SCENE11:「川②」【メイキングオブ『ワンダーら』】
●シーン概略
そしてしりとりで「川」につながる。
◎偶然の産物
実は、前シーン「花」とつなげるために「花がきれいだな」と言わせたわけではない。台本を書いた時点、つまり構成を考えるより前の段階からこのセリフで始まっていた。単純に「三途」を思わせるための花で、おそらく「花」のシーンがなければスムーズにそう連想できていただろう。しりとりがうまくいきすぎた例。
それにしても、「川①」のほうで「ああ、眠い」と言わせてしまったもんだから、ついついB (眠い奴)に進行を頼ってしまう。表情もよく動くし、なんか雰囲気を纏ってるA (気怠げ)とC (ツンツン髪)の空気感を中和してくれる。オチも連続で任せてるし。
◎大きなものが通過する
本シーンの目的は、「半ばで大きなものが上空を通過する」ことのみである。これもまた『2017』で登場した要素だったが、しかし特にモチーフやらアイテムではない。これはある種の不条理イズムというか、私が諸々の不条理劇から受け取ったニュアンスの現れである。”本筋は他所にある”とでも言うか。登場人物(つまり我々が客席から観測しうる範囲の)には到底届き得ない、なにか大きなもの。その影に入ることはあっても逆はない。そういう大きな流れの外部もしくは細部”だけ”を切り取るのが不条理劇の定石、というかそうやって描くと途端に不条理劇じみてくるような感じ。描き方の話ですね。
◎大きなものの正体
といったことを受け継いで、本作中でも大きなものを通過させた。
いちおうかなり具体的なイメージ──否、これに関してはもはや”設定”というレベルのものだが──がある。が、さすがにそこまで語り出すと野暮が過ぎる。「川①」の項で「それを必要な解像度で描ける技術が無い」と書いたのも含まれる。
あとは本質として、登場人物と同じ目線で体験してほしいということがある。登場人物より読み手のほうがいつ何時も優位に立てるわけではない。我々現実の人間も、感じることさえ容易ではない大きなものの動きの下に生きているのである。的な。
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