【感想】空想兄弟@ウディコン#12
【1】空想兄弟 短編(2時間~)制作:すたーあいす* 様
に関する感想です。ネタバレあります。全エンディングを見ています。
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~お薦めポイント(ネタバレ抑え目)~
ほのぼの日常と、その陰に潜むホラーを一挙に楽しめるのが魅力的なADV+RPGです。
※少し人を選ぶ表現を含むので、注意書きは良く読みましょう。
光が当たると陰が強くなるといいますか、日常と非日常がお互いに引き立てあっています。
演出面にとても力が入っており、直接的な画像がないにも関わらず十分なホラー感を味わえます。
※私のようにホラーが苦手な人間にはちょうど良い塩梅でした。
クライマックスでは熱い王道展開をこれでもかと盛り上げてくれます。
また、イラストを見て可愛いと思った方には間違いなくお勧めです。
何度もリテイクなさったというスチルが雰囲気にマッチしています。
更に特筆するべきは物語の構成力の高さとプレイの快適性です。
マルチエンドですが、RPGパートの趣旨をしっかり理解していれば、初見でハッピーエンドを見られるよう誘導する構成が◎。
ただし、伏線の散りばめられたストーリーは1種類のエンディングでは十分に理解できません。
少しのもやもや感を残して他のエンディングに導く構成になっています。
クリアすればエンド分岐条件を見られるほか、スキップ、バックログなどの機能が充実しており、ストレスを感じさせません。
2周必要ですが、エンド1、エンド4、裏エンド1から派生するエンド1は是非とも見て頂きたいです。
作品の物語性に対する印象が大きく変わります。
~良かった点など感想(ネタバレ全開)~
まず何より、兄弟がみんな可愛いですね!
個人的な趣味では、兄弟のほのぼの日常を見ているだけでも大満足でした。
全員にしっかりと個性がありますね。
まもるが弟たちを守りたいという心情にはとても共感できます。
ちなみに、かける推しです。元気があってよろしい!
でもほたるの腹黒さも実は好きです。
2転3転する構成もお見事でした。
プレイヤー視点では、タイトルにミスリードされて、兄弟はみんな空想の存在なのだろうと思いますよね。
ところがまもるの心中が明らかになるにつれて、もしかしてまもるといのるは本物かな?だとすればこの世界はなんだろう?という疑問が湧きます。
ラスボスを倒しても、途中で日記を覗き見ていた存在が気になって、エンド4を見に行き、初めて真の黒幕と世界設定を知ることができました。
複雑な設定なのに、分かってしまえばスッと入ってくる物語はなかなかないです。
エンド1では消化不良気味なまもるの罪について、裏エンド1から派生するエンド1でしっかり描写されていたのも良かったです。
考え方自体は賛否あるでしょうが、倫理観をおざなりにしたハッピーエンドにせず、作品内で議論する姿勢に非常に好感が持てました。
クライマックスは、RPGパートの「一人では勝てない、皆の力があったからだ」という前置きありきの選択肢なので、その時点でこれは熱い!と思いました。
王道展開ですけど、それをプレイヤーが選びたくなるように配慮がなされているんですよね。
演出の凝り具合もすごいですね。
ホラー演出で、色調、画面サイズ、BGM等が変わるのは臨場感を高めていました。
アニメーション、唯一のボイスは、あの場面で使われてこそという効果的な箇所で使われていて、感動しました。
ラスボス戦で6色の羽が回ったりする演出は大好物です。
BGMもとても良い!本当にありがとうございました!
私はホラーが苦手ですが、かといってプレイするからにはカットするのも主義に反するので、正直しばらく敬遠していました。
ホラー体験が少なくあまり語彙がないのですが、本作はじわじわくる怖さというか、グロ、ドッキリ系ではなかったので、ほのぼのとの対比として非常に楽しめました。
ギャラリー、バックログ、スキップなどなど、ノベルゲー制作ツールなら標準かもしれませんが、ウディタでしっかり作ってあったことに感激しました。
このあたりの快適性は物語の没入感や、エンド回収するかどうかに凄く効いてきますので、配慮が行き届いているなあと感じました。
~気になった点など感想(ネタバレ全開)~
制作者様のツイッターでは、イラストに課題ありと悩んでおられましたが、確かに好みは分かれるでしょうね。
万人受けを目指すのであれば、いわゆる「美麗な」絵を描かれる方とタッグを組まれるのが良いかもしれません。
でもフリゲなので、一点突破でもいいんじゃないかなあとは思います。
私はその作者さんならではの絵が好きです。
コンテストだと高得点は付けられませんが。
ADVパートに欠点は見当たりませんが、RPGパートについては、いくつか難点があります。
1つは戦闘バランスです。
簡単は本当に簡単なので、子ども向けの配慮という感じでしょうか。
しかし、難しいでも、特定コマンドの繰り返し(強化→回復・防御→攻撃)になりがちです。
敵の耐久力は高めなので、結果の分かり切った勝負を続けている作業感が出てしまいます。
高難易度を用意するなら、行動パターンを途中で変えるなど、戦略に広がりを持たせるべきですね。
2つ目はテンポです。
回復ポイントが充実していて、短時間でクリアできる構成ですが、ADVパートの完成度が高いだけに、テンポを乱しています。
シナリオの伏線に使うので必然性はありますが、デメリットも大きいです。
3つ目は、敵の画像です。
ネタとしては面白いですが、実写写真には抵抗を持たれる方もいるのでは。
これは意見が分かれるとは思います。
最期に、シナリオについては価値観の違いだけなのですが、一応書いておきます。
裏エンド1では、罪を告白することで完全に幸せが失われるような表現になっていますが、どうしてもひっかかりを覚えます。
罪がなくなることは決してありませんが、償いをすることはできるはずです。
エンドが1種類なら気にならないのですが、マルチエンドなので。
罪を償いながら2人で支えあって生きていくビターエンドが、選択肢の1つとしてあれば、個人的には一番納得がいきました。
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