見出し画像

「体操ザムライ」感想

 お疲れ様です、サラダです。今回はこちらのアニメの感想になります。

体操ザムライとは


『ユーリ!!! on ICE』、『ゾンビランドサガ』を手掛けた
MAPPAが制作するオリジナルTVアニメーション最新作!

時は2002年。かつては強かった日本男子体操界。
体操に人生を注いできた元日本代表、荒垣城太郎(29)は、
思うように演技ができなくなっていた。
それでも練習を重ねる日々を送っていたが、
ある日コーチの天草から「引退」を勧められてしまう。

悩む城太郎。それを支える娘の玲。
だが、ある『出会い』によって荒垣家の運命は大きく変わっていく。


実直なストーリー

 
 評価指数8+。
 このアニメの第1話を見たときは「変なアニメだなあ」という印象でした。
 いきなり家に居候するカタコト忍者、なぜか家にいるでかい鳥、妙に冴えないし急遽引退しませぬとか言っちゃう主人公、夏でもないのに主題歌が上海ハニー、おまけにタイトルの「体操ザムライ」ってなんだよ・・・、

 はい、どう見てもこのアニメの面白がり方をわかっていなかったんですね。決して高くない知名度を鑑みると、僕以外にもこう思ってた人はいたんじゃないかと思います。

 しかーし、蓋を開けてみればキャラクターは濃いものの、家族愛+スポーツものというとても実直なストーリーとなっていました。

限界を宣言された男の再起


 このアニメの見どころは何と言っても主人公である城太郎の再起にあります。
 城太郎はお世辞にも気の回る男とは言えず、1人娘の玲やコーチの天草さんにけっこう迷惑をかけちゃっています。数年前に奥さんが亡くなってしまったことで、自分が頑張らなきゃいけない!と周りが見えていない状態だったんです。

 そこにひょんなことから謎忍者のレオが加わり、周りの人たちが城太郎を支えていくことで、改めて一人の選手として凛々しく成長していく姿が描かれていきます。

 このアニメ最大の魅力はキャラクターの良さにあります。
 とくに前述した玲と天草さん。この二人なくして体操ザムライは語れません。
 他にも元傭兵?のギャル子、軟派なギャル男、渋いおネエの整体師、ファンキーで粋なおばあちゃん、なんか聞いたことある名前のチャイニーズ女子など、一癖も二癖もある連中ばかり。
 でも、どのキャラにも見せ場があって、誰もがこのアニメに必要な存在なんだってことがわかります。

このアニメの精神的支柱・玲


 荒垣一家は数年前に母を亡くしています。
 そのためお母さんがいない分、娘の玲ちゃんが家事をこなしているんです、なんと9歳で。
 
この玲は本当にしっかり者で、お父さんに心配かけたくないからと、自分が大変だったり辛い気持ちなんかを一人で抱え込んじゃうんです。お母さんみたいに強くなるんだ、と自分に言い聞かせて、、おそるべき9歳児。
 
 
それでもやっぱり一杯一杯になっちゃって、レオや城太郎に自分の気持ちをぶつけるシーンは心にグッときました。
 無理はしなくていい、もっと周りの人に頼っていい。
 そうやって玲も城太郎たちも支え合っていくことでお互いに成長していくんです。

 さて、アニメに限った話ではないですが、人はどういうときに感動するのでしょうか。
 要因はいくつもあると思います。しかし決して一つ一つは難しい要因ではありません。その中の一つとして、僕は間違いなくキャラクターの成長に感動すると思っています。

 成長とはできないことができるようになることです。
 何を当たり前のことを言ってるんだと思うかもしれませんが、この当たり前が描き切れていない作品は多々あります。大事なことは成長の過程を描くことです。
 
 成長の過程とはなんとも地味なものです。
 毎日の鍛錬だったり、何気ない一言がきっかけだったり、憧れの人の背中だったり、うまくいかない苛立ちだったり。
 そういう地味な芝居を描くからリアリティが生まれるし、そのリアリティからドラマが生まれます。
 そして美しいドラマが描かれることに僕たちは感動するんです。

EDテーマ「夢?」


 このアニメはエンディングテーマが素晴らしい。
 歌、作曲は「はてな」さん。この曲がデビューシングルらしいです。
 作詞はなんと「いしわたり淳治」氏。ロックバンド・スーパーカーの方ですね。その頃から抜群の歌詞センスを発揮していました。
 曲名は”夢じゃない”と読むそうです。

 夢という言葉には輝きがあります。なんとなく持っていないと恥ずかしいような気がしてくる。
 でもときにその言葉は眩しすぎる。周囲から遠慮のない期待を抱かれてしまいます。期待はプレッシャーになり、失望へと変わることもある。そんな不安に襲われることも。
 自分のためにやっているのか、夢のためにやっているのかわからなくなることもあるでしょう。
 ラッパーであるRHYMESTERのONCE AGAINという名曲にも「夢、別名呪い」というパンチラインがありました。

 自分がやりたいと思えることをやる。それを周りが夢と呼ぼうが笑われようが関係ない。
 なぜなら未来は楽しんだもの勝ちなんだから。

 そんなメッセージが込められたこの曲は、レオや城太郎の苦悩をうまく表現しているんです。

そして急速な最終話

 特筆しておかねばなるまい。
 このアニメは徐々に徐々に盛り上がっていくのですが、そのピークは最終話、満を持して城太郎の体操が見られるシーンにあります。

 なめらかな動き、アニメーションの繊細さが光ります。ここではガチ実況が入るのですが、そこでも触れてるように城太郎の演技には自信に満ち溢れています。
 体操シーンを本当に美しくアニメで魅せてくれるんです。
 完全復活したサムライに沸くのは会場の観客だけでなく、そりゃあモニター越しの我々だって同じです。

 全てのドラマが昇華された城太郎の演技ーーもう言うことはない。

 ただ、ここから本当にスパッとこのアニメは終わっていきます。
 もうちょっと余韻に浸りたい、エピローグが見たい、という一縷の願いは届かず、劇の幕が急に下ろされるように終わっていくんです。
 無理を承知であと5分でいいからその後を見てみたかった。
 最終話の展開はかなりスピーディで無駄な要素がないため、尺的にもカツカツだったんでしょう。

最後に


 このアニメのOPの上海ハニー。あれはこの作品にあっていたでしょうか?
 そもそも上海ハニーは女の子をナンパしたい気持ちの歌であり、このアニメとは歌詞も曲調も全然あってないと思うんですよね。
 んで、調べてみたらこの曲の発売は2003年らしいんです。このアニメの舞台は2002年・・・合ってねえじゃねえか!!

 
OPの印象ってその作品のイメージを決めちゃうところがあると思うので、ミスマッチはもったいないなあって思いました。

 内容的にも絵的にも派手さはないですが、いいアニメだったと胸を張れる作品だと思います。おススメです!

 それにしてもMAPPAのクオリティはおそろしい・・・。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?