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『スマートフォンの略はスマホじゃなくてスマフォのはずやのに』の回

手持ち無沙汰な夜に、突然誰かに会いたくなるときがある。あの胸の内がグッとなって、うわあってなる感じは何なのだろう。擬音がすごいことになったが、何かで胸が満たされてパンパンになるような感じ。ただ単純に寂しいとも違う、いま誰かに会ったらきっと楽しい会話ができるだろうといった予感に満ちた夜、そんなときがある。とはいえ、いまの時代は携帯電話があるから、その気になればいつだって誰かと連絡を取ることはできる。至る所で言いつくされていることだとは思うが、携帯電話の無かった時代の、誰かに会いたいな、しゃべりたいなと思ったときの悶々とした気持ちたるや、現代以上にすさまじかったことであろうよ。

そんな現代の便利なアイテム、スマートフォン。略してスマホ。ブログでは正しい略し方はスマホじゃなくてスマフォなんじゃないのか、なんてふうに書いたが、どう考えても言いやすいのはスマホのほう。スマフォってなんかフォのところで息を出すことになって、口がフォってなるから言いにくいもん。そのまんまのこと書いたけど。「ゐ」や「ゑ」が、厳密には発音の違う「い」や「え」にまるめられたように、発音のしやすさによって言葉は変わっていくもの。だからスマートフォンの略し方も、スマフォじゃなくてスマホでいいのではないだろうか。

それにしても、今の時代のスマホを持っている中学生たちは、ラインのチャットとかめちゃくちゃ楽しいだろうね。わたしが中学生のころには、Yahoo!メッセンジャーというサービスが友人たちとの間で流行っていた。これはパソコン上でできるチャットのようなものであり、中学生だったわたしは、部活が終わり家に帰るとサッサとお風呂とご飯を済ませて、夜な夜な友人たちとチャットをする楽しみにふけっていたのであった。Yahoo!メッセンジャーでは、チャット機能だけではなく将棋などのミニゲームの機能もあり、学校で友人と「今日の夜7時にメッセンジャーな」と口約束をしては毎晩ウキウキしながら遊んでいた。ラインのスタンプのようなものもあり、中学生だったわたしたちはひたすらにスタンプを連打していた。相手がスタンプを押せばこっちもスタンプで返す。相手がスタンプを押すや否やこちらもスタンプを被せ気味に返す。いつでもスタンプ返しができるように、マウスのカーソルは常に、次に押すつもりのスタンプの上に置いておく。もうなんでもいいからスタンプを押しまくる。Yahoo!メッセンジャーには、新しいおもちゃを手に入れたときのように夢中になった。

今になって、なんであんなにも夢中になっていたんだろうと考えると、チャットをする間柄というものが、友人関係の中でも特に仲の良い関係の証のように感じられて嬉しかったからなのかもしれない。『学校でもしゃべって、家帰ってからもチャットをするなんて、おれはコイツとめちゃくちゃ仲が良いな』といった風に。どうなんだい、あのころの自分よ。今となっては確かめようもないけれど、とりあえず楽しかったという感情だけは今でもしっかりと残っている。悲しいことにYahoo!メッセンジャーのサービスはもう終わってしまったけれど、わたしの胸の中ではいつまでも生き続けている。フォーエバー、Yahoo!メッセンジャー。



ここから下は「スマホ」のほうが「スマフォ」よりもなぜ言いやすいのかといった、ハ行の発音に関して調べたことをつらつらと書いているだけなので、興味の無い方は飛ばしてください。

ちゃんと調べてみると、昔の日本語のハ行は無声両唇摩擦音[Φ]という音(今でいうファ、フィ、フ、フェ、フォのような感じ)であったようです。Wikipediaには無声両唇摩擦音とは

ロウソクの火を吹いて消したり、粥を吹いて冷ます時に発生する音。

と書かれています。
その後ハ行の音は紆余曲折あって、より唇を使わずに発音できる現在の有声声門摩擦音[h]へと次第に変化していった歴史があり、これを唇音退化といいます。Wikipediaには有声声門摩擦音とは

息漏れ声またはささやき声の短いもの

と書かれています。

ただ、いまでもハ行のうちの「フ」だけは無声両唇摩擦音[Φ]のままであるため、「フ」の音を含むスマフォよりも、唇を使わずに発音できる「ホ」の音を含むスマホのほうが言いやすいのだと考えられます(厳密にはハ行の中の「ヒ」も有声声門摩擦音[h]ではなく、無声硬口蓋摩擦音[ç]です)。確かに口の前に手を当てて、ささやき声で「ハ~ヒ~フ~ヘ~ホ~」と伸ばしながら発音すると、「フ~」のときだけ比較的強く息が手に当たります(なんかバイキンマンみたいになったな)。そして、そもそもファ行はいまでもファ、フィ、フ、フェ、フォの全てが無声両唇摩擦音[Φ]です。スマフォの「フォ」がスマホの「ホ」よりも発音しにくいのはそういうことでしょう。

センキューWikipedia。またひとつ賢くなれたぜ。大学のレポートやったら、引用元をWikipediaにしたら怒られるけど。


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