『西南シルクロードは密林に消える』を読んで
中国成都からインドのカルカッタまで、幻の西南シルクロードと呼ばれる道を辿った旅行記。
旅情はほぼ皆無、ビルマの反政府ゲリラや山岳民族の手を借りながら、ジャングルを越え、国境破りを続ける破天荒なノンフィクションでありました。
本書は高野秀行氏の代表作で、かつ最もリスキーな作品だと言われています。密入国を繰り返し、山岳地帯ではアヘンをたしなむ。およそ道とは思えぬ密林の悪路を、反政府ゲリラとともにひたすら歩く。
重くなりがちなところ、作者独特の軽快な筆致とユーモアのおかげで、テンポよく読み進めました。裏取りがなされている歴史考証も、作品に重厚感を与えています。
そして何より驚くのは、著者の語学力の高さ。英語、中国語はもちろん、カチン語(反政府ゲリラの言葉)、ビルマ語に長けていました。
文面を正直にとれば、あれだけの会話文を書き起こすには、相当の語学力が必要です。最初は(ストーリーに都合よく訳していないか)疑ったのですが、逆に、あれだけ話せないとこんな過酷な旅はできないだろうとも思いました。
「身振り、手振りで大丈夫」なんて言っている私は、その程度の旅しかできないんだろうな。ちょっと悔しいけど。