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アフターコロナの時代に対応するイノベーション組織の実現

【2020年6月30日 オンラインイベントレポート】

 新型コロナウイルス感染拡大防止にともない実施された緊急事態宣言、および休業要請の動きは、企業活動を根本的に揺るがす影響を及ぼしつつある。企業は自社の事業を継続させるために「これまでとは異なる発想」や「ビジネスモデル」に変化させていくことが急務になっている。​こうした社会変革のなかでも成長を続けられる組織に必要な要件とは何なのか。

 本セミナーでは、大企業のDX推進を支援する世界唯一のコミュニティを運営する「CDO Club Japan」と、創業期のスタートアップへの出資や大企業の新規事業創出支援を行なう「サムライインキュベート」の両者で「コロナ時代に打ち勝つイノベーション組織」について解説した。

登壇者プロフィール

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水上 晃氏
一般社団法人CDO Club Japan 理事・事務総長
 大手外資系コンサルティングファームにてIT・情報産業の戦略コンサルタントならびにデジタル分野のテクノロジーコンサルタントとして一線で活躍した後に、最高デジタル責任者のコミュニティの運営チームとしてCDO Clubに参画。同社以外でもデジタル分野のスタートアップの支援や自身でもデジタル分野の事業を複数運営

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成瀬 功一氏
株式会社サムライインキュベートPartner Enterprise Group
 1985年生まれ、愛知県出身。2010年大手組織コンサル会社へ入社し「新規メディア事業立ち上げから営業・運営」を実施、組織コンサルティングも経験。2013年外資系コンサルティング会社へ移り、大企業イノベーションに関わるプロジェクトを多数経験。並行して、日本の複数スタートアップに対する立上げ支援〜インキュベーションを多数実施。某大企業主催アクセラレータプログラムへスタートアップ側として参加し、採択企業に選ばれた経験を持つ。2018年よりサムライインキュベートに参画。大企業のオープンイノベーションをはじめとする事業創出支援を担うGroupを率い、国内のみならず海外との連携も積極的に行う。

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佐藤 亮氏
株式会社サムライインキュベートTeam Leader Enterprise Group
 新卒で総合商社に入社、国際貿易・物流業務、対国内・欧州向けアパレル小売法人営業・中国、東南アジア生産拠点の生産管理業務に従事。
サムライでは、国内のイノベーション創出支援と、イスラエル担当として、現地企業と日本企業との協業・新規事業開発支援に携わる。

コロナによって起きた経済環境の変化とデジタルシフトの必要性〜CDO Club Japanより〜

 CDO Club Japan(以下CCJ)とはデジタル分野における世界初の経営陣コミュニティの日本拠点で、国内企業に所属する数多くの専門家やストラテジストが会員となっている。
 主な活動は企業内でデジタル推進に取り組むChief Digital / Data Officer(以下CDO)の啓蒙活動や、CDOに関する業務に関するアドバイス/コンサルティング、次世代CDO向けの研修プログラムの実施などである。

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 そんな国内企業のDigital Transformation推進(以下、DX推進)を牽引してきた同社が、コロナウイルス感染拡大が企業にどういった影響を与えたのかを分析する。同社の理事・事務総長 水上 晃氏は次のように解説する。
 
コロナ禍で起きた各業界の経営環境の変化とは

 今回起こったコロナの影響は、リーマンショックを超える経済インパクトがあると予想されており、現状各業界それぞれ先が読めない状況になっているのは言うまでもない。日本の多くの大企業が、歴史的赤字を弾き出すという状況であり、これからの経営の舵取りの仕方についてはどの企業も悩んでいる状態であることも課題であると言う。自然災害による被害と比較して、今回のウイルスによる被害は特に全業界が影響を受けたというところが一番のポイントだと言う

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環境変化が激動する中でのリーダーシップの形とは?

