トレーニングと練習

 もうすぐフレアバーテンダーの大会が大阪で行われる。

 私が選手として各地のフレアバーテンダーの大会に出ていたのは20年前の事だ。当然20年も経てば技術レベルは全く違うものになり、違う競技になったといっても過言ではない。

 ただ、時代が変わっても参考になることもあるかもしれないので私の競技への向き合い方を書き残すことにする。

 その昔、結構真剣に練習をしていた私は自分なりのトレーニング方法を確立していた。
「大会は結果を出すために出場する」というモットーでルールを読み込み、点数が一番残るやり方を組み上げる。それを、大会当日の本番できっちり再現出来るようにするのが私のトレーニングだった。

 ボトルを投げるだけの練習は練習であり、トレーニングではない。演技を始めると調子が悪くても、失敗しても途中でやめない。途中でやめると練習にはなるがトレーニングにはならない。大会の本番で出来ることしかしないのがトレーニングで、「ちょっとストップ、ストップ」って練習中に演技を途中でやめる人たちが信じられなかった。私にとっては練習は遊びであり、トレーニングとは違うものだった。

 本番で起こりうるトラブルを再現してのトレーニングもかなりやった。トレーニングは数か月続き、本番になると「あぁ、もうこれで繰り返すことはないんだ」とホッとする状態にもっていくまで追い込んでいた。

 その頃、世界大会で決勝に残るメンバーはみんなそんなトレーニング方法をやっていた。もちろん、神戸のkojiさんみたいに最低限の練習量で世界大会の決勝に残る人も中にはいるが、私みたいな凡人にはそういう芸当はできない。その頃、世界大会に集まった50人の出場選手がいたらそういうトレーニングをしていたのが15人程度だろうか、基本的に上位に残るメンバーはいつも決まっていたし、実質その15人くらいで10人のファイナルの取り合いをしていたようなものだった。

 なぜそこまでストイックにトレーニングをしていたのかというと、フレアを始めてちょうど1年、フロリダで世界大会のルーキー部門に出ていた私は予選のフレアの演技中、観客のものすごい歓声と照明のキラキラしたものが混ざって体中に浴びたときの快感が忘れられなかったからである。

 感覚的にはフレアを始めて2年間は毎日8時間、練習かトレーニングをしていた。寝ているかご飯食べてるか投げてるか。なかなかすべてを犠牲にしてトレーニングするという人はどの時代にも少ない。なので、練習時間が限られている人は、練習時間を増やすことを考えるより、戦う相手がそういうトレーニングをしていると考えた上で自分はどう戦うかを決めるといいだろう。世界には、とんでもない人がゴロゴロいる。


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