イチモツネタ

-恋とセックスのあいだ-

大学卒業後、外資の保険会社に入った。

OJTで先輩の契約に同行して、先輩の顧客に恋をした。

帰りの車で私は、「あのお客さんめちゃくちゃカッコイイですねっ!」とはしゃぎながら、先輩に彼との仲を取り持ってもらえるよう頼んだ。

すぐに彼から連絡が来て、二人で食事に行くことになり、次に先輩と会った時には、彼は私の彼氏になっていた(もちろんそれによって契約担当者が先輩から私に変わるなんてことはあり得ない)。


彼は私と付き合うようになったことでメアドを変えた。

付き合うことになったお店の名前と付き合い始めた日付を並べた、二人だけがその意味を知るメアドは、きっと彼の愛がいっぱい詰まっていたが、私はそれをあまり好ましくは思えなかった。


彼は、とても立派なモノをお持ちだった。

目の前に神様が現れたら、病床の親の薬よりもつい先に望んでしまう「大きなイチモツ」だ。

彼の華奢な体つきからは想像できないソレが衝撃的すぎて一瞬たじろぐも、私の好奇心の前では興味の対象にすぐ変わる。

だが、続いて私を待っていた現実は、中々受け入れ難いものだった。

遅漏。

彼はそれまで、女性のナカでイッたことはないと言う。

性欲の強いお姉様を相手にした時でさえ、1時間ヤリ続けてもイケなかったと。

早漏よりいいのか?

いや、回数をこなせるなら早くてもいい。

セックスは一回の時間より回数を重視する私にとって、彼のソレに向き合うには私は若すぎた。

彼は優しかった。

「初めてイケそうだなと思えたんだけど」

無理だとわかって、私の手と口で果てる彼。

言葉にできない虚無感というものを感じずにはいられなかった。


その後、二人で食事に行った時に私が領収書をもらったことで、「接待ぢゃないよね?俺達の関係で領収書なんて要るの?」と彼に誤解されたことをきっかけに、面倒になって別れてしまった。


若かったのだ。

本当に彼と愛を育む気があれば、彼に保険外交員が個人事業主であるということを説明すれば良かったし、彼の内なる趣味嗜好を引き出すために色々試してみることもできたはずだ。

だがいずれも、向き合うには私の経験値は乏しすぎた。

オトナの社会についても、性域やセックスの悦びについても。


あれから15年、幸か不幸か、大きさやセックスの長さで彼の記録を塗り替える人には出会っていない。


私に幸あれ。


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