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心で感じるな、耳で感じろ。~8.3 RADWIMPS ANTI ANTI GENERATIONにそえて~(後編)

こちらは後編です。前編は↓から



そして当日。8月3日。同行者である友達Tくんとは岡山駅で合流した。駅地下で昼飯を食べ、駅周辺をふらっと散策したあと電車に乗り最寄り駅へ。そこからシャトルバスを乗り継いで会場のコンベックス岡山へ。

とにかく、とにかく暑かった。僕とTくんと2人とも鳥取県出身なのだが、鳥取県は全国的に見ても暑い。蒸し暑い。まるでサウナだ。サウナの中で育ってきたも同然だ。そんな鳥取より暑かった。

会場につくやいなや、その暑さもさることながら、いきなりBUMP OF CHICKENの帽子を被っている人を見かけてびっくりした。ああ、やっぱりBUMPとRADって似てるんだな。大昔の自分なら「BUMPとRADを一緒にするな!!」とか言っちゃうんだろうけど。
ツアートラックの前で写真を撮り、グッズ会場へ向かった。ギンギンにクーラーが効いている。僕はとりあえずタオルを買った。その他のグッズは予めTくんが代行してくれていた。そこから開場まで、ずっと屋内にいた。


いよいよ入場が始まった。会場に入った。この瞬間はやはりゾクゾクするものだ。僕自身、ライブは2回目。オールスタンディングは今回が初めてだった。ブロックは、E。最後列だ。微かにドラムセット2台が見えるくらいの距離だった。



いよいよ始まった。幻想的な光の演出とインスト曲を皮切りに、「tazuna」が始まった。どんどんと雰囲気に呑まれていった。続いては「NEVER EVER ENDER」。曲もよかったが、何より隣のTくんが目をギラつかせながら体を揺らしていたのが印象的だった。確かこの曲は、彼にとって、RADの中でベスト3に入るぐらいに好きな曲。そして彼にとって、人生初のライブだ。並々ならぬ気持ちで聴いていたんだろう。

そこからしばらく、僕の知らない曲が続いた。聴いたことはあるけど歌詞を全く知らないというような曲がいくつか並んだ。ただその間も、野田洋次郎さんの煽りやMC、楽器隊の超絶テクニックに翻弄された。

ライブ中盤、「そっけない」が演奏された。とてもしっとりとしたピアノバラードだ。ゴリゴリのパンクロックなんかを歌っている人とは思えないほど、雄々しく優雅に弾き語っていた。僕はただただピアノの響きに酔いしれていた。

そして「おしゃかしゃま」のイントロが流れ出した。流石にこれは知っている。予習済みである。歌詞はうろ覚えだけど。さあ渾身のサビだ。手を突き上げ、ぴょんぴょん飛んでみる。後ろからものすごい圧力がかかってきて前に押し倒されそうになった。みんなが前に出て来ようとしていた。ボルテージは最高潮だ。ここで、周りのみんなが洋次郎さんと一緒に歌っていたのが気にかかった。
前回僕が行ったMr.Childrenのライブでは、周りの観客はボーカルの桜井和寿さんに促されない限り絶対に歌わなかった。みんな桜井さんの声が聴きたくてライブに来てるんだろう。Mr.Childrenの曲が聴きたくて来てるんだろう。そう思って僕も歌わなかった。みんな、右隣のおばさんや左隣のお兄ちゃんの声は聴きたくないんだろう。


RADはそんなことなかった。みんな歌う。Tくんも歌う。それにつられて僕も「あいがあっあって あいいあっあっえ だあああんあって言うんだ」と誤魔化して熱唱する。ステージの上に立っている5人。そして客席にいる数千人。コンベックス岡山にいる全ての人間で作るライブ。全ての人間で奏でるおしゃかしゃま。ライブといえば、好きなアーティストの好きな曲のメロディーと歌詞をじっくり味わいながら、琴線を震わせながら、たまに手を突き上げながら、楽しむものだと思っていた。心で感じるものだと思っていた。そんなことない。今僕がいるこの場は、ある程度考えることを放棄して、五感から伝わる情報だけを素直に受け入れるだけの場所。会場の雰囲気にその身を任せ、究極の非日常を嗜む場所。そんな気がした。だからこそ、歌詞がうろ覚えでも、Cメロを知らなくても、何のハンデもなく楽しめた。

