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人生で最も重要なフォロワー100人。台湾でアクセシビリティデジタルマガジンを立ち上げた振り返り

こんにちは、サイボウズでプロダクトデザイナーをやっているSamです!
この記事は、#2022年のわたしと仕事 をテーマにした記事です。

会社での仕事はもちろん、今年すごく成長を実感できました。
しかし、今年自分にとって一番大切なことを皆さんに共有したいと思っています。

🎉今年は台湾初のアクセシビリティのデジタルマガジンを立ち上げ、半年でフォロワー100人のゴールを達成しました🎉

100フォロワーを達成した時のスクショ
100フォロワーを達成した瞬間、みんな「スクショ撮ろう〜〜」ってすごく盛り上がった🤣

…わかっています。この誰でもフォロワー5000万人がいるデジタルワールドでは、フォロワー100人は何も誇れることではありません。

しかし、自分がずっとやりたかった社会に貢献できる「デザイン」ができたり、デザイナーとしても、プロダクトを作る人としても成長を実感できたので、この機会で記録しておきたいと思っています!

アクセシビリティ啓発活動に至るまでの道

私は2021年にサイボウズに新卒入社をしました。

デザイナー新卒では毎年研修内容が異なっているんですが、自分は各サブチームに一週間に体験する機会がありました。その時に人生初めて、「アクセシビリティ」や「インクルーシブ」などの概念や領域を知りました。
私にとってバイアスを取り除く、今までのデザイン概念を(いい意味で)壊す一週間でした。研修の詳しい内容は以下の記事で書いています:

また在日外国人として、普段からマイノリティーとして生活しているから、マイノリティーの気持ちをすごくわかっています。自分のデザインスキルで、誰一人取り残さない、インクルーシブな世界を作りたいな、とその時から思い始めました。

2022年4月あたり、Facebookの台湾デザインコミュニティで、「アクセシビリティに関心のあるデザイナーボランティア募集中です!」の投稿を見かけましたので、自分がやりたいことにピッタリ合うので、応募してみて、活動を始めるきっかけでした。

デジタルマガジンを作るには「文章が上手い」だけではできません

自分は応募した時に、今まで書いた記事を見てもらってて、「文章の上手い人」と認識されていて、チームリードみたいな仕事も任せられました。

しかし、デジタルマガジンを作るには「文章が上手い」だけではできません。

最初からいくつかの問題にぶつかりました:

  • 🤔 「デジタルマガジンでアクセシビリティ啓発活動をやりたい!」と思うものの、そもそも誰に何をどうやって伝えたいか?

  • 🤔 ウェブアクセシビリティに対する知見が深いメンバーがいるものの、どうやって読者により伝わりやすい文章にできるか?

🤔 そもそも誰に何をどうやって伝えたいか?

私たちが啓発したいの気持ちがいっぱいあるけど、ボランティア人数も少ないし、リソースが限られている中、どう有効なターゲット設定をするか?の議論に時間をかかりました。

その時決めたコンセプトは:

誰に:デザイナー、PM、エンジニアなどの開発部門、かつアクセシビリティに聞いたことがない・詳しくない人
目標:「アクセシビリティの知見を得て、自分で開発する時にアクセシビリティの視点で取り組めることができるようになった!」を言ってもらいたい

台湾では、まだアクセシビリティに対する認知度が低いです。なので、アクセシビリティの知識を普及しようとしても、最初は「なぜアクセシビリティを知らなければならないの?」、「わたしとどんな関係があるの?」と思う読者がたくさんいるだろうと想定していました。

自分の経験なんですが、今まで生活の中に障がい者の方がいなかったので、想像できなかったし、理解も漠然していました。しかし、会社のメンバーも障がい者メンバーいて、時々実際製品やウェブサイトを操作する様子を見えたので、「これは完全にバグじゃん!」と実感することができました。

なので、アクセシビリティは何( What )?どうやってできる( How )?だけを紹介するのはいけないです。なぜアクセシビリティを取り組む( Why )?の理由提供も不可欠だなと自分が考えました。

Why、What、Howの流れの手書きメモ
当時考えたことの手書きメモ

実際、私たち今出しているテーマも、Why、What、Howのいずれを提供すること心がけています。

実際のテーマはこんな感じにカテゴライズされています:

