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SCENE10:「花」【メイキングオブ『ワンダーら』】

●シーン概略

「プロコンジョウ 仕事の雰囲気」という番組のインタビューを受ける花屋。


◎怒りの花屋

「花を育てる」という素敵っぽい行動と、その動機が噛み合っていないとしたら?
このシーンもまた”なにかのための、なにかなどない”を前提としている。この場面を思いついた時点では、当人には意外と切実な経緯がある設定にしていたが、しゃらくさいのでそれを表出させない選択をした。おかげで物凄くトンチキなことを言う人物みたいになってしまったけれど、それこそ他者の納得のために彼は行動していない、ということの表明である。
終わり際に彼はインタビュアーに花を贈るが、ここにも他意はない。花言葉というやつは厄介で、何を送っても何かしらの意味を感じさせてしまう。正直「ぬくもり」が最適解かも怪しい。本質は好意も悪意もない、ただの行為としたかった。
もっと言えば彼から花を買う人物を描いてもよかった。怒りをもって育てられた花を買ったとしても、客が怒りを受け取る義務もまたないのだ。発信者と受信者の軽やかな断絶。ただそこまで話を広げると、シーン単体のボリューム感が増しすぎるので結果オーライか。

◎唯一の”名前”

川①」の項にて登場人物に名前が無い旨について触れたが、「川」に限らず本作中に登場するほぼ全員が同じく名前を持っていない。
そんな中、唯一本シーンに登場する花屋の彼には「六奴 鴎(ろくやつ かもめ)」という名前が与えられた。しかしなんのことはない、某ドキュメンタリー番組をパロディするために、なにかしら名前が必要だっただけだ。(このパロディに関しても、「ドキュメンタリーあるある」がやりたかったわけではない。台本をQ&Aの形で書いてしまったので、そのままネームにしやすかろうと思ってドキュメンタリー風にしただけである。なにかを揶揄したり嘲笑する意図はない。ちなみに私はそのような意図でつくられるあるあるの笑いはかなり嫌いです。)そんな彼の名前も、なるべくなにも連想しない名前にしたかったので、こんな珍妙なものになった。
容姿に関しても、花屋っぽくない見た目にしたかっただけ(というか逆に花屋っぽい容姿って?)である。

◎四谷啓太郎

悪魔のメムメムちゃん』を連載していた四谷啓太郎氏が参照元。ギャグ漫画家3人目。こんなにテイストバラバラにしなくても…と我ながら思うが、しょうがない。そういう台本を書いちゃったんだもの。
そしてそんなにテイスト出てない。トンチキな人物が真面目に語り続ける、みたいなのは”風”っちゃ”風”。四谷氏の作品だとここに尖ったツッコミが入るからね。って思うと、ツッコミがあればかなり”風”なのかも。

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