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月曜日は美術館がお休みです

私は月曜の休みが多い。

美術館でも行こうかと思ったけどコロナどうこうではなくそもそも近くの美術館は月曜休館だった。調べてみたら博物館法なるものに基づきそうなっているらしい。ちくしょうためになった。企画そのものが延期・中止になっていることもあり今やっている他のイベントに心動かされることもなくなんや気づけばアフタヌーンティーである。西日が部屋に差し込みあぁ今日はもういいやと外出を諦めた。


美術館、で思い出した。むかし彼女と一緒に落書きをした。


キャンバスはマライア・キャリーの販促用と思われる巨大ポスターで、その裏面が真っ白だったからそこへ描くことにした。おそらく屋外に展示する業務用の、ビニールのようなやや凹凸を感じさせるものだった。なぜそんな物を持っていたのか今まで何の疑問にも思わなかったけれどあの女まさか盗んだんじゃないだろうね。
裏の、本来なら表であるマライア・キャリーは両腕を上に組んだポーズであったがまさか背中に犬、猫、牛、虹、私たちが描かれるとはゆめゆめ思わなかったろう。


お互いの似顔絵を描いた。彼女の特徴を捉えることに成功したのか私が描いた女の顔はわりと好評であった。彼女もまた私の特徴をうまく捉え、私のと似たタッチで描かれた2人の笑顔がそこへ並んだ。絵の女は少し困ったような笑顔で私は頬をあげて笑っていた。女は黄色で私は緑だった。意味のないヤシの木やピンクの猫、青く巨大な牛も眠っている。それぞれの色に意味はなかった。心から自由に描けるときは何にもとらわれない。大きさも色も何故も糞もない。彼女の部屋でセックスすると薄暗いなかにそのやかましい落書きが視界に入るので、仰向けの私は女の上気した顔と困り笑顔に描かれた女を見比べ楽しんだ。


アクリル絵具で絵を描くことにはまっていた。様々な素材にもしっかりと色が乗るので使いやすかった。私はピンクのTシャツ前面に大きくハンバーガーの絵を描いた。
「I ♡ HAMBURGER」といびつな文字を添えられたかなり恥ずかしいものだがしばらく愛用していたと思う。彼女がそれをカワイイと言ってくれたから。その後も何度か描いてみたけれどいまいちパッとしなくて、なんだか褒められたいばかりにつまらない物しか描けなくなった。


あんなに大きい物をいつまでも保存しているとは考えにくいしもう処分してしまったことだろう。そんなふうに証拠もなにも残っていないことに耽っていたらそう、もう夜なのです。

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