破壊された成人式

私は成人式実行委員だったので、市役所の担当の方に成人式の前日の準備と閉式の言葉(私の担当)は控え、その上で式に参加させて頂きたい旨を伝えようと連絡したところ、担当の方がいらっしゃらなかったので別な方に伝言をお願いした。その後、担当の方から電話がかかってきて、次のように言われた。

緊急事態宣言やまんぼうの出ている地域から来た人が成人式に参加して、もしその中で感染が確認されるようなことがあったならば、次の一個下の成人式も今より厳しい中止という判断をすることになる。それを考えて、理解できるならば○○くんには成人式の参加を控えてもらい、緊急事態宣言やまんぼうが出ている地域に住む同級生たちに控えるよう広めてもらいたい。市にも脅迫めいた電話がたくさんかかってくる。そうした市民の心情も考えてもらいたい。実行委員として頑張ってきた○○くんなら理解してもらえるはずだと市の職員は思っている。コロナ禍で制限をかけざるを得ない事態になってしまったがそこをどうか理解してほしい。

つまり、私(東京住み)のような緊急事態宣言またはまんぼうが発令されている地域から来た人達が成人式に参加して、もし感染者がその成人式で出た場合、お前のせいにするということである。さらに、そこで感染者が出た場合、何ら関係のない次の一個下の成人式を中止するとまで言われた。

私は、このように電話で脅され、もし感染者を出してしまったらどうしようという恐怖心や責任を重く感じたので、参加しないことにした。もし参加したとして、私は実行委員であるから、市役所の人と必ず会うことになる。このように言われたあとで市役所の人とどのように顔を合わせればいいのだろうか。「あれほど来るなと言ったのに、来たのか」と思われ、蔑みの目で見られるのは当然だ。そんな苦しい思いまでして参加しようとは思わなかった。

また、先に配られていた抗原検査キットで検査した結果、陰性であった。陰性ならば参加できると思われるだろうが、陰性でも参加してはならないのだ。たとえ検査で陰性だったとしても「控えろ」と市の担当の人に言われていたので。これでは何のために検査キットを新成人全員に配ったのか意味がわからない。税金の無駄遣いではないか。そういった、いろいろな反論を思いついたが、もはや時間切れであった。

私はこの市の対応に大変憤りを感じたが、もう成人式は終わった。

こうして、一生に一度しかない私の成人式は破壊されたのである。

この時、私とともに成人式を不参加としてくれた友がいた。彼は言った。

「○○くんが参加しない成人式なんて成人式じゃないよ」

苦しい時に同じ泥水をすすってくれる彼は、私の一生の友となるだろう。

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