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エリアをつくるホテル〜自遊人hotel編〜

今月も500キロ以上移動しながら場のデザインのリサーチをしてきた。今月もテーマは、"エリアを変える、つくる宿"

今回も様々な場所を訪れて来たが、半年に及ぶ毎月インプットの一旦の終点は、自遊人の里山十帖。

東京からオフィスを丸ごと魚沼に移し、雑誌を発行しながら米作りを始めた会社を訪ねて 、14年前、30代前半の時に初めて取材で、自遊人の魚沼オフィスを訪れた時の衝撃。こんな経営のやり方があるんだ。なんて本質的なんだ。この人は数字目的じゃなくて自分と社員のライフスタイル、人生をつくってるんだ。

緊張してる僕に、帰りに風呂でもどうですかとお気に入りの掛け流しの露天風呂で当時の経営の話しや悩みを聞いて頂いた岩佐さん。

あれからずっと、勝手に岩佐さんの背中を見て。そうやって計らずも、自分も下北沢から福岡にオフィスを移し、この10年で仕事は制作会社メインから遊休不動産の企画とオペレーションに変化していた。

そんな岩佐さんが、温泉旅館を引き継ぐことになったから見に来てよと10年前に訪れたオープン前の里山十帖へ。この時、改めて会社をトランスフォームする経営者の覚悟の背中を見せて貰ったと記憶している。

その後、一気に稼働率を上げ、予約の取れない宿に。そして各地に次々とホテル開発を展開していく爆進の間に、自分は全く初めての福岡の土地で、地方創生やまちづくりという更に未経験の領域で試行錯誤が続いていた。

あれから10年経ってようやく、岩佐さんのホテルを見に行き、改めて勉強しにいける。そんな気がして、先月から箱根本箱→松本十帖→里山十帖へ。

観光資源を、吸い上げながら、大型バスをいかに合理的に取り込むかという前時代のホテル経営とは真逆の在り方。

食や自然を含む、地域全体をいかにプレゼンテーションしながら、滞在者自身がそのエリアのファンになっていくかを追求した自遊人のホテルは、あえて口にせずとも、地域への還元や循環を自然に感じとることが出来る。吸い上げるのではなく、地域の中で呼吸している感じ。

そして、居心地。空間には、滞在者目線で、徹底した、居心地の良いマイスペースが散りばめられていた。ホテル内にある、でっこみ引っ込みの中で本を読み、ワインを楽しみ、サウナを楽しみ、景色をみながら、思いに耽る、そんな場のデザインによって私たちゲストは飽きる暇がない。

さらに、働く料理チームの気迫と高い情熱、チームワーク。会社組織の中にあっても、料理チームは独立した生き物のように理念を持ち、地の食材のストーリーを丁寧にわかりやすい説明と共に提供してくれ、地域食材と身体が一体化していくのを感じる。

たった10年、編集社から日本を代表するホテル会社になれるものなのか。

されど10年の日々の積み重ねの血の滲むような途方もない努力の時間を感じた。

最後に訪れた、里山十帖の一棟貸しのTHE HOUSE IZUMIは、本当に息を飲む絶景のロケーションに在る。目の前では美しい水田があり農家さんが田植えをしている、庭の草木が美しく懐かしい里山の風景をつくりだし、遠景には雪山と、新緑の山のコントラスト。

これだ。これだったんだよ。

これが世界に誇れる里山のホテルなんだよ。そうやって腑に落ちた。

この日は偶然にも、里山十帖9周年。
岩佐さん、チームの皆さま本当におめでとうございます。

その他、SANU、リビセン、not a hotel、尾道hotel、などコロナ期に産まれた新しいスキームや考え方のエリアと街を創るホテルや場づくりのインプットについてはまた改めて言語化し、熟成してから報告する。改めて、私も挑戦を続けることを決意して福岡に帰ってきた。

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