見出し画像

SCENE7:「星」【メイキングオブ『ワンダーら』】

●シーン概略

ごっちんを待ちながら、死んだらどうなるかをだらだら喋るヤンキー…ギャル?の2人。


◎考えるヤンキー

このシーンも『2017』から転用している。台本自体は本作仕様にだいぶと書き直してるが、おおまかには変わらず「哲学するヤンキー」を描くためのシーンであった。『2017』当時は、死んだらどうなるかと問われたヤンキーは「数字になんだよ」と答えていた。今回それが「星」になったことにはさして意味はない。よくそう言うし、このギャルもそれを聞いたことがあったんだろう。
『2017』は全体を通して「人は死んだらどうなるのか」を議論している節があったから、その中でバリエーションをつけるためにもヤンキーに「数字」と答えてもらっていたが、今回はその議論自体は本筋ではないため、あえてありきたりな応答にしてもらった。

◎オマージュのオマージュ

何度も書いているように、本作は過去に自分がつくった作品からの流用を多くしている。しかしこのシーンに関しては、もう一層オマージュのレイヤーがある。
ゴドーを待ちながらという不条理劇の代名詞的作品がある。「」の項で不条理劇に傾倒していたと書いたが、当然『ゴドー』も随分読み込んだ。『2017』の作品全体はそこまで匂わないようにしたが、このヤンキーのシーケンスだけあからさまにやってみよう、と意識して書いた。まあ結果「誰かを待っている2人」と「片方が靴を気にしている」という要素だけに留まったが。
というわけで本シーン「星」もゴドーもとい”ごっちん”を待つ2人と、なんだか靴を脱ぎたい1人を召喚することになった。そしてごっちんは現れない。(『ゴドーを待ちながら』でもゴドーは来ない)

◎思った以上に、ギャル

先述したように、本シーンは議論に重きを置いてはいない。とはいえ、本来もう少し「では星になるとはどういうことか」を考えさせてみるつもりではあった。だが私の中のギャル設定レベルが思ったよりギャルで、あんまりまともに話し合ってくれなかった。キャラが勝手に動いたという意味ではここもそうかもしれない。立っている方の奴が「干し芋?」と天然かますのも想定外だったし、しかもまさかそれが便秘に繋がってくるとは。そりゃあ当然いつか死ぬことより今の便秘のほうが切実な問題である。
あとアングルを変えたくて鉄塔を描いたのもアドリブだったが(星=上空を意識させたかったのかも)、これも図らずも鉄塔に集まる鳥……ムーちゃんが捕らえたスズメとダブったりしていた。

◎阿部共実

」の項で述べていた、露骨に阿部共実氏を参照したシーンがここである。吹き出しの形がまんますぎる。キャラデザも割と寄せているので、知ってる人は多分気づいちゃう……。
阿部共実氏の中でも直近の作である『潮が舞い子が舞い』にインスパイアしている。この手のやりとりが実際に頻出しているし。まあ改めて言うまでもなく台本自体は『2017』の時点であるのでパクリではないです!くれぐれも!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?