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英語発音本・音声学書籍35冊レビュー&おすすめ発音学習プラン【コロンビア大学 英語教授法修士が厳選!】

こんにちは!

今回の記事では、発音本・音声学書籍35冊をレビューします。この記事を書いている現在、30冊を超える発音関連書籍レビューはほとんど見当たらないと思いますので、発音向上を目指している方には参考になるのではと思っています。

僕は、自分が代表をつとめているオンライン英語スクールらいひよ®︎で日常的に発音を教えていますが、教材研究として、かなりの量の発音書籍を読み込んできました。最初は自分のレッスンで発音矯正する時のネタを増やすために読んでいましたが、どんどん教材研究、そして音声学の世界に前よりもハマっていき、結果、市販の主だった発音本のほとんどは読んだかなと思っています。

発音・音声学書籍の本棚:参考にしている約90冊(の一部)


この note では、「英語学習者目線」でどのように発音教材を選べばよいかを書いていこうと思います。僕はコロンビア大学 英語教授法修士の学位を持っていますが、大学院留学が初留学で、いわゆる "純ジャパ" でした。発音に関してまだまだ学ぶことも多いですが、これまで苦労して発音を学んできたので、本記事が英語学習者にとってなるべく遠回りのない発音書籍案内になるように書いていきます。

また、大学院レベルで音声学・音韻論を学んだ者として、アカデミックな視点も忘れないで書いていきたいと思います。後述しますが、本記事では基本的に、「大学・大学院レベルで発音を教えている先生が著者の本」をメインでレビューしています。

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今回紹介する発音本たち↑

🦁この記事の特徴

発音本・音声学書籍35冊をレビュー

発音レベル別読書案内:「初・中級者」「中〜上級者」「上級〜指導者向け」の3つのレベルに分け、現在の発音レベル・用途に合わせた発音教材選びを提案します。

大学教授、特に音声学を専門とされている教授が書いた書籍を多く扱います。

・執筆者サラはコロンビア大学 英語教授法修士です。アメリカの大学院レベルで音声学・音韻論を学んだ者の視点からも教材をレビューします。


🦁この記事の対象者

・「発音を向上させたい」「音声学の知識を増やしたい」と考えている全レベルの英語学習者。

「発音記号が何となく分かる」というレベルから脱却し、これから音声学の基礎を書籍で体系的に学んでみたい方

・すでに発音のある程度の知識があるが、質の高い書籍で音声学を学びたい方


この記事は主に発音中級〜上級者向けの記事です。現在「発音記号が全く読めない・あまり分かっていない」というレベルだと全体的に、かなり難しく感じると思います。

しかし、「音声学をしっかり学んでみたい」という意志のある方なら現在のレベルに関わらず、段階的に学んでいけるよう読書案内をします。現在発音はいわゆる「カタカナ英語」だが、「発音記号はだいたい理解できている」というレベルなら無理なく読める内容になっています。

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🦁記事を書いているサラのプロフィール


英語ジム らいおん と ひよこ代表

コロンビア大学大学院 修士課程修了
(優秀奨学生章受賞)
英語教授法修士
(Master of Arts in TESOL)

ETS (Educational Testing Service) 米国本社で問題作成者として勤務。

著書:『Q&Aサイトから読むアメリカのリアル』(アルク)

​英検®1級
英語発音テストEPT®100点(満点)
国際発音協会認定 英語発音指導士
​IELTS Speaking 8.5
…など

大学院進学前はバックパッカーとして世界を周り、世界1周を達成。大学院留学が初留学の "純ジャパ"。

[ SNS・その他 ]
SNSやその他ウェブページはこちら


🦁発音・音声学書籍一覧

まずは読んだ本の一覧です。数が多いので、このセクションでまず全体像が分かるように書籍名だけ一覧表示します。各書籍、番号の後のタイトルをクリックすればAmazonページに飛べるようリンクがついています。

また、楽天派の方や、Amazonと楽天で見比べたい方、また本の表紙のデザインも見やすく表示されたタイプのリンクで書籍を見比べたい方は以下の別ページにまとめましたので参考にしてみてください。

*書籍数が多くページが重いので開くのに時間がかかりますが開きます↓📚

以下のように、カード型のリンクで見やすくなっています↓

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本note記事で紹介するのは約35冊だけですが、僕が読んでいる発音・音声学書籍は全部で90冊以上あり、上記ブログ記事のリストより確認いただけます。(このリストは新しい書籍を読んだら常に更新しています)


