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つかむ ~話題と主張~

 私たちはいつごろから文章を読み始めたのだろうか。就学前、いやいや小学校高学年か。いや、違うかもしれない。実は、社会に出た大人たちもでも実は読めてないのかもしれない。なんて恐ろしい事実だ。質問を変えよう。私たちはどうやって文章を読んでいるのだろうか――。みなさんは答えられるだろうか。おそらく難しいのではないだろうか。それは、どうやって呼吸をしているのか、どうやって恋に落ちるのか、といった問いに答えにくいのと同じかもしれない。脳や身体が勝手にやっている。わざわざ意識することではない。文章を読むのも、自分の思いのままでよいなら、そうだろう。読書のように。しかし、文章には書いた人がいる。書いたが人が込めた思いやメッセージがある。特にコミュニケーションとして文章を読む場合には、それを正確に受け取る必要がある。つまり、文章には、正しい読み方が存在するのだ。
 一文を読むには「主語」と「述語」、つまり「誰(何)が、どうした」を押さえることが重要だ。ちなみに「主語」は、「は・が」の直前に置かれる。「述語」は基本、文末だ。では、複数の文が連なっている場合はどうか。まず、「話題」を押さえるべきだ。「何について述べているか」、ということだ。これが分からなければ、旅行に行くのに行き先が分からないようなものだ。では、どうやって押さえればいいか。「話題」は、文の「主語」になりやすい。特に、段落の最初か最後の文の「主語」になりやすい。逆に言うと、「は・が」の前に置かれることが多い言葉が「話題」だと考えてよい、ということだ。この「話題」を見つけることで、筆者が「何について述べているか」をつかむことができる。これでやっと行き先がわかった。
 「何について」が分かったら、次は「何だと述べたいのか」を押さえよう。旅行の比喩を続けるなら、旅先で何をするのか、旅の目的のことだ。文章の話題に戻せば、「主張」ということになる。「主張」は、文の「述語」になっていることが多い。特に、重要な一文の「述語」だ。そして、重要な一文とは段落の最初か最後に置かれることが多い。そして、「べきだ」「ねばならない」という強調表現が文末に付けられていることも多い。したがって、段落の「主張」は、段落の最初と最後の一文に注目することで見つけやすくなる。これで旅行の行き先と目的がわかった。安心して旅行ができそうだ。ただ、国語で扱うような文章が一つの段落だけで終わることは、ほぼない。今読んでいるこの文章同様、複数の段落で構成されているはずだ。その場合でも、段落ごとの「主張」を押さえていけばいい。同じ「主張」のまとまりが意味段落になり、最後の意味段落の「主張」が文章全体の「主張」になるだけだ。最後に、「主張」を押さえる際に最も大事なことは、恣意的にやらないこと。これではせっかくの正しい読み方が台無しだ。書かれ方や書かれた場所に注意しながら、「読み手」ではなく、「書き手」にとっての「主張」を押さえなければならない。

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