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私の知っているビルゲイツ、その4

ビルゲイツとマクドナルドの話、Windows3.1の発表会にて

マクドナルドに関わる話はいくつでもネタがあるのですが、 その中からお茶目なビルゲイツの一面をご紹介いたしましょう。

Windows3.1の発表会は、日本で初めての大掛かりな発表イベントを新高輪プリンスの「飛天の間」を借り切って開催することになっていました。 プレゼンテーションが投影される映写幕はライティングの加減により半透明に透けてその後ろには80名を超えるフルオーケーストラが音楽を奏で、投影するプロジェクタも当時最新鋭の日本に4台しかなかったタラリアを3台使った一大イベントでありました。テーマは「笑ってお仕事、Windows」 もちろん、主役ビルゲイツの登壇によるプレゼンが目玉であったのですが、入念な打ち合わせも終えて後はイベントが始まるまでの時間控えの部屋でユックリくつろいでもらおうと、食事の手配をホテルにお願いしていました。 ビルゲイツは、食べるものには無頓着のところもあるのだけれど、一つだけ苦手なものが「コールド・サンドイッチ」冷たいサンドイッチには、手をつけようとしません。 事前にその趣旨をホテルに伝えてあったので、私は当然トーストしたパンで作ったクラブハウス・サンドかハンバーガーでも持ってきてもらえると思っていました。 銀色の大きな、それこそ豚の丸焼きでも入りそうな丸いカバーをかけた大皿が部屋に運ばれウェイターさんが、「どうぞっ」と蓋を取ったその中に一山のコールド・サンドイッチが積まれていました。 私は、「まずい、重要なプレゼン前にこんなモノ食べさせてビルの機嫌を損ねたくない」とビルは「いいから気にしないでくれよ」とメールをしています。 早速、ホテルの方に今からハンバーガーを頼むとどのくらい時間がかかるのか確認すると、 どうやらイベントのスタート時間にはギリギリとなりそうな気配。 

ふと振り返ると電通の若手営業マンで体力ならまかしとけという風の知っている顔、ゴメン名前を思い出せないのだけど、私の従弟と玉川大のアメフト部で一緒だったという話を前にしたことを思い出して「チョット悪いけれど、品川の駅前まで、ダッシュでお使いしてきてくれる? マクドナルドへ行ってチーズバーガーを4個とフライドポテト、飲み物はなし、宜しく!!!」 さすが、元アメフト部員だけあって俊足でマクドナルドの紙袋を抱えて帰ってきてくれました。 先ほどのサンドイッチは撤収した後のテーブルにチーズバーガーが山盛りになって、ビルゲイツは大満足で3つはたいらげたと思います。

私から電通の若手営業マンに、「本当にありがとう、お代を払うのを忘れないうちに払っておかなくちゃ」とお礼の言葉をさしあげたところ、「古川さん、今回のイベントに自分も立ち会って何もできないままそばに居るだけではなく、何か自分にできることでお役にたてて嬉しいっス」、と若者なりの一生懸命さに好感をもったのだけど、「本当に助かったよ、ところでお代の件なんだけど」ともう一度聞くと、「古川さん、これは受け取れません。 だって、僕はこの先、一生“ビルゲイツに昼飯を奢ったことがあるんだ” と皆に自慢できるじゃないですか」と言うのでした。 こういう瞬発力と機転の利く人間はその後電通で頭角を現し出世するだろうな、とその時思いありがたく奢ってもらうことにしました。 名前を忘れてしまったけれど、今でもその話を自慢にしているのでしょうか?

この日は、他にもいくつかヒヤヒヤすることがありました。 私が壇上で工場から出荷したばかりのパッケージを本当にビリビリと破いて、その中に同梱されているCDを使って実際にセットアップをするという段取りだったので、セットアップ途中でブルースクリーンでも出たら、それこそ「笑ってお仕事」ではなく、その場で『腹切ってお仕事』になってしまうと覚悟していました。 (この頃は、プレゼンで話をしながらセットアップが終了しましたが、昨今のWinodwsでは、イベント終了までに終わらなかったりして?)。当日の朝ほぼ徹夜で仕込みを終え、ビルゲイツが昼過ぎにリハーサルで登場、新宿のホテルまでウチのスタッフが迎えに行ってくれて、壇上に上がった瞬間、凍り付いてしまいました。「ビルの上着がグレーそしてズボンが紺色.」おいおいホテルに迎えにいった人間がちゃんと確認してから連れてこいよ..と会場のスタッフは焦りまくっています。 せめて、ズボンがグレー、ジャケットが紺ならOKだけど、その逆はないでしょ。そういう時に、だいたい私の役どころは、ビルゲイツに「おい、ズボンか上着を取りに行くからホテルの鍵を貸して」というか、マスターキーで部屋の鍵を開けてもらいズボンを持ってくるか、でも上下の色が揃ったスーツを日本まで持ってきているのだろうかとか、近くのデパートにジャケットだけでも買いに行こうかとかドタバタしていました。当時は、まだクールビズなんてものは無いですから、やはりキッチリとスーツで固めてもらわないと、ということでジャケット無しで登壇ってのは在り得ない。結局、その場で思いついたことは、そうビルゲイツが自分の髪の毛チギッて黄色いせーターの穴を隠すぐらいなら、俺たちだって機転を聞かせて何とか切り抜けようということに、結局舞台上のスポットライトを上半身だけ当てれば、下が紺色のズボンでも暗くて誰も判らないだろう、ということになり照明さんにお願いしてピンスポットが上半身だけあたっているという状態で本番を切り抜けました。その時撮影したビデオ、後で観ると結構笑えます。

最後のオチは、無事イベントも成功してその後、たくさんのインタビューをこなし、最後に夜の9時を過ぎたころ、木村太郎さんのTVインタビューを受けました。 そう、あの柔和な顔で結構ばっちり突っ込んだ質問をされるのですが、今日はもうこれで最後の仕事ということで、ビル君は上機嫌..そんな時にビル君は座っていても上半身が前後に揺れ始めるのだけど、何か不可解なことがあったり、機嫌をそこねるとその揺れが一瞬止まるのです。

まずい、何か厳しい質問でも受けているのかなとビルの顔を見たら「サム、俺って朝からこの色のズボンをはいていたのかい? 」って、「はい、その通り」「だったら、もっと早く教えてくれよ」といまさら言われてもねぇ.、それにしても夜の9時まで気がつかなかったのかい??? ってインタビューの途中で大笑いでありました。

では、ふるかわでした

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