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不妊治療を行っている社員がいますか?

社員が不妊治療を行っているか約7割の企業が把握せず

「不妊治療を行っている社員がいますか?」

こんな質問をされたら、御社ではどの様な回答をされるでしょうか。下記調査データーは、厚生労働省が平成29年度に行った「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」の結果です。

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左側のデーターを見ていただいて分かるように、社員が不妊治療を行っているか約7割の企業では把握できていません。また、右側のデーターでは、不妊治療を行っている社員が受けられる支援制度がない企業が7割となっています。

同調査によれば、不妊治療を行っている社員側もこれにリンクして、不妊治療を行っていることを知られたくないから「職場に一切伝えない」とするものが約6割もいたとの結果が出ており、これでは、企業も把握できないとするのも頷けるところではあります。

また、治療と仕事の両立が出来なかったと回答する社員の中で、仕事を辞めたり、雇用形態を変えたとするものが2割強、不妊治療自体やめたものが1割いました。不妊治療を行っている社員への支援制度がなければ、治療と仕事の両立が難しい場合もあり、こちらも致し方ない判断だったんだろうと推察できます。

さて、不妊治療について言い出しにくい職場風土、支援制度に興味のない企業がこれらの根本的な問題となると考えられますが、政府としてはこの様な「不妊治療と仕事の両立」の現状についてどの様な支援策を考えているのでしょうか。

不妊治療と仕事の両立ができる職場環境整備等に向けた政府の取り組み

なかなか進まない不妊治療と仕事の両立支援に対し、政府は2つの策を2021年度講じることで、推進しようとしています。

1つは、助成金です。

両立支援等助成金の中に、不妊治療を受けやすい職場環境整備に向けた支援のため、「不妊治療両立支援コース」を創設しました。

不妊治療のための休暇制度等の両立支援制度を導入し、社員に利用させた事業主に対し、支給要件を満たすことで28.5万円が支給される助成金です。あまり高額の支給額ではありませんが、支援制度導入を考えられている企業では、利用を検討されても良いのではないでしょうか。

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もう一つは、一般事業主行動計画への「不妊治療を受ける労働者に配慮した措置の実施」の追加です。

次世代育成支援対策推進法に基づき、企業が従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や、子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備などに取り組むに当たり、計画期間、目標、目標達成のための対策及びその実施時期を定める「一般事業主行動計画」ですが、それに「不妊治療を受ける労働者に配慮した措置の実施」の項目が追加されました。

次世代育成支援対策推進法に関しては、常時、従業員101人以上の企業に、行動計画の策定・届出、公表・周知が義務付けられていますし、それ以下の従業員数であっても、子育てを支援する企業の証である「くるみん」の認証を目指す場合には「一般事業主行動計画」の策定が必要になってきます。

この2つの策により、不妊治療と仕事の両立ができる職場環境整備を推し進めようとしている政府ですが、令和3年4月、内閣府特命担当大臣と厚生労働大臣の連名で、経団連、商工会議所等各団体へ「不妊治療と仕事の両立ができる職場環境整備等に向けた取組に関する要請書」も出しています。

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ただ、あくまでも要請ベースなため、これにはあまり効果があるとは言い難いと思われます。

まずは不妊治療に関する知識の普及から

さて、不妊治療と仕事の両立支援については、政府も施策によって後押ししていますが、ただ制度を作れば両立支援になるかというと、それは決してないでしょう。

最初の方に書かせて頂きましたが、プライベートの最たる問題である不妊治療について、不妊治療を行っていることを言い出しにくい職場風土であれば、制度が出来ても使う社員は少ないと思われます。

また、他の社員についていえば関心がないか、女性であっても不妊治療についてよく分かっていないものです。そんな中で、制度だけ作ってしまうと、そんな社員からは、不妊治療を行う社員だけ特別扱いすると不満を抱きかねません。

では、どうすれば他の社員が不満を持つことなく、活きた制度作り運用ができるのか。それは、いくつかのステップを踏むことによって可能になるとyoshikawaは考えています。

まずは「不妊治療の知識普及による職場風土づくり」を最初に行う必要があるでしょう。そのうえで「社内ニーズ調査」を行えば、かなり実態に即した調査把握ができると思われます。そしていよいよ「制度構築」となりますが、その前に一つ大事な儀式を入れて頂きます。

「経営者が意思表明」です。

経営者が自ら不妊治療の両立支援についての必要性を表明することで、社内の取り組み意識が格段に変わってきます。この後、二つほどステップがあるのですが、これらの5つステップを踏んでいくことで活きた制度作り・運用が出来るものと考えています。

ただし、一回制度をつくっただけでは、完璧なものは作れません。社内でよい制度に育ていく。そんな姿勢も必要です。

ちなみに、yoshikawaも関わらせて頂いているPEARLという団体では、順天堂大学遠藤源樹准教授総監修のもと、順天堂大学竹田省教授(産婦人科学)、加藤レディスクリニック加藤恵一院長(生殖医学)など、生殖医学の日本トップレベルの先生方と協働して、妊娠・不妊治療・不育症に関する正確な情報発信と、不妊治療と就労の両立を目指す企業を支援するサイトを開設しています。

不妊治療についてや、不妊治療と就労を両立できる社会のための情報も掲載されていますので、良かったら一度ご覧下さい!



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