  • Whyシリーズ:障がい者インタビュー、アクセシビリティエバンジェリストインタビュー。実際にユーザーやアクセシビリティを取り組む人の声を提供することによって、アクセシビリティを取り組む大切さや価値を提供します。

  • Whatシリーズ:支援技術とそのユーザー像の紹介(スクリーンリーダー、拡大機能、点字など)。基礎知識を詳しく紹介する。

  • Howシリーズ:インタラクション・UXデザインのケーススタディ、 開発で使う技術(Accessible name、Tabindexの使い方など)。デザイナー・エンジニアが参考になれる、実践性の高い知識を紹介する。

🤔 どうやって読者により伝わりやすい文章にできるか?

最初にチームに入った時に、アクセシビリティエキスパートからメンバーに基礎研修をする資料をレビューする機会がありました。
それは6ページくらい、知らない言葉が散らかっている、論文みたいなGoogle Documentでした。

アクセシビリティのDOM treeや原理などを紹介する文章
中国語の文章なんですが、内容がすごく難しいことをなんとなく伝わっていますかね

アクセシビリティに対してある程度知っている私でも、「難しい、わからないな」と思いました。

私たちの読者もアクセシビリティに対して詳しくない人を想定しているから、エキスパートの知見を活かしながら、読者がわかりやすい文章にする必要があると思いました。

文章をレビューする側として、心がけていることが4つあります:

👉 伝えたいことを一つ明確にすること
記事を書くたびに、「それも言いたい」、「あれも言わなきゃ」になってしまう。なのでこういったノレッジを共有する記事は、最初からコアコンセプトを決めておくことがすごく大切です。

「サイボウズの企画の根幹は「コンセプト」。「誰に、なんと言ってほしいか」を明文化し、企画します。」

「誰に」はその企画のターゲットであり、「なんと言ってほしいか」はターゲットに提供する価値を意味します。コンセプトがあれば理想を明確にして、活動に一貫性をもたせることができます。チーム内での理解・共感も得られやすくなります。

いちマーケティング担当者の企画書の書き方

このメソッド、割と自分が納得感が高く、今仕事だけではなく、こういったプライベートの活動でも活用しています。

👉 ターゲットを想像してもらうこと
想像してみてください。あなたは1日中コードと戦っていました。退勤した後に、ソファに横になってFacebookを眺めています。その時に、この記事をシェアする投稿を見かけました。どういう気持ちになりますか?クリックしますか?記事を読みますか?読んだらどういう学びがありますか?

👉 記事の構造をきちんと考えておくこと
これは一つの記事がわかりやすいかどうかの一番重要なポイントと言っても過言ではありません。書きながら次の段落を考えちゃうと、だんだん本題から逸れたり、作者からは成り立っているけど、読者から唐突な展開になってしまう可能性が高くなります。
そして、構造を先に考えておくと、記事の初期段階で他のメンバーもレビューすることができ、コスト低くわかりやすい文章に修正できるメリットがあります。

インタビュー記事の箇条書き構造
自分は文章の構造を初期段階でみんなに共有します。

👉 比喩、実例を挙げる、画像、映像などの手法やメディアを活用すること
特に自分が詳しいことをまとめようとすると、文章が抽象になりがち傾向があるとメンバーの記事をレビューしてて思いました。
私はよく「知識の密度」と呼んでいます。抽象な文章は、洗練された文章にできるけど、知識の密度が高すぎて、前提知識のない読者に対してはハードル高くなってしまいます。
なので、 比喩、実例を挙げることによって、もっと具体的に説明してあげた方が、知識の密度が低くなり、文章がわかりやすくなります。
実際にレビューするときに、「これは読んでもわからない!もっと説明して〜」、「文章が長くてわからない名詞がたくさんあるので読みたいくない〜」みたいなツッコミ役もやっています。

aria-labelなどのaccessible nameを紹介するようなコンテンツ
実際の記事では、難しいフローを画像で表現したり、Codepenで例を作ったり、またスクリーンリーダーユーザーが実際にCodepenを操作する動画も載せています。

そしてこういった点も、みんなに共通認識を持ってもらうように、詳しくドキュメント化をしています。
文章をレビューする際に、こういった観点からレビューすることによって、判断の軸が明確になったし、言語化するスキルも上がった気がします。