 このように、各業界とも多大な影響を受けている中でポイントとなるのが、「緊急時の対応力」である。例えば、台湾のリーダーたちは、早急にマスク在庫システムを立ち上げるなどで問題解決にあたった。この例にあるように、企業のリーダーにはスピードとアジリティーが追求されるような時代になっている。

昨年の台風17号や今年のコロナウイルスの世界的大流行など、毎年前例のない事態が起きている。この時代のリーダーシップは、前提条件が全く変わってしまうことが日常茶飯事であるということを理解した上で、

・大胆かつ迅速に行動できること
・データに基づき、客観的に、再現性のある判断ができること
・その時の判断に対して柔軟に対応ができること

これらを企業のリーダーが牽引し、組織全体に浸透させることが重要であるという。

国内/海外のCDOによるコロナ禍に対するチャレンジ

 世界では、コロナによってより一層CDOの採用が加速し、企業内のDX化が進んでいる。コロナ後の世界に関する議論の一つに、経済学者のタイラー・コーエンが提唱している”World 2.0”というコンセプトがある。自分たちに影響があるトピックをいくつか取り上げると、例えば、オフィスの役割が働く場所という機能からコミュニケーションをとる場としての機能に変化していくと予想している。

 また東京などの都市部では、移動の動線が張り巡らされており経済合理性が高いという考えから、リモートで業務ができる世界になってくることが予想されている。こうなると、例えば地方でも、デジタルの環境が整っているか否かによって経済活動が大きく変わってくる。

 このように様々な議論が進められるなか、各企業のCDOはコロナ禍に対応した様々な取り組みを進めている。例えば海外の大企業では、ロレアルや、サムソナイトなど、早期にeコマースの販売チャネルを拡大、また、データ活用によるマーケティング手法の採用、バーシャル空間での接客など、オンライン上の顧客接点を増やす取り組みを積極的かつスピーディーに行っている。(詳細略)
 国内の大企業でも以下事例のようにより新しい社会に対応するべく、早期に対応、方針の見直しを行う企業も増えている。

<国内事例>

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<デジタルシフトの重要ポイントまとめ>
・即時性(スピード感と柔軟性)
・お客様とのタッチポイントを持っている
・学習と改善のサイクルを回すための情報収集
・シェアと所有をどのように捉えるか
・地域の集中と分散(働く場所など)
・デジタルとリアリティのバランスミックスをどこまでうまくできるか
・個人宅のIoT化
・個人情報の扱い方にも変化あり


デジタルビジネス実現のための組織づくりとは〜CDO Club Japanより〜

デジタルビジネスを生み出すためのチームづくり

続けて水上氏は、日本企業の特徴を踏まえた今後のDX化推進について解説する。
 日本企業の強い同調性は、ものづくりという領域では強みが発揮されるが、新しいアイデアを生み出すために適した環境でないことが多い。新しいアイデアを生み出すためには、「どれだけ新しい情報に接しているか」が必要になる。そのためには意識的に普段とは違う人と会うなど、新しい情報と接することができる環境が鍵になる。またチームのメンバー構成においても、同じ価値観を持つ人だけで構成するのではなく、異なった価値観を持つメンバーを集め、チームに様々な視点を取り入れることが重要になる。

デジタルビジネス構築の特徴

 デジタルビジネスを構築する上で重要なもう一つの観点は、消費者や第三者の発想を取り入れることである。
 従来は変化が少ない時代であったため、課題に対して的確な解決策を施していくようなビジネスモデルだったが、現在は変化が激しい時代のため、未来を予測して、常にトライアンドエラーを繰り返していく手法にシフトしており、例えば、データ活用/デジタル化を前提としたビジネスモデルを設計すること、消費者の視点を取り入れること、などは重要視されている。
 消費者や他社と連携してサービスを設計していくことも、従来とは大きく変化している点であるといえる。

デジタルビジネスを実現するために必要な要素
 デジタルビジネスは多数のプレイヤーで構築することでモデルが複雑化しているため、自社の視点だけではなく、ビジネスモデル全体を俯瞰するような思考が必要になってきていると同時に、顧客との繋がりを意識したトータルなサービス設計を行なうことも大切である。
 