さらに「IKIJIBIKI」「君と羊と青」といった激しい曲が続く。そろそろ終わりが見えてきた。「いいんですか?」ではこれまた観客の大合唱が始まった。僕は全く歌詞を知らなかったが、むしろ知らなくて得をしたとも思えた。もはや「観客」という一人の偉大なボーカリストが、僕にライブを届けてくれているようにさえ思えた。

本編ラストは「愛にできることはまだあるかい」。そういえば天気の子やってるな。3年前の君の名は。は結局見なかったけど、今回は観に行こうと強く誓った。


そしてアンコール。最新アルバムから「正解」の演奏。この曲は、NHKの「18祭」という番組内で、激動の時代を生きる18歳のために製作された曲。そしてまさに、僕らが18歳のときの曲。言うなれば、僕とTくんに向けて歌われた曲も同然だ。このライブ一番の感動が僕を襲った。

そしてなだれ込むように「DADA」。オマケにダブルアンコールで「会心の一撃」。最終盤にしてテンションはMAXだった。あまりこの2曲は思い出に残っていない。それほど熱狂していたのだろう。



ライブの感想だが。一言で言えば、楽しかった。何もかもが想像以上だった。ほとんどRADについて無知みたいな状況だったにも関わらず、めちゃくちゃ楽しかった。むしろ、無知だったからこそ楽しめた部分もあったと思う。BUMPと比べられていてBUMPより有名になってるからと忌み嫌っていた、BUMPの敵であり僕にとっての敵であるRADWIMPSの姿はそこにはなかった。ただ純粋に、すごいライブを見せてくれたすごいアーティスト・RADWIMPSだけが強く心に刻まれた。

このライブの3か月前にはMr.Childrenのライブに、1か月後には念願のBUMP OF CHICKENのライブにも行った。そんなBUMPのライブと、ミスチルのライブと、RADのライブは楽しみ方に決定的に違うところがあった。BUMPとミスチルのライブは、「この曲やるのは珍しいなぁ」「ここの歌詞やっぱりいいなぁ」「メロディーちょっと変わってるなぁ」と、さまざまに思いを巡らせながらゆっくり噛むように味わっていた。言うなれば「心」で楽しんでいた。ただRADは違った。入ってくる音、映像、光、桑ちゃんと武田さんとサポートドラマー2人と洋次郎さんが響かせるレベルの高い演奏、洋次郎さんの歌声、それぞれが直接体内に入り込み体内に響いてくる感覚があった。「心」というフィルターを通さず、「耳」という媒体のみで楽しんでいた。もちろん、RADWIMPSの曲はどれも歌詞が素晴らしい。NEVER EVER ENDERを聴いていたTくんのように、曲をじっくり堪能するのももちろんひとつの楽しみ方。ただ僕は、それができなかった。いや、それをしたくなかった。あの会場に突っ立って、Eブロックの真ん中辺でぼけーっと佇んでいるだけの状態が、一番RADWIMPSのライブを楽しめたんだろう。しかも僕は、RADWIMPSの曲の大半を知らないという状態で観た。耳に入ってくる全ての音が新鮮で真新しくて、どんどんとRADWIMPSの世界に引きずり込まれていった。
今後RADWIMPSのライブに行く機会が何度かあろうとも、8/3日のあのライブは、僕にとってもう二度と体験し得ないライブだった。



今やRADWIMPSは、僕にとってBUMP OF CHICKENに並ぶほどよく聴くアーティストだ。カラオケでも、BUMPよりRADを多く歌うことだってある。
8/3のライブを通して、RADWIMPSをより好きになったとはあまり思わない。もちろん魅力はすごく感じた。ただそれ以上に、「音楽」を今まで以上に好きになった。「ライブ」の楽しさをを知ることが出来た。
何となく「BUMP OF CHICKEN」という偶像をひたすら崇拝していた3年前の自分とは違う。音楽そのものを、耳から伝うただの音として感じ、それを楽しむことが出来るまでに成長した。

「RADWIMPS」という音。それだけを楽しむライブ。また機会があれば行ってみたい。RADWIMPSについて知識を深めた今、次はどんなライブを見せてくれるのか、どんな音楽を僕に届けてくれるのか、非常に楽しみだ。



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ありがトエルモの火
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