私たちのターゲットと文章を書く時のテックニックもドキュメントに載せています

「デザイナー」としてだけではなく、「プロダクトを作るリード」として成長

一つのデジタルマガジンを育てることは、プロダクトを作るプロセスとすごく似ていると作りながら思いました。
デザイナーとして、ユーザー(読者)を想像しながら、価値を届けるまでの体験を設計するスキルはもちろん、今までデザイナーとして体験だけにフォーカスしていたので、コンテンツ提供の仕組み作り、チームリードとしてメンバーへのケア、コンテンツ開発から読者の前に届くまでのプロセスなど、ボランティア活動を通して学べました。

個人的に大きいな学びとしては3つあります:

定期的・継続的・長期的にコンテンツを提供できる仕組みづくり

最初は一本の記事にすごく時間をかかっていました。テーマ選び→素材準備→文章を書く→レビュー→振り返るの一連のプロセスで一本の記事で3人の2〜3週間くらいをかかっていました。

オリジナルかつノレッジ満載のコンテンツを出したいから。

しかし、それだと毎回記事を出すコストが高くなり、定期的に公開することができませんでした。なのでフォロワーはなかなか伸びませんでした。デジタルマガジンを経営した上で、いかに定期的・継続的にコンテンツを出せることが一番大事だと先輩から教えてくれたので、工数の少ない記事と、工数の高い記事を分けて考えてみました。

  • 工数の少ない記事:外国のコンテンツの翻訳・感想文、最新の海外アクセシビリティトレンド・ニュースを紹介など

  • 工数の高い記事:ノウハウのまとめ、インタビュー記事など

チームメンバーのパッションをケアすること

ボランティアの仲間をすごく大切にしています。それぞれ得意技を活かして、いいマガジンを作ることに貢献しています。一人でも欠けてはいけないと思っています。

ボランティア活動なので、メンバーはお金とかの報酬ももらっていない中で活動をしてくれています。なので、少なくてもみんながやりたいこと、やってみたいことの機会を積極的に作っていきたいと思っています。

定期的に、チームと個人の目標を話し合う機会を作り、みんなそれぞれの思いを把握した上で、普段のタスクではその人がチャレンジしたいことができているか、これからそういう機会が提供できそうかを考えたりをします。

みんなそれぞれの考えを書き出して共有し合うためのブレストでした。Google Sheetsでやりました。

製品(記事)が出来上がったのは終わりじゃない。広報の大切さを実感

製品作り・開発の大切さは元々わかっているが、会社は大きいなので、自分とマーケティング部門との接点が少ないです。なので、製品作りだけを知っていた。マーケティングは重要だと知っているものの、なかなか実感できませんでした。

自分たちのマガジンを作ってて、宣伝あり・なしで10倍くらいのビュー数の差が実際に出たから、開発者としてはマーケティングの大切さを実感しました…

いい製品(内容)が提供したら、皆んないつか知ってもらうだろう、みたいな甘い考えも捨てました。これからもっとホリスティックに製品作る→ユーザーに届くまでのプロセスを見れる気がします。

来年に向けて:日本のアクセシビリティ知見も台湾で共有したい!

ここまで4600文字を書いたのですが、得られた学びの半分も載せていなかった気がします笑。

マガジンを作ってて、今までデザイナーとしての自分が視野が狭いところがあったと気づいたこともでき、自分のクリエイティブを100%発揮できる場があり、「製品作りが楽しいな」とワクワクする毎日が送れることができました。

何より、自分の頭から生まれたコンセプトが、みんなの力を合わせて具体化させて、その結果が社会に貢献している実感があるので、自分にとってやはりこういうことをやり続けていきたいなと思います。

2023年も、これからの目標を達成するために活動を企画したり、引き続き200人、300人…100000の人に価値を届けられると嬉しいです!

個人的な観察なんですが、日本は台湾と比べるとアクセシビリティのリソースもノウハウも蓄積されているから、もっと日本の知見を台湾に共有できるといいなと思いながら、どうやるのがまだわからないので、もし何かアイデアがある方がいらっしゃったら遠慮なくTwitterのDMで連絡してください笑

最後に、中国語メディアにはなっていますが、私たちの活動に興味がある方、応援したい方ぜひフォローしてくださると嬉しいです✨

来年もよろしくお願いします!

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