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「男性への性教育事業」:第六回ワークショップを実施

みなさんこんにちは!ソルト・パヤタス ボランティアの川﨑です。

今回は最終回の第六回ワークショップで、「男らしさ」ついて話し合いました。従来の身体的に強い「男性らしさ」ではなく、家庭的な「男性らしさ」について学び、参加者の男性たちの新たな価値観として取り入れることができるようワークショップを実施しました。


第六回ワークショップの目的

「男性の役割」や家庭的な「男性らしさ」に焦点を当て、家族計画と意思決定について話し合いました。まずは参加者同士でのオープンなディスカッションを促すためにケーススタディーの共有からスタートしました。

ミゲルのケーススタディーから学ぶポイント

ミゲルは妻と2人の子供(息子と娘)と4人で生活していたが、ある日妻が突然家を出てしまった。その後子どもたちは父親を無視するようになってしまったため、ミゲルは母親に助けを求めた。

妻の出て行った原因はミゲルにある。彼は貧困と社会的なプレッシャーの中で育ちました。そのような環境で育ったため、彼は攻撃性と支配力が人の価値を決めるという考えに囚われるようになりました。ミゲルの妻への嫉妬と独占欲が度々夫婦間での口論を引き起こし、それが家族との感情的な距離を広げていった。ミゲルは高圧的な態度で「この家族にとっての最善は何かが私が一番よく分かっている。君は私の言うことを聞くべきだし他の男と話すべきではない」と妻に言うことがよくあった。

ミゲルは子どもたちへ寄り添うこともしなかった。息子がミゲルに「勉強を教えてほしい」と助けを求めると、ミゲルは「男の子が人に助けを求めてはいけない。自分で解決しろ。男は弱音を吐くべきではない。強くなれ!」と突き返した。娘がミゲルに褒めて欲しくて学校の成績を持って近づくと、ミゲルは単に頷き「忙しいんだ。勉強に集中してくれ」と答えるだけであった。娘の失望した表情は父親との感情の距離を表していた。

ファシリテーターは参加者にミゲルの状況について意見を求めました。

・ミゲルはお酒をやめるべきだ。それが彼の暴力的な行動の原因だ。
・妻と子どもにもっと敬意を払えるように、ミゲルは自分を変えなければならない。
・ミゲルは態度を変え、子供に誇りを持つべきだ。

その後参加者は地域の男性が抱える苦悩や悩みについても様々な意見交換を行いました。ファシリテーターは参加者の意見に耳を傾けながら、このケーススタディーについての学べることを改めて参加者に伝えました。

健全な「男らしさ」とは

ディスカッションと意見交換のあとはインプットのセッションとして「健全な男らしさ」についてのレクチャーを実施しました。
従来の身体的に強い「男性らしさ」は、社会全体に害を与える可能性があります。この堅苦しい男らしさは、家族や社会へ支配的で攻撃性になり、妻や子どもの感情の抑制することがあります。

身体的に強い「男性らしさ」

  1. 感情の抑圧: 男性は時折、脆弱さ、悲しみ、または恐怖などの感情を隠さなければならないと感じることがあります。これらの「女性的」な感情を表現することが社会的に非難され、精神的な健康や人間関係の問題を引き起こす可能性があります。

  2. 攻撃と暴力: 攻撃、支配、コントロールの行動を強調しています。これらの傾向は暴力や脅迫の文化を促進する可能性があります。

家庭的な「男らしさ」

  1. 感情の知性: 幅広い感情、例えば脆弱性、思いやり、共感などを受け入れ、自在に表現することです。

  2. 健全な男女関係: 相互の尊重、コミュニケーション、協力に基づいた関係の築き方を育成します。また、女性を公平に認識し、公正に扱います。

  3. ポジティブなロールモデル: 社会での男性としての行動において、親切さ、公平さ、誠実さを促進し、有害なステレオタイプや行動に対抗します。

ボボ・ドール実験から学ぶポイント

バンデューラ(1961年)が行ったボボ・ドール実験は、「攻撃」が観察によってどれだけ模倣されるかを調査しました。

攻撃的な事象を観察した子供たちは、観察しなかったコントロールグループの子供たちよりもはるかに、攻撃的な反応を示しました。身体的な攻撃は、女の子よりも男の子の方がより多く模倣しました。言葉の攻撃においては男の子と女の子の間にはほとんど差がありませんでした。

ファシリテーターはその実験が子供たちに与えた影響について、参加者へ意見を求めました。

・子どもたちが暴力的になるのは、子どもたちが普段何を目にしているかが影響している
・攻撃的な事象を観察した子どもたちはイライラしてしまった。

最後にまとめとして、ミゲルのケーススタディーや、この実験から分かるように、男性が「男らしさ」を感情の抑制や攻撃や暴力として捉えると、それが家族に及ぼす影響がどれだけ大きいかということを伝えました。


第六回ワークショップを終えて

今回のワークショップでは参加者同士が議論することに重点を置いたことで、「夫婦間のコミュニケーション」や「LGBTメンバーに対する差別のない態度」について自由に意見や考えを共有する機会となりました。ワークショップの目的である「ジェンダー、性、および生殖に関する健康」を認識することができ、参加者は自由に意見を共有し、対立する立場を解決する能力を持っていることを感じました。

また、最後に参加者へ表彰を行いました。「皆勤賞」「親切賞」「感受性賞」「クリエイティブ賞」など様々な賞が参加者へ送られ、笑顔でワークショップが締めくくりました。

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