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断片の短編①「あつれき」

 どうしよう。なんて言おう――。今日は彼と二人きり。最初のカフェはまずまずだった。スイーツも好評で、ずっと話題も尽きなかった。お会計は彼がスムーズに済ませてくれた。その後は、外を散歩。ぽかぽかした陽気で、花も動物たちも幸せそうに見えた。「あのさ、相談があるんだけど」。

 「何だよ、改まって」。大きな瞳が私を見つめている。彼に不満はない。不満があるのは、自分のほうだ。私がどうしたら、彼は喜ぶだろう。私がどうなったら、彼は幸せだろう。もっと知りたいと思った。思ってしまった。「食べたの。あの実を」。それで私は永遠を失い、後悔を知った。

 「そうだったのか」。大きな瞳はまだ私を捉えている。「どうして君は」。彼の言葉を遮る。「私が悪いの。お別れね」。大きな瞳が言った。「いやだ。君がいない永遠などいらない」。彼は駆け出した。――きっとあの実を食べるのだろう。永遠よりも私を選ぶのだろう。彼に不満はない。だけど…。

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