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新しい家族

彼女は猫のノビちゃん。我が家に来てもうすぐ半年になる。元々は野良猫の母親が他の2匹の兄弟と一緒に連れてきたのが最初の出会いだった。
その3匹のうち2匹は、すぐに親元を離れ巣立っていった。しかし、ノビちゃんだけがずっと母親のそばを離れることは出来なかった。それから数日後、母親はついに、ノビちゃんを我が家に置いたまま、どこかに行ってしまった。おそらく、自立させるためにあえて、我が子の元を去ったのだろう。
[このままでは、可哀想だ]と言ったうちの母親の一言で、我が家で飼うことになった。
母親にはすぐになついたノビちゃん。けれど、私には面白いくらいなつかなかった。それどころか、少しでも触ろうとしたり、抱っこしようとすると、100%威嚇された。原因は全くわからない。他にも、駄目だと言っても私の車いすにじゃれてみたりと、なかなかのものだった。

自分でこんなことを言うのもなんだが、どうやったら彼女に認めてもらえるのだろう。そんな気持ちが私の中で芽生え始めたある日のこと、ノビちゃんが急に何度も鳴き始めたのである。この日は母も出かけており、家には私以外誰もいなかった。餌と水は母が出かける前に用意して置いていったものが十分に残っていた。
一体何を求められているのか、どうしたら、落ち着いてくれるのか検討がつかなかった。そこで、とりあえず、お気に入りのネズミのおもちゃを手に取り、ノビちゃんのいる方へ向けてみた。すると、彼女は一目散にこちらへやってきて、おもちゃにじゃれ始めた。私がノビちゃんに認められた瞬間だった。それ以来、鳴き方や声のトーンで、何を求められているのかだいたい分かるようになった。その結果、母が自分の近くにいない時は、私のところへ寄ってくるようになった。その後も私は、彼女のオーダーに可能な限り応えた。今まで、家族も含めて人の世話になってばかりだった私にとって、たとえ猫でも他者に頼られることは新鮮であり、とても嬉しかった。今では部屋のドアを開けると、部屋に入ってきて、布団にくつろぐようになった。どうやら完全に心を開いてくれたようである。 ノビちゃんを見ていると癒やされる。悩んでいる時でも、そばに来て一緒に遊んでいると、悩んでいたことが、どうでもよくなる。今までは半信半疑だったが、どうやらアニマルセラピーというのもだてではないようだ。
ノビちゃん、我が家に来てくれてありがとう。これからもよろしくね。




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