 最後に水上氏は次のように締める。
「デジタルビジネスで新規事業を立ち上げるには、従来の価値観を変え、連携先を増やすようなクロスデジタルな知見を持つ人材が必要です。クロスデジタルとは、単にプログラムに詳しい人材ではなく「デジタル×●●」に精通する人材を指し、そうした人材がチームにいることが重要だと考えています。」

世界のスタートアップ/大企業のコロナ対応策の先進事例〜サムライインキュベートより〜

With/Afterコロナ時代の事業環境変化

 これまで国内外含め、様々な大手企業やスタートアップの事業開発、デジタルイノベーション推進を支援してきたサムライインキュベート。当社はその知見、そしてグローバルなネットワークを生かして世界の様々な先進事例の分析を通じてWith/Afterコロナ時代の事業変化を予想したレポートをリリースした。(ダウンロードURLはこちら

 当社で大企業のイノベーション推進支援を担当する成瀬は、このレポートを踏まえて、With/Afterコロナ時代の事業環境変化を次のように解説する。

 今回コロナの感染が拡大したことで、一次的にはDX化(オンラインツール/デリバリーサービスなどの普及)が止むを得ない形で普及し、それと同時に経済活動自体は縮小しているという現状である。
 そのなかでデジタルによって「意外と使ってみたら意外と便利だった」ということに気付き浸透している領域もあれば、ビジネス構造の変化を今急速に迫られている領域があることも浮き彫りになってきた。今後もウイルスや災害によって被害が出てくるというリスクを踏まえた対応をしていくことが求められてくる。
 次の変化として、デジタルに関するリテラシーがある人/ない人の二極化、ライフスタイル/ワークスタイルの二極化が一時的に起こる。そういった変化がエリアレベルで拡大することで、地方都市や近郊への人口分散が進んでいくのではないかと予想している。
 また多くの人が自粛期間によって移動したいという欲が出てきたことから見るに、どれだけ自動化が進んだとしても人の本質的な機能、生物としての人間らしさがより注目されてくるのではないか、と成瀬は説明する。

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コロナで加速する世界の事業例
ここからは当社がコロナ禍で注目されている国内外大企業/スタートアップの取り組みを佐藤が紹介した。

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①リモートワークの浸透
 世界的な外出規制・自粛をうけて、各社とも業務のバーチャル化・効率化が浸透。業務がリモート化し、リモートワークスペース/セキュリティー/コンプラ関連の需要が増えていく。特に、製造現場・顧客・従業員とのコミュニケーションのオンライン化が促進。ビデオ会議ツールの大規模化や、よりリアルなオフィスを思考するバーチャル3Dオフィスも今後注目される。

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②おうち時間の充実
 外出自粛・規制に伴い、家中で過ごす余暇時間が増加、エンタメ関連や家中フィットネスに大きな注目が集まった。一方、ソーシャルディスタンスによる心理的不安やストレスに対して瞑想アプリやふれあいロボットといったサービスも注目される。

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③スペース分散・有効活用
 リモートワーク浸透や固定費の合理化ニーズをうけ、オフィス縮小/移転サービスや飲食店の空きスペースを有効的に使用するサービスが誕生。特にフットワークの軽いベンチャーでのオフィス縮小/移転の相談が急増中、下期以降は大企業も含めさらに増加と予想している。今後は、合理的なオフィス戦略を支援する移転/縮小/分散サービスや、それに伴う荷物預けサービスなどが伸長する。

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④フードデリバリー/テイクアウトの普及
 デリバリ専門かつ店舗を集積させたゴーストレストランや健康食のサブスク型デリバリなどサービスの多様化が進展。デリバリの手法には、ロボットやドローンなど最先端技術を活用するサービスも開始されている。

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⑤オンライン教育
 短期での無償提供を通じて一気に利用が浸透。主には学習コンテンツ、授業実施サポートツール、クラス/成績などの管理ツールなどに大別されるが、それらすべてを備えたプラットフォーム伸長している。

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⑥遠隔医療
 スクリーニング/診断ツールやモニタリング、心身ケアなど医療従事者向け、患者さん向けなどのソリューションが誕生。

