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クリスマスアドベント2022年12月11日 p.3

※Salvador Coffee クリスマスアドベント2022 の特典ストーリーです。

タイトルの日付になると無料公開されます。


【コーヒーの種類】

ブラジル ジャグアラ農園 ガエル
アナエロビックナチュラルプロセス

https://salvador.supersale.jp/items/64869346


「アナエロビックファーメンテーション???」

「え?必殺技か何か?」

そんな2018年ごろにした会話も遠い昔だったかのように懐かしく感じるほどに、とにかくコーヒーの精製技術の進歩が著しい。

アナエロビックファーメンテーションというのは別名「嫌気性発酵」というプロセスで、酸素に触れない環境下を作ることで微生物の働きを活性化して発酵を行うというもの。

こうして精製したコーヒーは、われわれの予想の斜め上をいくフレーバーや、発酵による乳酸を伴う滑らかな質感があったりして、今までになかった斬新な風味特性になっている。

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ジャグアラ農園のアナエロビックナチュラルは、個性が光りつつもバランスの取れたコーヒーです。高めの温度帯ではスイートスパイスの香りがあり、そこからだんだんチョコレートクリームのような甘みに変化していきます。

お湯の温度が高すぎると尖った味が出てきます。
逆に低すぎるとナッツのようになるかもしれません。

そういう時は無難に88℃〜92℃。攻守最強です。

詳しいドリップの仕方はこちらの動画をぜひご覧ください◎

※2年前に撮影したハンドドリップの動画です。温度や挽き目や道具などは都度変えますが、現在もほぼ一緒のレシピを使っています。


【ストーリー p3】 良いところも悪いところも明らかになったアナエロビックファーメンテーションという精製方法


私が初めてアナエロビックファーメンテーションのコーヒーに出会ったのは、2018年の珈琲マルシェか何かだったと思います。

他店のバリスタから、そういう精製があるという話は以前から聞いていたのだけど、実際に体験したのは約半年後。

JBCという日本一のバリスタを決める大会で優勝したUnirの山本知子バリスタが、マルシェのために札幌へ持ってきた「コスタリカ ラ・パストラ ゲイシャ」(記憶が定かではない)

文字通り、シナモンと焼き林檎のペストリーの味。

「わーーー、すごい。これがアナエロビックか。衝撃だ。」
「これは絶対に流行るし、先駆けて取り組まなくてはならない。」

強くそう思いました。

その約1年後にSalvador Coffeeが取り扱い始めたのが、

『中国 雲南省 飛鶏(フェイジー) ダブルファーメンテーション』
『グアテマラ カラウテ農園 アナエロビックハニープロセス』

などの、お店を代表するような看板コーヒーたちでした。
もはや昔のことのように懐かしい。(2回目)

これらの時代の最先端をいく精製や品種のコーヒーは、我々のような個人のコーヒーショップが手を出せるレベルのサプライチェーンに乗るまで、最低でも1〜2年掛かります。

そして約3〜5年かけて一般に浸透していき、時代を作ります。

2022年の今は、ちょうどその時。
アナエロビックのコーヒーが普通になった今、ついにコーヒー業界においてはビッグトレンドになりました。

今回お届けしたブラジルのジャグアラ農園アナエロビックナチュラルは、嫌気性発酵をうまーくコントロールしているため発酵感を出しすぎず、ブラジルのナチュラルに求められる甘みをとても立体的に表現できています。さらに長時間発酵で生まれる乳酸がクリーミーな質感を与えてくれているため、チョコレート感がもっと柔くて甘く感じるのです。

アナエロビックの在るべき今、という感じの味わいです。

しかしながら、悲しいかな、嫌気性発酵の強いフレーバーに皆そろそろ飽き始める頃合いかと思います。笑

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そもそもこの精製って何のためにやっているかというと、シナモンアップルのように「個性的な発酵臭や奇を衒ったような味に仕立てるため」ではなく、「コーヒーチェリーが蓄えた糖分を最大限活かすため」なのです。あまり知られてない気がするけど。


特にコーヒーが作られる赤道直下の熱帯地域では気候変動が著しく、生産国では雨季と乾季の境目が曖昧になって発酵や乾燥の工程がスケジュール通りできなかったり、日中の気温が上がりすぎて計画よりも発酵しすぎたり、乾燥しすぎたり。

そのような環境下では発酵工程をコントロールしやすく、コーヒーのフレーバーを安定的に表現しやすいアナエロビックファーメンテーションは、農家さんにとても重宝されます。(諸説)


一方で発酵をコントロールしたり味わいを作れるということもあり、我々バリスタやコーヒーの買い付けを行うバイヤー側から無茶な要望をされる原因にもなってきました。

「こんなプロセスをオーダーメイドでやってほしい。」
「もっとこうしたら面白いんじゃないか。」

好奇心は尽きません。

例えばパナマのNinety Plusのように二人三脚でバイヤーと農家さんが一つのロットをブランディングして作り上げていくなら問題ないかもしれないんですが、現実にはデマンドサイドの一方的な思いつきや要求で農家さんを振り回してしまう結果も招いています。

挙句の果てには出来が悪いから買わない。
不良在庫化してしまう。
設備投資で農家さんが困窮してしまう。

など問題は山積みです。

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アナエロビックファーメンテーションは、コーヒーの生産や精製をやりやすくするための技術のはず。

だからこそアナエロビック初期の頃のような派手な味わいではなく、このブラジルのような伝統的な味わいを守るための精製であってほしいと私は思います。

当たり前の美味しさの向こう側にあるものを想像しながら、コーヒーを楽しんでほしいと思います!


次回12月18日に続きがアップされます。
お楽しみに!

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