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詩誌「三」71号掲載【青】石山絵里

はがれ落ちたマニキュアを見て
八月も半分過ぎたのだと気づく
この爪がピカピカだった日
君が隣にいたあの日
話したいと思ってたことの
半分も話せなかった
部屋で一人
ヘッドホンで音楽を聴いている
何度も聴いてきた曲なのに
サビのフレーズにハッとする
机の上は夏の課題が山積みで
空欄に適した語を選びなさい
分詞 不定詞 ing
あの日 私は何を言えば良かった
とけたかき氷
イチゴ味の水を飲み干した
甘い
何か話してよ
ここはきっと waitが正解
君のブルーハワイはサイダーみたいな味がした
二択まではしぼれるのに
結局いつも 間違った方を選んでしまう
おどけて舌を見せた君
窓から見える空の色
今日の私のラッキーカラーの
マニキュアの瓶を手に取る

2023年9月 三71号 石山絵里 作

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