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カトリック学校の「宗教」について考える

小林委員の「カトリック学校における宗教的次元―評価と刷新のためのガイドライン」を受けて、今回は、カトリック学校における「宗教」について考える記事をご紹介します。
ご紹介するのは、森一弘「カトリック学校のアイデンティティの確認と連携の可能性を求めて」『カトリック教育研究』第27号、2010年、16-25頁です。

先生方は、教えていらっしゃる学校について、「カトリック学校での宗教教育とは何ですか?」と尋ねられたら、何と答えられるでしょうか。

記事の中で、1989年にカトリック中央協議会学校教育委員会が行なった「カトリック学校教育実態調査」が紹介されています。この調査では、カトリック学校が宗教教育をこれまでにどのように理解してきていたかを示す内容が含まれており、その結果を、次のようにまとめています。

ところが、寄せられた回答を分析していきますと、その中味は、どの学校も、判で押したように同じなのです。「聖書の学び」と「教会の教え」そして「祈りや黙想会」それに創立記念日などの年間行事として行われるミサやマリア祭などなどなのです。また教育方針に関しても、キリストの愛の提を土台とした「人を大切にする人間の育成」というもので、どの学校も似たり寄ったりです。

森一弘「カトリック学校のアイデンティティの確認と連携の可能性を求めて」
『カトリック教育研究』第27号、2010年、p. 23. 

 このような意識だけにとどまってしまうならば、「確信をもって宗教教育を行えるものは、信徒の教職員や修道者たちに限られてしまう」ことになってしまい、「信仰の有無を超えて教職員全員が、対等に向かい合って協力しあっていくための道は開かれてきません」。
 このような問題に対して、カトリック教会の次の姿勢に注目しています。

教会もまた、自ら多くのものを人類の歴史と発展から受けたことを知らないわけではない。(中略)教会は、(中略)とくに物事が急激に変動し、考え方がきわめて多様化していく現代においては、信じる者、信じない者を問わず、世に生活し、種々の制度や学問に精通しそれらに潜む精神を理解している人々の助けをとくに必要とする。

『第2バチカン公会議 現代世界憲章』44

 この教会の姿勢を、「カトリック学校も、心して受け止めなければならない」としています。

子供たちを幸せにしてあげたい、秘められた可能性を育ててあげたい、正義と真理に満ちあふれた世界を創り上げていくために積極的に加わっていく人間になってもらいたい、などという願いは、信仰の有無を超えて、すべての教職員が共有するものです。これからのカトリック学校の発展のためには、すべての教職員の心の奥にある教師としての情熱と教師としての良心との対話、コム二ケーションが、必要になってきます。
(中略)
キリストの光に照らされた教職員と子どもたちへの教育に情熱を燃やす教職員の協同作業がうまく進めば、カトリック学校教育は、日本の教育界においてユニークな存在感を示すことが出来るようになっていくのでは・・・と私は、カトリック学校の将来に期待を寄せる者です。

森一弘「カトリック学校のアイデンティティの確認と連携の可能性を求めて」
『カトリック教育研究』第27号、2010年、p. 25.

 カトリック学校における「宗教教育」について再度、考えながら、日本の教育界においてユニークな存在感を示すことができるカトリック学校教育のあり方について、一緒に考えてまいりましょう。



〇参考文献
森一弘「カトリック学校のアイデンティティの確認と連携の可能性を求めて」『カトリック教育研究』第27号、2010年、16-25頁。
第2バチカン公会議文書公式訳改訂特別委員会監訳『第二バチカン公会議 現代世界憲章』2014年、カトリック中央協議会。


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