見出し画像

ニッポンのサービス

「コラショ、またね。いままでありがとう。」
当時6歳の娘が書いた絵にこんな言葉が書いてあった。

今から5年前、家族でハワイに行った。
なるべく、旅費を安く済ますために、中国の航空会社を使い、
上海経由でホノルルに向かうルートを選択した。

往路の際、上海の保安検査場で、娘が大事にしていたコラショ(学習教材こどもちゃれんじのキャラクター)の防犯ブザーが、検査対象になった。

これはなんだ? と言わんばかりにギロっとにらまれ、
身振り手振りや拙い英語で、防犯ブザーであることを伝えたが、聞く耳を持たず、首をかしげる検査員。
そして、娘の目の前で、ゴミ箱に捨てた。

あまりに衝撃的な行動に、言葉が出なかった。
すぐに反論したものの、あっち行けという手振りで追い出され、諦めざるを得なかった。

上海で乗り継ぎの飛行機を待つ間、
娘はコラショの防犯ブザーの絵を書いた。
そこに書いてあったのが、
「コラショ、またね。いままでありがとう」
先ほどのフレーズだ。

しかし、子どもの持ち物を目の前でゴミ箱に捨てるとは……

もう一つ、このハワイ旅行では事件があった。
今度は帰路の話だ。

ホノルルから上海に向かう飛行機が遅れた。
上海で乗り継ぐ飛行機に間に合わないだろうと言われた。

空港で知り合った親切な方が、行きも同じような経験をされたとのことで、
きちんと交渉しないと、空港で寝泊まりすることになると教えてくれた。

上海に到着すると、そこから戦いが始まった。
飛行機を降りると、猛ダッシュで乗り継ぎカウンターへ。
チケットを見せて、次の日の便の予約をした。
カウンターで、片言の中国語で乗れなかった人はどうなるのか? 泊まらせてもらえるホテルはあるのか? 等を聞くと、もう就業時間だから閉めると言って教えてもらえなかった。
かろうじて聞けたのが、対応窓口の場所。またその場所へ猛ダッシュ。係員に、ホテルに泊まりたい。どうすればいいか? を確認した。

そこから、かなり待ち、やっとバスに乗れた。
バスに乗ってホテルに向かう際、目を疑う光景があった。
係員がバスに乗っている人を確認する方法だ。
乗客名簿を見ながらチェックをしていくと思いきや、白紙の紙に名前を書いていたのだ。
しかも、途中で把握しきれなくなったようで、記入を止めるという……

ホテルに着いたら、今度は夕食がないと言われた。
ドルしか持っていないし、元に変えるすべもなく、食べる場所もなく、夕飯を何とかして欲しいと交渉した。
何度もしつこく交渉して、何とか食事にありつくことができた。交渉の疲労感がはんぱなかった。
贅沢を言ってはいけないのだが、頂いたお弁当はなかなかの味だった。
ホテルで一夜を過ごし、翌日、無事飛行機に乗ることができたが、かなり神経をすり減らした帰路だった。

帰りの飛行機で一緒になった女子大生は、交渉をすることができず、放っておかれて、空港に泊まったそうだ。日本のように待っていたら何とかしてくれるというわけではないので、しっかりと意思表示をすることが必須だ。

日本だったら、絶対のこんな状況にはならないだろう。
遅れた時のオペレーションもしっかり決まっていて、何よりお客様のためにという根本の考え方があり、空港で寝泊まりや交渉しないとご飯が食べれないということは起きないという安心感がある。

今回の飛行機事件をきっかけに、多少高くても日本の航空会社を選ぼうと思ったのだった。

改めて、日本のサービス品質とオペレーションは素晴らしいと思う。それに加えて、人の温かみというか、思いやり、優しさも兼ね備えている。子どもが大事にしているマスコットキャラクターを目の前で捨てるなんてことは、絶対にしないだろう。

オリンピック誘致の際に、「お・も・て・な・し」というフレーズがあったが、安定したサービスとオペレーションが提供することができるのは日本ならではの強みだと思う。

そんな誇るべき日本が今、中国を始め、様々な国にGDPを抜かれ、どんどん引き離されている。失われた30年と言われ、2000年からの20年間で、年収の上昇率が他国と比べてかなり低い。年収ランキング1位のアメリカと2位のアイスランドは共に約25%上昇。3位のルクセンブルクと4位のスイスは共に約15%上昇している。また、韓国は約44%も上昇しているのに対して、日本は0.4%の上昇にとどまってしまっている。
かつて、日本の企業が時価総額ランキングを独占していた時代は、どこへ行ってしまったのか。悲しくなってしまう現状だ。

そんな日本だが、サービスの質へのこだわりや、それを支える人々の心は本当に素晴らしく、これはとても価値が高いことだと思う。
これは、必ずや真似できない価値になるのではないかと私は思う。

そのためには、この品質と真心のサービスにしっかりと価値を感じられるように伝え、それをしっかりと対価に帰ることが必要だ。

他国のサービスを体感して、改めて日本の価値に気づき、その価値を伝えることの大切さを学んだのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?