【 発音・音声学書籍和書 】

1. 初級英語音声学:竹林 滋・清水 あつ子・斎藤弘子

2. ファンダメンタル音声学:今井 邦彦

3. 英語音声学入門:松坂 ヒロシ

4. 音声学・音韻論:窪薗 晴夫

5. 日本人のための英語音声学レッスン:牧野 武彦

6. コミュニケーションのための英語音声学研究:山根 繁

7. 英語徹底口練!―発音とリスニングの力を同時に高める本:今井 邦彦・外池 滋生

8. 日本語ネイティブが苦手な英語の音とリズムの作り方がいちばんよくわかる発音の教科書:靜 哲人

9. 英語発音指導マニュアル:東後 勝明

10. 新装版 脱・日本語なまりー英語(+α)実践音声学:神山孝夫

11. 英語音声学の基礎 ―音変化とプロソディーを中心に―:片山 嘉雄・長瀬 慶来・上斗 晶代

12. 音声学概説: Peter Ladefoged (原著), 竹林 滋・牧野 武彦 (翻訳)

13. 英語音声学・音韻論入門:Phillip Carr (原著), 竹林 滋・清水 あつ子 (翻訳)

14. 実践音声学入門 A Practical Introduction to Phonetics:J.C. Catford (著),  竹林 滋・設楽 優子・内田 洋子 (訳)

15. ビジュアル音声学:川原 繁人

16. 聴こえる!話せる!ネイティヴ英語 発音の法則:長尾 和夫


【 発音・音声学書籍洋書 】

17. ACCURATE ENGLISH―A Complete Course in Pronunciation:Rebecca M. Dauer

18. Teaching Pronunciation Second Edition:Marianne Cele-Murcia

19. Manual of American English Pronunciation Fourth Edition: Clifford H. Orator, Jr. Betty Wallace Robinett 

20. The American Accent Guide 3rd Edition: Beverly A. Lujan

21. Mastering the American Accent:Lisa Mojsin M.A.

22. American Accent Training:Ann Cook


【 イントネーション系書籍 】

23. 英語のイントネーション English Intonation―An Introduction:J.C. ウェルズ著 長瀬慶來監訳

24. 英語イントネーション論:渡辺 和幸

25. 英語のリズム・イントネーションの指導:渡辺 和幸

26. 英語のリズム・ハンドブック:渡辺 和幸

27. 理屈でわかる英語の発音:小川 直樹


【 辞書系 】

28. Longman Pronunciation Dictionary 3rd Edition:JC Wells

29. Cambridge English Pronouncing Dictionary 18th Edition:Daniel Jones (Edited by Peter Roach, Jane Setter & John Esling)

30. グランドセンチュリー英和辞典第4版(三省堂)

31. ルミナス英和辞典第2版 つづり字と発音解説:竹林滋・斎藤弘子


【フォニックス・コラム・ガイドブック・その他】

32. 新装版 英語のフォニックス 綴り字と発音のルール:竹林 滋

33. 大人の英語発音講座 (生活人新書):英語音声学研究会

34. 国際音声記号ガイドブック―国際音声学会案内

35. Second Language Acquisition―An Introductory Course:Susan M. Gass

[2020年10月追記] 36. 英語音声学入門:竹林 滋・斎藤 弘子


なお、本記事の有料ページでは、全ての書籍で再度カード型リンク(表紙デザインが見えているリンク)を貼っていますので、レビューを見ながら気になった書籍はすぐにAmazonページでチェックできるようにしてあります。

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🦁発音向上に重要なこと

レビューに入る前に、発音のことについて少し僕の意見を話させてください。

この記事で読んだ35冊の中に、素晴らしい音声学の本がたくさんあります。特に、この後、第1章でおすすめする本はどれも素晴らしいですが、記事の内容に入る前に、以下の3点を伝えたいと思っています。

1つ目は、「1冊だけでなく、複数の良書を読み比べると理解が深まる」ということ。2つ目は「上級を目指すなら、音声学で"理屈"を理解する」こと。そして、3つ目は「発音は可能なら誰かに習ったほうがいい」ということです。


1つ目。

①「1冊だけでなく、複数の良書を読み比べると理解が深まる」

音声学の本は、理解するのが簡単でない本もたくさんあります。これまで、発音書籍を1冊とか数冊読んで挫折した or 深く理解できなかった人もいるでしょう。しかし、最初は少し大変ですが、数冊で良いので良書を読み比べ、辛抱強く読めば全部ではなくても重要なことは必ず分かるようになってきます。

大学生の頃ですが、僕は音声学の本を1冊購入しました。それは、以下のリストにも入っている大変おすすめの1冊です。内容は素晴らしかったのですが、正直それほど深く理解することができませんでした。読んで、なんとなくは分かったけど、「どうすれば自分の発音向上に活かせるのか」が分からなかったからです。

その後、時が経ち、数冊の音声学の本を買って読みました。すると、大学生の頃に読んだ音声学の本と、新しく買った本は、多くの点が重複していることに気がつきました。もう1冊、もう1冊、と読んでいくと、「あ、これはあの本でも同じこと言ってた気がする」「あ、ここ、前読んだあの本で分からなかったとこだけど、この本分かりやすいな」などといったような感じで、いろいろな音声学本を読み比べることにより、情報が整理されていき、少しずつ重要な点が見えていきました

