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10年後の日記

私は、73歳のおばあちゃん。
旦那様は10年前に天国へ逝っちゃったの。
もう、独りには慣れっこになったと思うけど、
時々ね、寂しいなぁって思う。
そろそろ、旦那様のところに逝きたいなと思って、
終活でもしようと手付かずだった押入れを整理したわ。

隅っこのダンボール
こんなのあったかしら?
中を開けてみるとノートがたくさん入っていた。

それはね、旦那様の日記
亡くなった後で今、それが出てきたの。
何が書いてあるのかしら…
旦那様とはいえ、見てもいいのかしら…

私は、散々迷ったあげく見ることにした。
だって、妻だもん。
だって10年の月日が経っているのだもの。
いいよね。

日記にはこう書いてあった。


5月13日
心地よい風が君の髪を揺らす
君の笑顔は昔と変わらない


7月21日
夏の日差しがまぶしい
君と一緒に歩いていると
僕の心もまぶしく輝く…


え?  何コレ??
旦那様…浮気していたのーーー?
嘘、嘘、嘘よ!
この日記は仕事をリタイアしたあとに書いたもの。
内緒で会っていたのかしら…
うわーーーっ! ショック!!
どうしよう、どうしよう、嫉妬しちゃう。泣いちゃう。
誰? 誰なのよ!

「ただいま~」
「見て! コレ、父さん浮気していたのよ…母さん知らなかったぁ」
私は、息子の前でワンワン泣いてしまった。
息子は、そのノートに目を通した。

しばらく経って、
「母さん、結婚記念日っていつだか覚えている?」
「えーと…確か、11月21日だったかな」
「ここ読んで」
私は、赤い目で息子が指差す11月21日を読んだの。


11月21日
君は気付いていないみたいだ。
今日は、僕たちの結婚記念日なのに。
でも、いいか。
君が笑って、僕に話しかけてくれる。
それで幸せだ。


「母さんの早とちりだったようだね。父さん亡くなって10年経つのに、こんなにラブラブなところ見せられたんじゃ、たまんないね~」

日記の中には旦那様がいる。

お仏壇に飾ってある写真が笑っている。

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