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詩誌「三」69号掲載【言葉】正村直子

給食のみかんがこっちゃんのだけハートの形だったんだよ と
幼稚園から帰ってきて一番に教えてくれて
それからそれから
ドッジボールは今日二回あてられたんだよ とか
今度の誕生日プレゼントはカービィがいい とか
あの雲りんご飴みたい とか
おやつ何個たべていい? とか
言葉が彼女のなかにとどまることはまだないらしい
出会った瞬間にはじけて
あちこち飛び回っていく

スマホのなかには誰かを責める言葉があふれていて
私のなかには言わずに終わった言葉があふれている
彼女は振り返る
ねえねえ聞いてる? って
怖いもの知らずなしかめっ面で

繋いだ右手は二月の空気で冷えていた
少しかさついてやわらかくて
とても小さい

ねえいつか
あなたの書いた詩が読みたい

2023年3月 三69号 正村直子 作

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