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Reverb #65 水産未来サミットに行ってわかったこと


現状を知ることも、話し合うことも大事だけど、話し合って行動を始めることこそ、大事。

3月、日本に出張に行きました。その出張の際の大きな目的は1つ。それは「水産未来サミットに参加する」ことです。
水産未来サミットとは何か。それはフィッシャーマン・ジャパンの津田さんが中心となり「水産未来サミット実行委員会」主催した「日本の水産業の未来について考えよう!」というイベントです。

ちなみに「水産未来サミット」で検索すると「三陸水産イノベーションサミット」というのが検索結果に出てきますがそれとは違うイベントになり、こちらは「水産未来サミット実行委員会」の主催になります。

1:水産未来サミットになぜ参加しようと思ったのか

ではなぜ参加しようと思ったか。それは10年来の友達の津田さんのFacebook投稿を拝見したからです。
水産業の現状、未来に関して、このままではいかん、なんとかしようという呼びかけ。この呼びかけに対して行かねば!と感じました。
同時に私は寿司職人です。魚がなかったら何もできません。でも、多くの料理人は「魚がどういう経緯でどこから来たのか、なぜこの値段なのか」を意識していない(つまり現場を気にしない)人も少なくありません。私はこれではいけないのでは?と思ったのです。では何ができるのか、そのために現状を知らなくてはいけないのでは?と感じたのです。
つまり未来の水産業について自分も何か行動をしなくては!と思ったのです。
行動の必要性を感じたのです。

というわけで訪れた気仙沼。東京から3時間半かけて辿り着いた
気仙沼中央公民館は予想以上の参加者に溢れかえってました。


2:水産未来サミットの日程とカリキュラム

水産未来サミットは2日間の日程で行われました。
流れはこんな感じでした。

2−1:1日目は情報のシェア

水産未来サミットさんから事前にアンケートが行われ、いわゆる「話し合いたい議題」についての情報を参加者でシェアしました。

この情報のシェアの際に私がとても印象的だったのは「(我々の危機感は)海だから難しい」。なぜか、それは海は見えないから。たとえば山だと枯れたり動物がいなくなったりなど。危機の状況は簡単に見えます。でも海は深いから一般の方から見えない。だから危機感が伝わりにくいのでは?というお話がとても印象的でした。

この時、どのようなテーマがあったのか、書き出そうとしたのですが思い出せば思い出すほどどのテーマも重要で、そして全身で引き受けなければ!と思わせる強いメッセージを感じました。

まず1つ目のテーマ。それは「ルールが守られていない」。
魚の値段というのは実は釣った(取った)人が値段がつけられない、というのはご存知でしょうか。どのように値段を決めるのか。それが「せり」で決定します。どんなに苦労しても「せり」で安値がついてしまえばその分赤字になります。赤字を防ぐにはどうするか、そのためには母数を増やす、つまり乱獲しかありません。量が増えると値段もまた下がる。これでは悪循環です。でも魚と取るにはお金はかかるので人件費を削るなどしてどこかに負担を強いる方法しかありません。この犠牲を強いることは魚だけでなく魚を獲る人も未来がなくなります。

2つ目は「教育ができていない」。世代ごとのギャップ、意識の共有ができていない。この教育による各世代、各立場が分かり合えていない、というのは寿司屋も一緒だなと思いました。

2−2:2日目、実際の話し合いと解決策のデザイン

事前アンケートで出た問題点についてそれぞれ話し合いたい人が集まり、意見を出して「解決策案まで出す」というワークを行いました。ここも多くの議題があったのですが自分が参加した議題についての流れを自分の言葉でシェアしたいと思います。

まず私が加わったテーブルは「資源保全をどうするか」です
テーブルには7人程のメンバー。男性だけじゃなく女性、学生さんなど様々な層がいらっしゃいましたが年齢層高めの方は少なかったです。資源保全の解決策案はこのようなものが上がりました。

1:コミュニティを作りその土地の魚の取りすぎ、取らなさすぎ(こちらの視点は私にはなかった)の情報を共有する
2:獲る側だけでなく消費者の意識を変える教育をしよう
3:世代交代が進むまで耐えよう
4:ただ獲って出荷するだけでなく付加価値をつけて利益をとれるようにビジネスマインドを持とう