何が言いたいかというと、音声学書籍を1冊読んだだけで、「難しかった」「挫折した」「分からなかった」と感じて学ぶことをやめてしまうのはとてももったいないと思うのです。今までに発音本・音声学の本を買ったけどいまいちよく分からなかったという経験がある方も、ぜひ、今回紹介する第1章の本だけでも良いので、「良書を複数読み比べて理解を深める」、といことをしていただきたいと思っています。きっと相乗効果で何倍も発音を深く理解できるはずです。


2つ目。

②「上級を目指すなら、音声学で"理屈"を理解する」

今回紹介する本の中に、「大人の英語発音講座 」という書籍がありその中で東京外大教授の斎藤弘子先生は、以下のようにおっしゃっています。

"正しい発音は、「習うより慣れろ」ではなく「習ってから慣れろ」です"

以前ツイートもしたのですが、発音は、ちゃんとした知識を得てから練習する方が圧倒的に効率的だと思います。がむしゃらに発音を練習するのでなく、「音声学」を学ぶことにより、日々の発音練習の効率が格段に上がります

例えば、アメリカ英語では、butter, take, stop, it was, button, interview の /t/ は全て違う /t/ で発音されたりします。分かってる人にはかなり簡単ですが、今までこれらを意識してない人にはなかなか難しいかもしれません。これも音声学を学べば、感覚でなく、なぜ全て違う /t/ になるかが理屈で分かります。そして、/t/ に様々な種類があることが理解できれば、「この /t/ は何の /t/ かな?」と考えるようになり、慣れると無意識に使い分けられるようになります。「between の /t/ は?」「Atlanta の /t/ は2つあるけど同じなのかな?」など視点が変わってきます。なお、後述しますが、松坂ヒロシ先生は /t/ の発音を11種類に分けて解説されています。

またもう1つだけ例を挙げると、singer と finger の -ng 部分は発音が違うのですが、音声学の本を読めばこのような音に気をつけた方がいいということが分かるだけでなく、なぜ異なる発音になるのかを学ぶことができます。なぜ異なるかを理解すれば、hanger と hunger の-ng 部分は同じなのか、違うのか、違うならなぜ違うのか、ということも丸暗記しなくても考える癖がつきます。

書店に行くと、発音の本が溢れています。素晴らしい本もたくさんある中で、音声学の知識がない著者の方が書いている発音本もたくさんあります。もちろん、それらの中には実践的に書かれた良書もたくさんありますが、発音が上手な人であっても、音声学をしっかり理解することは決して簡単なことではありません。僕は、発音本を選ぶ際は、大学教授、特に音声学を専門とされている教授が書いた書籍を選ぶのがいいと思っていますよって今回の記事では、大学・大学院レベルで発音を教えている著者の書籍をメインでレビューしました。


3つ目。

③「発音は可能なら誰かに習ったほうがいい

ほとんどの発音本は一通り大事なことを書いてくれています。そしてこの記事では発音の良書をたくさん紹介します。しかし当たり前ですが、発音本はあなたができていない音・苦手な音を指摘してくれません。また、どの音から重点的に取り組むべきか、など発音に関しての個別アドバイスはくれません。

今の時代、いろいろなツールがあるので日本にいながら英語力自体を上げることは可能です。僕もアメリカに大学院留学するまでは海外経験ゼロでしたし、ほとんどのことは独学で学べました。しかし、一部の"センス"のある人を除き、一般的に発音は独学が難しいと思います。

誰かきちんとした指導者に発音を習うと、自分ひとりでは気づくのが困難であることに容易に気づくことができます。発音は「他人から言われないと気づかないこと」がたくさんあります。レッスンで先生から指摘されれば一瞬で矯正できるようなことも、自分だけでは3年先も気づかない、のようなことも全然あります。

僕自身、幸運にも英語学習初期から発音矯正を受けてきました。僕の師匠である先生アメリカ英語・イギリス英語・オーストラリア英語どれでも発音矯正可能、オーストラリア発音は3つの地方別発音(Broad/Geneal/Cultivated)全てで発音矯正できる先生で、僕が知る限り最高の先生でした。

そのレッスンの中で、自分一人では絶対に気づかなかったであろう発音のミスや、実践的な発音のコツを数え切れないほど教わりました。厳密に言うと、その先生とのレッスンは発音というよりスピーキングのレッスンだったのですが、僕はこの先生にマンツーマンで5年以上学び、効率よく発音を学ぶことができました。そして効率よく学ぶことができたのはその先生からの「質の高いフィードバック」があったからです。

英語学習の中で、発音向上は可能なら「お金をかけるべき」分野だと思います。そして、経験上、ちゃんとした指導者に見てもらえば、中・長期的に見て発音矯正は費用対効果がかなりよいと思います。もし発音で悩んでいる人がいればぜひ誰かに発音を習ってみてください。


というわけで、ここまで僕が大事だと思っている3つのポイントを話しましたが、発音で伸び悩んでいる人、あるいは今後発音向上を目標にしている人は、感覚でなく理屈を理解し、知識+実践・練習+誰かに習うというのがいいと思います。


では前置きが長くなりましたが、さっそく内容に入っていきましょう。

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