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Genesis6「これはノアの歴史である。ノアは正しい人で、彼の世代の中にあって全き人であった。ノアは神とともに歩んだ」


アダムが死に、その直系の子孫たちが死んでいく中で、地上には悪が増大していった。
悪とは何だろうか。それは、神を必要としない世界。

増えていった人々は、「それぞれ自分が選んだ者を妻とした」とある。
自分がすべてを決め、自分が選び、自分の好きなように生きるようになった。
「神の子ら」「人の娘」「ネフィリム」といったものが何を指すのかはわからない。
だが、人々はアダムがエバを神から与えられたのとは異なり、自分で妻を選ぶようになった。
その直後にこう書かれている。

「そこで、主は言われた。
『……人の齢は百二十年にしよう』」


まるで、長く生きれば生きるほど、神のごとく振る舞うようになる人の常を憂うかのようだ。
不思議なことに、現代に生きる私たちもこの定めを超えて長く生きることのほぼない世界に生きている。また、年を重ねるごとに人は老化していく。皮肉なことに、自分の好きに生きるどころか、自分が思うように生きられないことを悟って、死を迎えるのだ。
禁止されていた果実を食べていなければ、死を迎えることはない世界だったのに。

あの日から緩やかに朽ちていく世界で、「主は、地上に人の悪が増大し、その心に図ることがみな、いつも悪に傾くのをご覧になった」

神が世界をつくったのは、良いもので満たすためだったのに。
世界は悪で満ちていったのだ。
なんと悲しいことだろうか。

そして、ついに神はこの世界を終わらせることを決める。

「わたしが創造した人を地の面から消し去ろう。人をはじめ、家畜や這うもの、空の鳥に至るまで、わたしは、これらを造ったことを悔やむ」


創世記6章は、古い世界の終わりと新たな世界のはじまりを告げる章。
新しい歴史が始まろうとしているのである。

「これはノアの歴史である」

前回、「ポストアダム」という意見が出ていたが、ついにノアは、アダムを直接知らない最初の世代として、神からの語りかけを受ける。
なんとそれは、世界の終わりを告げるメッセージであり、またそこから逃れる唯一の道である「箱舟を造るように」ということであった。

アダムもエデンの園も知らないノアは、神に従わないこともできた。知らないからこそ。
我々はよく「神を知らない」ゆえに神を否定する。

さらに、その命令は細部に及んだ。
箱舟の大きさ、材質、造り方。さらに困難を覚えるのが、「すべての生き物、すべての肉なるものの中から、それぞれ二匹ずつを箱舟に連れて入り、あなたとともに生き残るようにしなさい」である。
一言でいうならば、“自分にそんなことできるだろうか…”と不安になるほどの命令であった。

簡単なことであれば、従いやすい。だが、歩みの中で神の命令は深まっていく。
時間がかかり、時に不安になり、時に自分の想像をはるかに超えるものへと。

しかも、その箱舟は大洪水で世界を終わらせるために必要だというのだ。
「わたしは、今、いのちの息あるすべての肉なるものを天の下から滅ぼし去るために、地上に大水を、大洪水をもたらそうとしている。地上のすべてのものは死に絶える
なんという衝撃。

ノアは神に不満を訴え、不安を訴え、いかに非道なことかを訴えることもできた。
だが、ノアはどうしたのか。それらの神の命令のあとにはたった一言こう記されている。

「ノアは、すべて神が命じられたとおりにし、そのように行った」


その命令がどれほど困難に見えようと、わからないことがあろうと、
すべて命じられたことに従い、それを行う。
それはまるで、大洪水の中での救命胴衣かのように、
私たちのいのちを守る唯一の道なのだ。



©新改訳聖書2017

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