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【短編小説】どすこい!

「どすこい!」と僕は大きな声で叫んだ。
しかし、僕がそのように大声を張り上げたのは、相撲の稽古に参加するためではなかった。そうではなくて、もっと重要な使命を帯びていたのだ。
それは――。
僕は、ある人物に声をかけようとしていた。
その人物は、僕が今いる場所から少し離れたところに立っていた。彼女はこちらには背を向けたままで、じっと何かを見つめていた。
彼女の視線の先にあるものが何なのか……それを僕は知っていた。そして、彼女がなぜそんなものに興味を抱いているのかも理解していた。
だから、彼女に声をかける前に、まずそちらへと足を進めた。一歩ずつ、ゆっくりと。
僕の気配に気づいているはずなのに、彼女は振り返らなかった。ただひたすらに前だけを向いていた。まるでそこにしか目に入らないかのように。
やがて、僕は彼女のすぐ後ろにまで近づいていった。
そして、もう一度「どすこい!」と叫んだ。
するとようやく、彼女がゆっくりと後ろを振り向いた。
それから僕の顔を見て、小さくつぶやいた。
「どすこい……」
僕はうなずいてみせた。
それから彼女に言った。
――君は、本当にそれになりたいと思っているのかい? すると彼女はまた、首を横に振った。
僕はほっとした。
そうか……やっぱり、そうだよね。
君は、本当はそういうことが苦手だもんね。でも――。
――それでも君は、いつかきっとそうなれるよ。
君なら絶対にできる。
すると彼女は微笑んだ。
そして、また前を向きなおした。
彼女はそのままの姿勢で、しばらくそこに佇んでいた。僕はその隣に立ったまま、同じ方向を見続けた。
空はどこまでも青く澄み渡っていた。遠くのほうに入道雲が見えたが、それ以外のものは何ひとつなかった。
蝉の声だけがうるさく鳴り響いていた。

あとがき

本文は「AIのべりすと」で作成、挿絵はLINEの「お絵描きばりぐっどくん」で作成しています。
挿絵は相撲取りのような入道雲を生成したくて、いろいろやってみましたがうまくいきませんでした。

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