2つ目のテーブルは「不正売買を無くすにはどうしたらいいか」
ここの解決策はこのようなものが上がりました。

1:外圧を利用しながら、政府を動かそう
2:政府の作るルールでは不正売買が無くならないのなら自分たちで資源や漁師を守る新たなルールを作ろう


3:今度は自分が投げかけてみた



他にも食育、環境保護など多くのテーマがありました。
そして最後に「話したいテーマがある人」という募集があったので、思わず手をあげて「海外からの視点で流通の問題、どうしたら水産物の価値を高められる話したい」という議題を投げかけてみました。そして実際のワークになったらなんと私の元には多くの方が集まりました。質問は主にこんな感じでした。

「サプライヤーの選出方法」
「海外の人は何を求めるのか」
「販売促進のためのアプローチの方法がわからない」
「海外進出してみたいけどやり方がわからない」

私は質問に答えながら多くの可能性を感じていました。例えば「海外の人は何を求めるのか」。海外といっても国も地域も背景を違えば求めるものは変わります。「海外」は一つではない、という返答を聞いたことで意識が変わるという劇的な変化を起こすことができた気がします。
そして「販売促進のためのアプローチの方法がわからない」ですがに私が店を営むマレーシアでは一般市民からの普及ではなく富裕層へのアプローチを積極的に行います。そこからトップダウンでマーケットに影響を与える、このようなアプローチもあるんだ!という気づきを提供できたことに喜びを感じます。
そして「サプライヤーの選出方法」。政府機関から聞くだけでなく、自分で気に入ったレストランに行ってそこで味を確かめて自分の魚を売り込む方がよりストレートに魅力を伝えることができます。
「海外進出してみたいけどやり方がわからない」という際はまずひびきのような海外で営業しているお店でのポップアップでの提供というのが仲介役もないのでオススメです、と話しました。飛行機の購入方法などはこちらをぜい参照して頂けたら嬉しいです。


最後に皆で記念撮影

その後もっとたくさんの人と話したかったのですが時間切れ。アクセスが良くない場所なので皆急いでそれぞれの場所に帰りました。帰り道、Facebookの友達申請やインスタのフォロー申請が止まらなかったので充電がなくなりそうでした。

4:自分はまず何が出来るかを考えてみた

本当に素晴らしい出会いを多く頂きました。そして自分が何ができるかを改めて考えるとこんな感じかなと。

1:英語での水産業の現状をSNS発信
2:お客様に日本の漁業、水産の現状をもっと話し、価値をより理解してもらう
3:同業者に水産資源について関心を持ってもらう
4:水産業の未来を考えて生産してる方々の水産物を積極的に取り扱わせていただく。

1つ1つ掘り下げてみます。

4ー1:英語での水産業の現状をSNS発信


現在はInstagramとmediumという英語圏のプラットフォームでも発信しています。小さな発信ではありますがでも当事者が英語で発信することで見つけてもらえるのではないか、と思い頑張って発信したいと思います。


4ー2:お客様に日本の漁業、水産の現状をもっと話し、価値をより理解してもらう


私が普段接することができるひびきのお客様に今日見てきたこと、感じたことを話したいと思います。
そこでの行動からどこにつながるのかわからないのが現在のネットの世界です。丁寧に発信していきたいです。

4ー3:同業者に資源について関心を持ってもらう


今回、出入りはありましたが全体で130人程度のメンバーが集合しました。しかしその中に海外勢、そして料理人は一名だけでした。私はこの状況を変えていきたい。私たち料理人は魚がなくては生きていけません。そのために魚という資源、そして魚を獲る漁業を営んで下さってる皆々様の現状を知り、そして助け合わなくてはいけません。
次回はぜひ料理人にも参加してもらえるように自分も伝えていこう!と思いました。

4:水産業の未来を考えて生産してる方々の水産物を積極的に取り扱わせていただく


長く寿司職人をしてる身として日本の水産業の現状を理解してるつもりでしたがが理解していないことが多かったことを今回の参加で痛感しました。私が出来ることは日本の漁業においてルールを遵守して働き、日本の漁業の現在と未来を真剣に考えている漁業関係会社の皆様と共に歩むことです。具体的にはそのような会社さんと積極的に取引させて頂きたいと思います。


私たち、そして私もやらなくてはいけないこと、そしてやりたいことが沢山あります。これから益々忙しくなりそうです。

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