「三」69号掲載【メンバーによるオンライン合評会】

ーー69号では、正村直子の作品「言葉」について合評しました。

飯塚 二年くらい前に「サイダーのように言葉が湧き上がる」という映画があって、個人的に最も好きな映画の題名なのだけど、一連目の最後を読んだ時にこの映画を思い出しました。
「はじけて」「飛び回っていく」言葉の躍動感がとても心地よいです。
何でも思ったことを口に出すことが必ずしも良い事とは言えないけれど、口に出したいと思った事が何にも言えないのも良い事ではないよな、と。
全体的な流れで見ると本筋から外れている三連目の描写も、良いアクセントに感じました。
完全に個人的な趣味嗜好で言うと、最後は『ねえ/いつか』もしくは『あなたの詩が/読みたい』のように三行にした方が良いなと思いました。
二行だと字面がせっかちで、それまでの雰囲気とちょっと違うなと感じたので。
 
水谷 繋いだ手が、温かいんじゃなくて冷えてるというリアルな感じがいいな。かさついてるかんじとか。
ここを、あったかくて、ふわふわでぷにぷにで。。みたいな感じで書くのとそうでないのとでかなり違うと思うので。
 
石山 最後の「ねえいつか/あなたの書いた詩が読みたい」ここが、この作品でいちばん光ってるフレーズだと思います。
詩を読むことって、書き手の内を見ることができるというか、普段人と話したり接したりするだけでは知り得ない内の部分を感じとれるから、作者の子に対する特別な思いを感じました。
詩を書く人だからこそ書けたフレーズ。でも、詩を書く人でなかったら、あまりピンと来なかったりするかもしれないけれど…。
前半の、幼い子がぺちゃくちゃとしゃべってる姿と、ネットの世界や、大人である私の中にたまった言葉の対比も良いと思いました。
これからこの子も成長していって、色んな世界に触れて、言葉をとどめるようにもなるのかな、とか、私にも、誰にでも、昔はこんなふうにマシンガンのように話す子ども時代があったんだよなぁと想像することもできたりするね。
平易な言葉で書かれている作品だけれど、色々な想像ができました。
 
正村 感想などなどありがとうございます。
道ゆくどんな人にも心の中にいろんな詩の言葉がきっとあって、それを読んでみたいなぁという思いからスタートした作品でした。
そういう感じで書き始めたところ、隣りでめちゃくちゃ喋ってくる幼児がいて…これからこの人はどんな言葉に出会って行くのかなぁと考えました。
詩を書く人じゃないとぴんとこない、というのはそのとおりかもしれませんね。
詩を読まない書かない人はどう思うのか、気になりました。
確かに最後の二行は三行だとより余韻や味わいがあった気がします。
合評してもらうと、毎度たくさん気づきがもらえてありがたいです。
そして自分のツメの甘さを感じます。笑
 
加藤 小さい頃は思ったことをすぐ言葉にしてずっと聞いて聞いて!となっているのは、自分が世界の中心だと思っているからで、他者の気持ちを理解するようになるのは成長の証だと聞いたことがあります。
最後の二行に親の、この子はどんな大人になるんだろうという想いがぎゅぎゅっと込められているように感じられて、とてもステキな詩だと思いました。
 
正村 確かに、世界の中心は自分!というまぶしいほどのパワーがある年頃かもしれません。
言えないで終わった言葉があることが、成長の証と考えると救われますね。そういう詩もできそうです。

飯塚 たまに石山さんの詩を読んでも思うけど、子どもができたことで作品を作る上で何か変わったことってあったりするのかな?

正村 私の場合ですが、ぜんぶの作品に関わってくる変化があるとは思ってないです。
ただ、子供の存在は色んな意味で心が揺さぶられるので、題材になりやすいというか選んでしまいがちですね。
 
石山 書くテーマが一つ増えたという感覚で、全体的な書き方や感じ方というのは昔と変わらないような気がするよ。
 
飯塚 興味のある題材やテーマが一つ増えるって、創作をする上では結構大きい気がする。
どうしても同じようなところに目が向いてしまいがちになるから…。
 
水谷 お子さんができて、作風が変わる詩人てけっこう居るみたいだよね。
私は子ども居ないけど、子どもって面白いよね。子どもと話すの好きだな。
 
石山 子どもを見てると、自分が幼い頃のこと追憶できる面白さもあるね。育児してると、時間に追われる部分もあるから、なかなか詩作のことにまで気が回らないという部分もあるかも…。
毎回、三に出す作品を仕上げるのがプレッシャーだったりもするね。
それがあるから、書けるんだろうけど。
 
加藤 飯塚くんもいってるけれど、視点が増えるのはすごく大きい気がします。
やっぱり親の視点とかの作品を読んだりしても全部がわからないわけではないけれど、共感しにくいし。
体感できてない感覚はやっぱり想像でしかできないし、想像しかできないことはやっぱりどこか実感できにくいし。
作品にしてもありがちだったり、どこか表面的な面白くないものにしかならなかったりしちゃう気がします。


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