二つの祖国をみて

映画 二つの祖国 を見ました。

終戦記念日だから何か戦争について考えないといけないような気がして。でも、あまり直接的な描写をするものは今の私の心への負担が大きくて見る自信がなくて。山崎豊子さんの作品だから人間ドラマがメインかな、なんとか見れるかなと思ったのがこの作品でした。

この作品は、日系2世のアメリカ人として生きた男性の人生と戦争を描いたお話です。見終えた後の感想としては、本当になんと言って良いのか分からない。でも、いろいろ感じたことを書き残しておきたくて文章に起こしてみることにしました。

戦争と日米関係について

まず日系アメリカ人が戦中に、アメリカで収容所に収容されていたと言う事実を私はちゃんと認識していなかった。私は日本とアメリカの交友関係を促進するための US - Japanese Council の提供するプログラムにも参加していたにもかかわらず。聞いたことはあったけれどきちんと考えたことをなかったことを恥じた。これまで戦争という歴史を経て日本とアメリカが関係を築いていることにあまり深く疑問を持ったことはなかった。この作品を見た後も、日米同盟を批判するわけではないけれど、こういった戦争の歴史がある上での日米関係なんだ、ということを認識する機会になった。もちろんこの作品は日本の側から、原爆や日系アメリカ人への差別・戦時中の収監という戦争を捉えたものであるから、視点は偏る。アメリカの側からみたら、日本軍の暴挙、パールハーバーの戦いなど日本を非難する要素があるのもわかる。ただ、私の中での日米関係の捉え方は変わった気がする。

忠誠心について

このお話の中では、日系アメリカ人たちが米国と日本どちらに忠誠を誓うのか、とアメリカ政府に問われる機会が何度かある。忠誠心ってなんなのだろう。戦争に協力することが忠誠心なのだろうか。日本に肩入れしすぎだと批判するアメリカ人上官に対し、主人公は東京裁判でアメリカという国が公正に裁きを行うようにモニターする、それがアメリカという国の正義ではないのかと上官に問う。本当にそうだと思った。敵国であっても、捕虜や戦犯とい割れる人たちの人間の尊厳を守ったり、自分の国が誤った方向に行かないように行動するそれが祖国に対する忠誠心でなくて、なんなんだろう。

広田弘毅という人について

映画では 広田弘毅というA級戦犯として処刑された唯一の文官とさらっと描かれる程度であった。でも私は城山三郎の 落日燃ゆ を読んでからこの広田さんという人に対してとても思い入れがある。どうしてこの戦争に反対し、語学・国際情勢の把握にも長けていた彼がどうして処刑されたのか、どうしてGHQはそう判断したのか。煮え切らない態度であった、軍の暴走を止めることができなかったという批判もあるのは承知なのだけど、全てを飲み込んで処刑台に立った人だという印象が私の中ではある。山崎さんの文章の中でこの人がどういう描かれ方をしているのか気になる。

戦争と一人一人のひと、人生について

私は戦争を経験していないし、わからないことだらけ。でも、戦争がなければこの作中の登場人物たちはもっと違う人生を生きていたことは明らか。戦争がひとりひとりの人生に影を落とし、戦中だけでなく戦後もそれぞれに肉体的、精神的な苦しみ、痛み、哀しみを残すということを感じた。人間のそういった痛みは、立ち直らなければならない、立ち直ることが正とされるしそれが美談となる。だけど、そんな痛みを受け止めきれないことだってそりゃああるだろうと思った。私だって同じことを経験したら立ち直れる、生きていこうと思える気力が湧くとは思えない。その人が弱い人間だから、立ち直れないのか。そうではないと思う。抱え切れないだろう、そんなの。

山崎豊子さんの作品について

私は華麗なる一族をドラマで見て、小説を読もうとして挫折した。あの光のない息の詰まる世界観が苦しかった。重かった。でも少し時間がたった今、この二つの祖国の原作を読んでみたいと思った。主人公は最後、拳銃自殺をする。華麗なる一族の主人公もそうだった。昔は哀しみの終焉に向かっていく山﨑さんの世界観を重く感じたし、人間の嫌な部分を見るばかりのような気がして、恐ろしかった。でも今、私はハッピーエンドではなく、抱えきれない哀しみ、苦しみをもって死を選ぶ、という結末にしてくれる山崎さんの作品に安心する。そんなものを抱えて人間がまた希望を持って生きていくなんて想像できないから。山崎さんの作品の中では、そういう人間としての打たれ強さ、を強いられていないから。人間の儚さをあるものとして、描いてくださるところに、感謝せずにはいられない。

色々書いたのだけど、戦争の話もだけど山崎さんの描く人間の哀しみ、苦しみというものにも多くを書いてしまった気がする。でも戦争というのは、ひとりひとりの人生という視点で見ると、そういった人生に落とす影や痛みなのかもしれない。

この間、朝ドラ 半分青い をみていたのだけど、そこで出征経験のあるおじいちゃんが戦争について語ってとお願いされた時に「ごめんな、戦争のことは思い出したくないんや。おじいちゃんは幸せなおじいちゃんとして草太の記憶の中にいたいんや」といっていた台詞が印象に残っている。あとこれも。「おじいちゃんの若い頃の曲は軍歌とかばっかりであんまり好きじゃなくてな。(サザンのような)こんな曲があれば、おばあちゃんに歌ってやったのになあ。」


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