任された

 2020年の一番茶が始まる前に茶農家の大将に「任せるで」と言われ、「はい、わかりました」と答えた。

 それまでの10数年、茶畑での作業は一通りやっている。
機械で揉んだり、覆いをかけたり、茶園を刈り取ったり、肥料をやったり、挿し木をした時もあった。

 作業内容はわかる。作業も一人でやっていた。
いつ、どんな作業をしているかはノートにもつけている。

 まぁ、出来るだろう。

 大将に言われたことをこなす作業はずっとやってきた。
「上の畑、周りの覆いしといて」と電話で言われるだけで鉄の棒を打ち付け土台を作り、風で茶園を傷めないようにポールを駆使して骨組みを作り、寒冷紗を広げて固定する。ポールが折れていたら補修し、固定用のひもが足らなくなれば辺りにあるひもの切れ端をつなげて使う、などの応用も可能だ。

 まぁ、出来るだろう。
ちょっとは思っていた、のかもしれない。

 実際やり始めると全然わからない。

 やらなければならない作業はわかる。ただ、いつやればいいのかがわからない。そう、それまでの私の茶園の仕事はというと、言われたことをただこなしていただけだった。

 去年、この時期にこういう作業をやっていた。
今年もそろそろその作業はやらなければならない。でもいつ?同じ日でいいの?

 「芽を見て」とアドバイスをもらったりもしたが、作業をこなすことばかり考えていた私は芽のどこをどう見ればいいのかがわからなかったのだ。

 芽を見るようになってから2年が経ち、出来ていると思っていた作業もポイントがずれていたのが分かる。作業をすることで、茶の芽がどう変化するか、どうなることを期待しているのかを意識できていないと作業がちゃんと出来ない、と今はよく分かる。



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