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『こどもの日に何もしてもらってないから母の日も何もしない』の回

母の日、それは母に感謝の意を表明する日。偉大なる母、グランドマザーに。いやそれおばあちゃん。

母の日って何をプレゼントすればいいのか分からない。自分の母は何をプレゼントすれば喜ぶのだろう。まず花はない。確実に喜ばない。何かしらの集まりのビンゴ大会でも、景品は家電とかよりも金券や商品券のほうがいいと、母はよく言う。多分、本人は普通にお金が欲しいんだと思う。そして、その血を引く正当後継者である息子のわたしにもその気持ちがよく分かる。普通にお金が欲しい。お金さえくれたら、くれた範囲内で自分の嬉しいことを自分でするから。でも・・・ねえ? お金あげるってのは違いますよねえ? 仮に自分が親だとして、息子に「いつもありがとうな」と言われて現金を渡されたら、『おれパシリかなんかで小遣いもらってんの?』って思っちゃう。『へへっ、すんません。毎度』って言っちゃいそう。細目の出っ歯な顔になって言っちゃいそう。

でもこういうプレゼントは気持ちが大事だから。愛する息子に母の日を祝ってもらう、それ自体が嬉しいはずだから。母よ、そうであろう? 息子としての自覚、ビシバシ備えておりまするが故、母がわたしを愛していることなど明明白白たる事実、訊ねずとも分かる。そして正直なところ、母の日は母のためであるのと同時に、自分のためでもある。母の日にお祝いをするような人間、そういう者にわたしはなりたい。そういった感情を満足させるために、母の日を祝っているところが自分にはある。人間って結局は自分本位だと思うんだわ。でも、それで自分も母親も幸せになれるんならいいと思うんだわ。

でもちょっと待ってくれ。母の日よりも早く訪れるこどもの日に何も祝ってもらってないぞ。母にとってわたしは永遠に可愛いこどもであるはず。それなのに何もないとはおかしい・・・。母の日に祝ってほしかったら、まずはこどもの日を祝わんかいっ。話はそれからだ。それとも、母の身に何かあったのだろうか? こどもの日に、あんなにも愛していたはずの息子に何もしないなんて。何か元気でもなかったんだろうか? 母上様、お元気ですか?

と、ここでこどもの日について調べてみたところ、衝撃の事実が判明した。国民の祝日に関する法律、通称、祝日法の第2条では、こどもの日は次のように定義されている。

こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する

おおいっ。こどもの日は、こどものための日と見せかけて、実は母の日ではないか。巧妙にカモフラージュされているけれど、よくよく調べてみると、もはやもう一つの母の日ではないか。まさか母の日が2daysで開催されていたなんて。本当は母に感謝しなければならないのに、こどもの日に何もしてもらってないと騒ぐ自分は、とんだドラ息子ではないか。しかも、母は別に母の日に何か祝ってほしいなんてわざわざ言っていないにもかかわらず、母の日に祝われたかったら、まずこどもの日に息子を祝わんかいとこちらは勝手に息巻いていた。ああ、なんて愚かな息子なんだろう。それでも、こんな息子を見捨てずに育ててくれたなんて、母はなんて偉大な存在なのだろう。ありがとう、母上・・・。自然と母への感謝の気持ちが溢れてきた。

それにしても、こどもの日にもコッソリ母への感謝を伝えるべしという趣旨を込めているなんて、この法律を制定した人はマザコンであるな。でも実際、この世はマザコンだらけだと思う。父の日はそんなに何かしようとは思わないのに、母の日は何かしようと思うもん。それくらい母は偉大。ごめんなさい、お父様。こどもの日は両親への感謝でも良かったのに、父親は除かれているし、やっぱりお父さんはちょっとないがしろにされがちなのかもしれない。いやいや、お父さんのことも好きやで。ホンマにホンマに。


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