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宇治茶道場「匠の館」

 私は日本茶インストラクターとしての仕事で月に1,2回、宇治川畔にある宇治茶道場「匠の館」で勤務している。京都府茶業会議所が運営している、もっと宇治茶を身近に体験してもらおうというお店だ。最高級の玉露・煎茶・抹茶を自分で淹れて(点てて)安価で飲める、知る人ぞ知る隠れた名店である。

 宇治茶の宣伝のために大金を払ってメディアに広告をするより、一人一人に直接最高の宇治茶を飲んでもらおうということで生まれた場所だと聞いている。そこで、丁寧に淹れ方やお茶の魅力を伝えるために日本茶インストラクターが常駐している。

 来られたお客さんはお茶を飲んで皆、目を丸くする。「こんな美味しいお茶、飲むのは初めて」そう言ってもらえることも多い。在籍するインストラクターはそれぞれ魅力的で、落ち着く場所だからかつい長居する人も多い。

 ただ、コロナが蔓延してからぱったりと客足は途絶えてしまった。宇治に観光に来る人もぐんと減り、ただでさえ知る人ぞ知る場所だったのに知る人がいなくなってしまったのかと不安になる日もある。コロナで飲食業が厳しいと言われるが、店に行くと厳しいどころの騒ぎではないのがよくわかる。

 思えば1000年以上も前、当時都に流行した疾病に対し念仏を唱えお茶を点てた空也上人のように、お茶には強い力がある。もちろん、科学的に分析するとカテキンだなんだということもあるが、ちょっとホッとする、不安になる気持ちを静めるひとときが大事だと感じる。不安な世の中の今でこそ、お茶を飲む一服の時間を大切にしたい。


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