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⑦ D2C/ECの拡大
 外出自粛の影響により、長らく最後の砦と見なされてきた食料品のEC化が各地で加速。搬送手法の非接触化がみられるほか、エンタメ要素の追加・購入体験向上などサービスが多様化。

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⑧Mobility
 コロナの影響をうけて、公共機関を使えない流れがあり、移動手段の見直しが進んでいる。世界的にマイクロモビリティーなどの密閉空間ではない空間で中距離くらいまでは移動しようという流れが起きていることも背景に需要が拡大。

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⑨都市マネジメント
 感染拡大を防ぐために、都市管理の重要性がコロナの影響を受けて上昇し、インフラの整備やコミュニケーションサービスのデジタル化などが世界的に加速している。

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コロナを自社改革の機会に変える施策
今回は20社ほどの紹介と足元の変化予想に留まったが、当社がリリースしたレポートには88社の取り組み事例と、中長期的な変化予想がまとめられている。

 こうした事例や今後の変化予想をもとに当社は、コロナを自社改革の機会に変える施策として3つの軸を据えている。
 一つがこの変化をもとに事業自体を変えていく”Business Transformation”。二つ目が変化を引っ張っていく人材を育て、支援していく”Human Capital Transformation”。最後に様々な技術の中で特に業務インパクトが大きいものを自社開発、もしくは外部から導入するなどして、この時代に適応したオペレーションに変革していく”Operation Transformation”だ。

 サムライインキュベートはこの3つの軸を組み合わせたプログラムから、コロナが自社改革の機会になるよう支援をしていく予定だ。

 最後に成瀬は次のように締める。
「今、世の中では様々な未来予想がまとめられていますが、何よりも重要なのは行動を起こすことです。これまで積み上げられてきた前提が大きく覆されている状況の中では、まず行動を起こす人がチャンスを掴むのだと思います。弊社としてもチャレンジをしようとしている方々を積極的にご支援をし、日本から先進事例や新しい国のあり方を一緒につくっていけたらと思います。」

2020年9月17日(木)開催セミナー告知

次回第2回『不確実時代のイノベーションを生み出す組織づくり』の参加申し込みはCDO Club Japanのフォームよりお願いします!

▶︎CDO Club Japan『不確実時代のイノベーションを生み出す組織づくり』申し込みフォーム

お問い合わせ

CDO Club Japanとサムライインキュベートは、組織・人材開発を統合した新事業・技術開発やオープンイノベーション支援の共同開発・提供を行っています。ご興味ある方はお気軽にお問い合わせください!

【ご支援内容イメージ】
1. 事業・経営一体型のイノベーション・DX支援に関する支援
 ・イノベーション組織ボトルネック診断
 ・新事業開発/DX推進/オープンイノベーション実行支援
 ・スタートアップ投資・M&A支援
 ・イノベーション組織・制度・人材開発の実行支援
2. デジタル分野におけるイノベーション創造の共同研究に関する支援
 ・デジタル時代のビジネスモデルに対する研究
 ・企業のDXにおけるイノベーションプロセスにおける研究
3. イノベーション手法の普及・啓発に関する支援
 ・イノベーション の普及に関するセミナー・イベント等の開催
など

<一般社団法人CDO Club Japan>
CDO Clubはデジタル分野における世界初の経営陣コミュニティで、世界各国のメンバーは10,000人以上にものぼり、様々な領域においてプレゼンスを発揮している。
 CDO Club のメンバーになると、デジタルに関連した最新のニュースや研究報告が手に入ったり、キャリア開発支援といったサービスを受けることができる。また、経営陣同士の交流会や CDO サミットをはじめとする先進的なイベントに参加することも可能。
<株式会社サムライインキュベート>
サムライインキュベートは、創業期のスタートアップから出資・インキュベーションを行うベンチャーキャピタルとして日本、イスラエル、アフリカ大陸のスタートアップに豊富な投資実績を持ち、同時に国内だけではなく、海外企業も巻き込んだグローバルなオープンイノベーションを実施し、大企業の新規事業創出支援を多数行なっている。