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【感想】電子ゲームブック 自由落下

【タイトル】電子ゲームブック 自由落下(DLリンク
【制作】なべのひと 様、MA-GUN 様(HPリンク
【プレイ時間】短編(15分~)
【ジャンル】電子ゲームブック、ADV、ノベル
【バージョン】1.11
【クリア状況】全テキスト閲覧
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~紹介(ネタバレ抑え目)~

魔法と科学の力で作った翼を背に空を飛ぶ「タワージャンパー」の物語。マルムズベリーの町に住む「君」もタワージャンパーの一人。不格好な手作りの翼で何百回も空を目指してきた。墜落死の危険があろうとも、夢は諦めきれない。マルムズベリーの塔には今日も強い風が吹き荒れている。「君」は自分だけの翼を作り、飛ぶことができるだろうか。

町を探索して素材を集め、それらを組み合わせて翼を作ります。その出来栄え次第で飛行の成否が決まります。ゲーム自体は何ら難しいものではなく、物語が中心です。

とはいえ、以前に感想を書いた「君はヒの魔法使い」と同様に、電子ゲームブックならではのアナログな操作感がゲーム性を生み出しています。次に進むページを自分で任意に入力できるシステムにより、紙を捲るような感覚、自分で物語を紡いでいる感覚を強く感じることができます。洗練された文章とともに、濃密なひと時を提供してくれることは間違いありません。

ひとつの主題に沿って丁寧に描かれた短編です。メッセージ性は明確であり、爽やかな読後感と共に心に残るものがあるでしょう。何かを成し遂げようとするとき、自分より優れた才能や実績を目の当たりにして、心挫けそうなときに読むと良い作品です。






~良かった点など感想(ネタバレ全開)~

短編ですが、町の雰囲気が情緒豊かに描写されており、マルムズベリーの情景をありありと想像できます。この作者さんの文章はとても好きです。本作はお二人で書いておられるようですね。

父親からの訓告、元タワージャンパーとの出会い、天才飛行少女との出会い。色々な立場の人物と出会って、思うところがあって、でも最後にどうするかを決めるのは「君」自身という構成が、非常に上手いなと思いました。

主人公の飛びたいという気持ちに感情移入できる人は少ないと思いますが、目標を諦めたくないという気持ち、諦めた経験は誰もが持っていると思います。その点で、主人公の心情は理解できるし、応援もしたくなります。あと一歩で中島という場面では思わず固唾を飲みました。

この作品のメッセージの自分なりの解釈を書いておきます。
「君」はどこにでもいるような凡庸な人間です。そんな「君」が、夢を叶えるために奮闘します。他人から見れば、ささやかな夢です。その遥か先にいる人々は、広い世界に大勢います。しかし、それは諦める理由にはなりません。「君」の夢を叶えられるのは自分だけなのですから。

ゲームブックの性質を活かして、おまけページを仕込んであるのも面白いなと思いました。一通りクリアしたな、と感じた後で、1ページずつ読んでいくのがお楽しみ。





~気になった点など感想(ネタバレ全開)~

欲を言えば、もう少しだけ長編でも良いかなと思いました。難易度としてあまりにもイージーなので。苦労の末の飛翔ならば感動は一層強かったと思います。

それから、SEはありますが、BGMが全くないので、せっかく電子媒体なのにもったいないという印象です。パラグラフが頻繁に切り替わるため、違和感なくBGMを付けるのはとても難しいとは思いますが。

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