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ギターの弦が切れた

午前3時、ギターの弦が、カーン、という音を立てて切れた。

わたしはそのとき、ネットフリックスで進撃の巨人を観ていた。
画面の中においしそうなローストビーフが鎮座していたため、いままでに食べたなかで、最高のそれはなんだったろうな、と考えていたところであった。

なんだったろうな、と考えるだけでは飽き足らなかった。家の近くに激ウマローストビーフ屋さんがないかと調べ、もはや、わたしの脳は、牛に支配されていた。

牛に支配されたわたしの脳に、カーン、という音がこだまする。

たちどころに牛は去っていった。
どこの弦が切れたのかを調べるために、電気毛布によってあたためられた体を布団の外に出すという、さむざむしい選択肢のみが、わたしのもとに残る。

冷たい。

言わずもがな、深夜のフローリングは冷たい。
足の裏の熱が、フローリングに吸収されてゆくこの感覚は、とても気持ちが悪い。
だいたい、昼は暑すぎて夜は寒すぎる季節の存在理由がわからない。
思春期の人間くらい、情緒不安定な気候だ。
まったくいやになるなあと思いながらギターの弦に手を伸ばす。
うんざりしながら床に熱を奪われたままでいる、わたしもまた、情緒不安定な人間なのだろう。

触れてみると、Dのコードを弾くために必要な弦が切れていた。

ソラニンは、もう弾けない。

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