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MODEL~モデル~

「コノおはなのいろは…あかいね。コッチのは、きいろいね」
「どれも綺麗で可愛いね」
「ねぇねぇ、どうしてこんなに、たくさんのキレイなおはながあるの?」
「お花にもね、個性があるんだよ」
「コセイ?」

幼い我が子と公園に来て散歩している。花が何千種類もある公園だ。
子供って素直で見たものを全て吸収している。水を吸うスポンジのように。
太陽に照らされているこれらの花の美しさに癒されて、心がニュートラルになっていくのを感じる。

…半年前から、仕事に少し疲れを感じて休暇を取った。


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「どうしてわかってくれないの!この服の魅せ方はこうでしょ!」
「はぁ…デザイナーが言うもんで…」
「あなたはデザイナーの言うことしか聞けないの?」
「はぁ…」
「あなた、やる気あんの?」

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私は、ファッションモデルだ。
パリ、ミラノ、ニューヨーク、そして東京。各地のランウェイを歩いてきた自負がある。
モデルは自分自身を持っていないと流されてしまう。食事、体形維持、メンタル…自分が信じた道を貫き通す力がないと、オーデションには受からない。かと言って、自分を出しすぎるとそのデザイナーの服とマッチしないこともある。
強烈な個性、インパクト、人を魅了するオーラ、自身を変容させる技を磨かなければならない。
何にでも染まる個性、そしてその服を魅せる個性。

それが昔の私は、自己中心的でわがままばかりを言っているだけの モデルだった。


この花の個性は赤くてグラデーションが綺麗。花びらのカーブがたまらなく可愛らしさを強調している。しかし、辺りが暗闇ならこの花の個性も生かされない。
太陽に照らされて美しさが引き立てられ、
風がそよげば可憐さが増し、
雨が降ればみずみずしさを感じさせる。
周りの環境によって如何様にでも表現できるのだ。

デザイナーの服を身に纏う。
ランウェイを歩く モデルに照明が当たり、
観客の歓声で気分が上がり、
トップスタイリスト達の技術があって自分自身が輝ける。
チームあっての “ 私 “ を表現できる。表現させてくれる。


周りが見えていない限り、自分一人での成功はあり得ない。
他者と協力し合った上で、自身の個性を持って探求し磨き続ける。


ようやく、答えを見つけたような気がする。
自分自身と仲間を信頼して一つのものを作り上げていく。
本物を見つめ、それを磨き、真実を追求し継続していく。
自分独りだけでは到底作り出すことはできない世界。

自分を信じて…仲間を信じて…さぁ、ミラノへ向けて出発だ。


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