#11 ヨーロッパ研修記 〜マイクロサイダリーPomeskの感動〜
本当に驚いた。
Nightshopというブリュッセルで人気のワインレストランで、初めてPomesk(ポメスク)を知った。最初の一杯に、メニューの一番上にあったPomeskのLuxというシードルを飲み、衝撃が走った。
そのフレッシュな口当たり、柔らかな林檎の味わいと、ドライな飲み心地。複雑だけど心地よく、いつまでも飲みたくなってしまう。このシードルは、どういう人が、どんな場所で、どうやってつくっているのだろう?
インターネットで調べてもほとんど情報が出てこない。なおさらそれを知りたくなった僕は無理を承知でInstagram経由で訪問のお願いをしたのだが、突然の連絡にもかかわらず快く受け入れてもらった。
Pomeskがある場所は、Gentからバスで1時間。さらに最寄りのバス停からも30分ほど歩いた場所にある。時間帯によっては、バスは何時間も来ない。最寄りのバス停を降りて小さな住宅地を抜けると、すぐに大きく広がる農場や牧場がつづく。教えてもらった住所に向かいひたすら歩くと、一軒の家にたどり着いた。
本当にここにサイダリーが?と思っていると、つくり手のJeroenさんが、ドアを開けて迎え入れてくれた。話を聞いてみるとJeroenさん自身は元々ワインのインポーターの仕事をしていて、自宅を兼ねたこの場所で、ボトルショップ、そしてシードルの醸造を始められたそうだ。
Pomeskは約3年前にシードルを作り始め、身近な仲間や懇意にしているレストランに少しずつ卸し始めている。とはいえ今でも一回あたりの仕込みで作れるのは200から300本のボトルのマイクロサイダリーだ。作るたびに完売していて、僕がPomeskのシードルを飲めたのは奇跡のようなものだった。
それはそう、醸造はJeroenさんの自宅の一部で行われていて、僕が今まで見た中でも、最もコンパクトな場所だった。(醸造スペースに行く途中、僕はリビングを通って、Jeroenさんのご家族にご挨拶をしたくらいだ。)
そして、とても美しく綺麗に維持されているタンクから仕込んだばかりのシードルと、リースリングをテイスティングさせてもらった。
家から歩いて数分の距離にある畑にも連れて行ってもらい、いろんな話を聞いた。これから少しずつ畑と生産量を広げていくこと。来年には家の隣に醸造所の拡張を予定していること。
シードルが出来上がるまで、全ての作業を一人でやるから、それは大変なことだと思う。それでもJeroenさんはとても嬉しそうに、これからのチャレンジについて話してくれた。
最後にCometというシードルをいただいた。Luxと比べると、とてもマイルドで、林檎と洋梨の柔らかい甘みを感じる。身体に染み入るような優しいシードルだ。
昨今のビールやワイン、シードルの世界では、様々な副原料を使って、極端に気を衒ったようなものも少なくない。だけど僕がPomeskのシードルに感動したのは、林檎と洋梨が持つ自然の甘みや香り、そして、ずっと飲み続けたくなるような優しい飲み心地だ。
それはJeroenさんが、この自然豊かな穏やかな場所で、大地と野生酵母の力、そして林檎と洋梨の本来の味わいを大切にしていることを、自分の身体と心で十分に感じることができた1日だった。
Jeroenさんの立つこの後ろの空き地に、サイダリーができた暁には、いつかまた訪れたいと思う。
https://www.instagram.com/pomeskcider/
salo Owner & Director
青山 弘幸
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引き続きお酒に関わる出会いやご縁を探しています。また応援のメッセージもとても嬉しいです。もしご興味を持っていただけたらお気軽にご連絡いただけますと幸いです。
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