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私の知っているビルゲイツ、その6

まだ伊丹空港が関西唯一の国際空港だったころのことです。 ビルゲイツの来日時に成田に到着、東京で仕事をして新幹線で大阪に移動、大阪でいくつかの仕事をこなして伊丹から韓国ソウルへ飛ぶところでした。飛行機のチケットはビジネスクラスで発券されておりディスカウントではない通常の航空券だったので、搭乗券をみるとファーストクラスにアップグレードされていました。(格安チケットではなく、通常チケットの場合は空席があれば自動的にアップグレードされる、ということなんでしょうね)。数日間の日本滞在も終えて、「今回の滞在も価値あるものだったね、楽しかったよ」と言っているビルゲイツ君、搭乗券を見た瞬間に切れた!!! 空港の待合室で人も歩いている公共の場所で、いきなり罵倒しまくり..(まぁ、こういう時は人前だとか忘れてしまうのだけど)..何にキレまくっていたかというと、「サム、お前に任せている日本のマイクロソフトはこんな無駄遣いをする会社なのか、何だこのファーストクラスの搭乗券ってのは、1時間ちょっとのフライトに何故そんな無駄な会社の金を使うんだ!!!」と怒っているのです。

こういう時は、ひとまず自分の気がすむまでまず怒らせておいて、一呼吸置きます。いきなり反論するとかえって逆上することもあるので、この「一呼吸」が大事なのだけど...反論するときはあくまでも冷静に論理的に、「ビル、落ち着いてくれよ。 俺がファーストクラスのチケットを購入するような人間と思っているのかい? それは心外だなぁ。この航空券はディスカウント・チケットではない通常の航空券なので自動的にアップグレードされただけなのだけど、誰もファーストクラスのチケットを購入するなんて無駄遣いはしていないし、なによりこのチケットはシアトル本社で手配して購入したものではないのかい?」 そして、最後のとどめとして、「ビル、ファーストクラスに座るのは居心地悪いなら、その搭乗券エコノミーに戻してもらうけれど、そうするかい?」 (そのフライトは、エコノミーとファーストの2クラスで、ビジネスクラスが無かったのだけど)... そこまで、言い含めるとビルゲイツ君、神妙な顔をして自分が人前で切れて罵倒していたことを反省します。 そこから先がビルゲイツ君らしいのだけど、「サム、怒りちらしてゴメン、搭乗券を準備してくれてありがとう、それに乗っていくよ。」と人前でもチャンと謝るところが偉い!! 

世の中には自分が間違えていても絶対に謝らない人が沢山いるのだけど、仕事上の話で会議中だろうがお客さまの前であろうが、ちょっとした勘違いでキレることは多々あるのだけど、「一呼吸置いて」論理的に自分の間違いを指摘するとビルゲイツ君、決してしバックレルことなく、ちゃんと反省して人前でも謝ってきます。 その繰り返しでお互いの信頼関係が築き上げられるのだけど、そのスリルはきっと防具なしの空手か、真剣で剣道の試合をしているような感じだったのかもしれませんね...(白髪も増えるはずだぁ)

あるマスコミのインタビューで、ビルゲイツはアメリカの国内線でも国際線でもファーストクラスのチケットを購入しない、という理由について語っているのだけれど、「会社の金でも個人の金でも、そのような無駄なことに金を使うことは理解できない。もし自分の体がエコノミークラスにフィットしないほど大きければ、もう少し広いシートに座りたいと思うだろうが、それほど自分の体は大きいわけではない。むしろ席に余裕があるときに毛布を借りて後部座席の肘掛を何席か跳ね上げて横に寝た方が楽じゃない?ファーストクラスの料金に何倍もお金を払ってみたところで、到着する時間は皆同じなのだから」という返答でした。 

ビルゲイツ君もさすがにこの数年は、空港のセキュリティの問題や訪問した現地で有効に滞在時間を過ごすために、プライベート・ジェットを利用することも多いのだけど、この場合は飛行機のリース料(だか、全額一度に払ったか知りませんが、とにかく飛行機本体の値段)も、航空燃料代も、空港使用税も、整備費も全部自前で会社には一切請求していないんだそうです。自分がCEOやCSA(Chief Software Architect)だろうが、主要な株主だろうが、会社の金を自分たちの決めた出張ルール以外のことに使うことにはとても厳しく、それがマイクロソフト流のDNAなんだろうな、と思うのでありました。 (この20数年、どこのホテルでどのような部屋を用意しても、ビルに「サムこんな大きな部屋はもったいない、寝る場所とネットがアクセスできればそれで良いのだから」といつも言われてきました。 そんな時に私は、「いつも会社で利用させてもらっているので、今日は通常料金でジュニア・スィートをサービスしてもらったんだ」と言うと納得するのでした。)ビルゲイツのことをケチだとかいう人がいますが、彼は倹約家で、論理的ではないことに無駄な金を使うことには躊躇しますが、その使い方はいつもフェアなのです。(人よりさらに、自分にそれをより厳しく課するところがね)

昨今、個人の眼でマイクロソフトのエクゼクティブを空港で見かけることが多々あるのだけど、ビルゲイツの実践してきたマイクロソフトのDNAは何処へいってしまったのだろう、と思うような場面に出くわすこと多いです。(この話はまた別途)

では、ふるかわでした

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