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とことこショート

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2023年1月の記事一覧

スピーチコンテスト【後編】

スピーチコンテスト【後編】

今度は本選…人前で5分…ステージに立って一人でスピーチをする。
息子よ、上がらずにできるだろうか?
さらなる特訓が始まった。
ケリー先生はオーバーリアクションで良いと言った。
「日本人は控えめすぎる、大きな声が出ずモゴモゴ言って会場の人たちに聞こえないことが多い」と言っていた。

それもそうだと感じていた。日本は、核家族化が進んでおじいちゃんやおばあちゃんと一緒に住んでいないことが多い。周りにもい

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スピーチコンテスト【前編】

スピーチコンテスト【前編】

サエコは悩んでいた。
駅前の名の知れた所にするか、自宅から5分程度のアットホームな所にするか…
息子の英会話教室をどこにするかで悩んでいた。
これからの時代、グローバル化は避けられない。SNSの発達、いつでも世界と繋がれる環境、サエコは息子を国際人として育てたいと思っている。
そのためには、小さい頃から英会話教室に通うべきだと考えていた。

まずは、駅前の名の知れた英会話教室を訪ねた。
スーツをバ

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夢【後編】

夢【後編】

美彩は合唱コンクールに向けて全力で練習に励んだ。それは、美彩にとって自分を変える良いチャンスだった。

歌うことが好き。
歌うことで、心の鎖や重りがなくなる。夢へ羽を広げて飛び立てるような気がした。
夢…美彩の夢は…

毎日の課題曲の練習、ソロパートの練習、ボイストレーニング、喉のケア、首顔のストレッチ…やれることは全部やる。
何かに一生懸命に打ち込んだことは初めてだった。
昨日の自分より今日の自

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夢【前編】

夢【前編】

2歳の頃から記憶があった。
みんなの前で歌ったり踊ったりすると、歓声を上げて拍手される。
音楽が流れると、身体が自然と動く。踊りで表現したくなる。
それが美彩にとって喜びを感じるものだった。

小学校に上がって分かったことがある。
歌ったり踊ったりすることは、誰にでも出来るものだと疑いもしなかった。それが出来ない子もいるのだと知った。
音楽の時間、みんなでドレミの歌を歌った。後ろの方からなんとも言

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