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野菜の料理人~ハンバーグ編~

「まいちゃん、今日はハンバーグだよ!」
「わ~い!ハンバーグ大好き!」

こんがり焼けたハンバーグにとろ~っとデミグラスソースをかけて
ブロッコリー、ニンジンのグラッセ、ミニトマトを添えてはい!出来上がり。

「いいにおいだね、お母さん。いただきまーす!」

まいちゃんは勢い良く食べました。とてもおいしそうに…でも、付け添えの野菜には一つも手をつけず、残ったまま。
どうしてなんだろうとお母さんは悩みます。彩りはキレイでおいしそうに見えるのに。
ブロッコリーはマヨネーズをかけてもダメ。
ニンジンのグラッセは甘めにしてもダメ。
プチトマトは一生懸命に皮をむいてもダメ。
ダメダメ尽くしでお母さんは困ってしまいました。

ある時お母さんは、はたと気付きます。
『単体の物は食べない。でも、トマトならスープにすれば飲むし、ミートソースも好き。ならば、野菜を切り刻んでハンバーグの中に入れてしまおう』
野菜をみじん切りにしてお肉に混ぜてしまえば良いのではないかと考えました。

普段作っていたハンバーグは、玉ねぎしか入っていませんでした。
今回作るハンバーグは玉ねぎに加えて、キャベツ、ニンジン、ブロッコリーの茎さえもみじん切りにしました。
刻んだ量はザッと300gぐらい。
お母さんが野菜を刻みまくっている横で、まいちゃんの不安げな顔。
それをよそに、お母さんはこの刻んだ野菜を炒めます。
少しの塩コショウをすると野菜がしんなりします。そして荒熱を取るために冷めるのを待つのです。

お肉も同じく300gぐらいで、そこに卵1個、小麦粉大さじ2、少しの塩コショウ、
そして今回主役の荒熱を取った野菜を投入!
あとは、まんべんなくぐちゃぐちゃ、もみもみ、ぐちゃぐちゃ、もみもみ・・・
それから1個の量を手のひらにとり、空気を抜くように右手から左手へ、左手から右手へキャッチボールをするかのように空気を抜きます。
最後にフライパンで焼くのですが、お母さんは火にかける前に全部並べてから火をつけます。量が多くなると慌ててしまうからです。
フライパンに火をかけ「おいしくな~れ」と小さく魔法をかけます。

お母さんは、お皿に1個だけ焼いたハンバーグを置き、その上からデミグラスソースをかけました。
まいちゃんは、それをジーっと見つめています。いつものハンバーグと変わらず同じなのです。野菜のかけらすらみじんもありません。野菜はいっぱい入っているはずなのに、おいしそうにつばをゴックンとしています。

「まいちゃん、お肉とお野菜たちがみんな仲良しになってお口の中に入りたいって言っているよ」

まいちゃんは、恐る恐るではありますが、興味津々で目がまん丸です。フォークをハンバーグに突き刺しひとくちパクッと食べると、

「おいしーーーいっ!」

両手を高くつき上げ満面笑みの表情。
ハンバーグの半分はあの大嫌いだったたくさんのお野菜。お肉だけ好きだったけど、お野菜も食べられるようになりました。

お母さんは微笑みながら、心の中でガッツポーズをしました。

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